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部落問題資料室
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狭山再審等の歩みかみしめ
第3次で勝利をつかみとろう
「解放新聞」(2007.09.17-2336)

 狭山事件で、石川さんが再審を求めて30年が経過した。1977年8月9日、最高裁の抜き打ち的な上告棄却決定で2審・東京高裁の無期懲役判決(寺尾判決)が確定判決となった。石川さんと弁護団は確定判決の誤りを訴えて、同年8月30日、東京高裁に再審請求を申し立てた。再審請求は確定判決が出された裁判所に申し立て、「新規明白」な証拠が発見されたとき再審が開始される。
  この30年間の再審の闘いで、弁護団は石川さんの無実を証明する新証拠をつぎつぎと提出してきた。第1次再審では、脅迫状の訂正された日付部分が自白の「4月28日」ではなく「4月29日」であることが判明した。証拠開示でO証言が明らかになり、「犯行現場」自白が虚偽・架空のものであることが焦点となった。第2次再審では、元鑑識課員の斎藤鑑定人による一連の鑑定で脅迫状・封筒の筆記用具が自白と食い違っていることが明らかになり、大きな争点となった。元刑事の証言や筆跡鑑定や法医学鑑定などの新証拠も多数出され、裁判所の判断はこの30年間で大きく後退している。裁判所は脅迫状と石川さんの筆跡の相違を認めながら「書字条件」の違いによるものとまでいい出している。殺害方法も認定が変わり、自白と確定判決は完全にくずれている。
  この30年間の再審請求で最大の問題は、裁判所がまったく鑑定人尋問や現場検証などの事実調べをおこなっていないことである。これだけ重大な新証拠が出されながら30年間一度も事実調べさえないということは不当・異常な事態である。
  狭山事件・再審請求30年にあたって、第3次再審で鑑定人尋問などの事実調べをおこなうよう強く東京高裁に求めなければならない。

 第3次再審で何としても事実調べを実現しようと、昨年8月から狭山事件の事実調べを東京高裁に求める新100万人署名運動がはじめられ、5月23日に100万筆を突破した。北海道、東北から沖縄まで全国、全世界から署名が寄せられ、短期間に署名が100万人をこえたことは、石川さんの無実を確信する人たち、公正・公平に事実調べをおこない再審をひらくべきだという声、反差別・人権を求める世論の広がりを示すものである。
  狭山事件の第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部の裁判長が、5月23日で交代し、あらたに就任した門野博・裁判長による新証拠の検討、審理はこれからである。弁護個は、昨年の第3次再審申立と今年3月の2回にわたって、筆跡鑑定などの新証拠を提出し、さらに新証拠を積み重ねて門野裁判長に事実調べを求めていくとしている。
  東京高裁・門野裁判長は、狭山再審を求める100万人の声を受けとめ、事実調べをおこなうべきである。

 今年は年明けから全国で無罪判決があいつぎ、日本にはえん罪が多い実態が明らかになった。えん罪をなくすための課題として、取り調べの可視化、証拠開示の保障、誤判救済のための再審手続きの充実が必要であり、とりわけ、裁判員制度導入を前にして急務であることが、くりかえし指摘されている。映画「それでもボクはやってない」のヒットも含め.て、えん罪が市民の身近な問題であり、えん罪をどうしたらなくせるか、ということに市民は大きな関心をよせている。
  私たちは、狭山再審の闘いとえん罪をなくすための司法改革の必要性をあわせて訴えるとともに、参議院での与野党逆転状況もふまえて、いまこそ捜査の可視化、証拠開示など、具体的な司法の民主化へと結びつけていかなければならない。
  狭山事件の再審を求める会(庭山英雄・代表、鎌田慧・事務局長)と部落解放同盟中央本部では、署名運動の成果、第3次再審請求の現状と今後の闘いの課題を報告する集会を各都道府県でひらくことをよびかけている。
  労働組合、住民の会や宗教者をはじめ、ともに署名運動をになった人たちで集会をひらき、署名運動継続と当面する闘いの方向を確認するとともに、再審30年と事実調べの必要性、えん罪をなくすための司法民主化をアピールし、さらに、狭山再審を求める世論を大きくしていこう。
  また、10月31日には、実行委員会主催で、「狭山事件の再審を求める市民集会」が東京・日比谷野音でひらかれ「えん罪なくせ。いまこそ司法民主化を」をかかげて国会請願デモ、議員要請行動をおこなう。
  第3次再審闘争の勝利に向けて、当面のとりくみに全力をあげよう。

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