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主張

 

えん罪をなくすための司法
改革と法制定を求めよう
「解放新聞」(2007.10.22-2341)

 富山えん罪事件の再審無罪判決が10月10日に出され、2件の事件で誤認逮捕され有罪判決を受けた元被告の無罪が確定した。これは、富山県氷見市で02年におきた強姦および強姦未遂事件に、まったく関係ないタクシー運転手が犯人として逮捕、起訴され有罪判決を受けたえん罪事件。06年末になって真犯人が判明し、ことし1月に富山県警は誤認逮捕を認め、検察側が再審請求し、富山地裁は再審開始を決定、再審公判で無罪となった。男性はえん罪・誤判によって2年あまりも服役し、仮出獄後も身を隠していた。
  捜査段階で犯行を自白、法廷でも自白を維持していたことや被害者の目撃証言などから裁判所は有罪判決を出したが、自白は虚偽であり目撃証言も間違っていたことになる。さらに、男性の家の電話記録から犯行時間のアリバイがあることや現場の足跡が男性の靴と3.5センチも違うなど、無実の証拠が調べられずに誤判がおきたことが明らかとなった。男性が警察の取り調べの過酷さ、自白強要を訴えているのは当然である。富山事件、志布志事件をはじめ、この間あいついでえん罪が発覚、無罪判決が出されている。狭山事件と同じえん罪の構造がいまも続いており、えん罪をなくすための司法改革が早急に必要であることを示している。このような公権力による人権侵害がおきた原因について、政府や国会で徹底して究明し、改善しなければならない重大な事態というべきである。

 志布志事件の無罪判決、富山えん罪事件の発覚を受けて、えん罪・誤判防止のために、一部ではなくすべての取り調べの可視化が不可欠であること、警察の捜査過程で集められた記録・証拠に弁護側がアクセスできることが必象であることが、えん罪当事者や弁護士、学者ら多方面から指摘されている。とくに、09年5月までに市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が実施されることになっており、取り調べの可視化と証拠開示の保障を実現することが急務であることは明らかである。民主党は取り調べの可視化を求める法律案を参議院で提出する方針であると報じられている。
  取り調べの可視化や弁護側への証拠開示の保障は、国際的には当然のこととされ、国連からもくりかえし勧告されている。ことし5月に国連の拷問禁止委員会は日本政府にたいして、自白にもとづく有罪判決の多さ、弁護側の警察記録へのアクセスが制限されていることへの懸念を指摘したうえで、「警察拘禁ないし代用監獄での被拘禁者の取り調べが、全取り調べの電子的記録およびビデオ録画、取り調べ中の弁護人へのアクセスおよび弁護人の取り調べ立会いといった方法により体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判で利用可能となることを確実にすべきである」と勧告している。えん罪を生まないための司法改革を実現するかどうかは、日本の人権状況として世界から問われていることなのである。

 狭山事件の第3次再審の闘いでは事実調べを実現することが最大の課題である。そして、そのためにも、東京高検が隠しもつ証拠の開示を実現することが重要である。弁護団は第3次再審請求でも、証拠開示を求めて東京高検の担当検事と交渉しているが、もう20年以上も検察官は弁護側の証拠開示請求に応じていない。
  現行の手続きでは、検察官に大きな裁量権があり、「証拠リスト」も開示されないため、検察官が「証拠が存在しない」と回答すればそれで終わってしまう。国連の自由権規約委員会の委員も、証拠開示について検察官の権限が大きすぎること、検察官の手元にどのような証拠があるのかが弁護側にわからないことなど、手続きの不公平さを指摘している。新証拠発見を要件とする再審請求では、弁護側への証拠開示が不可欠・当然というべきである。
  証拠開示のルール化をはじめえん罪をなくすための司法改革を実現していくことは、狭山再審の闘い、弁護団の活動をすすめていくうえでも重要なとりくみである。
  10月31日に実行委員会主催でひらかれる狭山事件の再審を求める市民集会では、石川さんをはじめ袴田事件、志布志事件、痴漢えん罪事件などの当事者からアピールを受けるとともに、「えん罪をなくせ! いまこそ司法民主化を!」をかかげて国会請願デモと国会議員要請行動をおこなう。国会で、あいつぐえん罪発覚を真剣に受けとめ、このような人権侵害をなくすための政策を具体的に議論するよう求めていこう。集会・国会請願を成功させ、取り調べの完全な可視化と証拠開示の保障を実現する法制定を要請しよう。

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