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11月6日から3日間、部落解放研究第41回全国集会が長野県でひらかれる。今回の全国集会は、昨年の部落解放運動にかかわる不祥事発覚をふまえ、運動の再生と信頼回復の実践途上でひらかれる研究集会である。部落解放運動をとりまく状況も大きく変化し、今後の運動のあり方をはじめ、同和行政や各界での部落差別撤廃のとりくみも大きな節目のときを迎えている。まさに今後の方向性を示す絶好の機会である。とりわけ部落解放運動の方向性と地方自治体での部落差別撤廃行政の方向性を可能な限り明確に示すために活発な論議が求められている。その前提として、今日の部落差別やその実態をどのようにとらえるのかといった重要な課題が山積している。それらの課題に一定の方向性を出さなければ部落差別撤廃のとりくみは大きく後退する。
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まず第1に、今日の部落差別をどのようにとらえるのかというもっとも重要な理論的課題がある。部落差別はなぜ存続し続けるのかというその原因をつきとめない限り、部落差別の根本的解決はない。また根本的解決とはどのような状態を指すのかも抽象的表現でしか明らかにしていない。端的にいえば部落差別が完全撤廃された社会とは、どのような社会かを十分に明確にすることができていないのである。
それだけではない。その前提に部落差別の原因はどこにあるのかを十分に詳細に明確化できていないのである。社会システムにあるという一定の枠組みは提示してきたが、その枠内を十分に明らかにすることができていない。今日、部落差別を制度的に固定化する法律・制度は存在しないが、これまでの累積的差別が、現在の社会システムと重なるとき、差別の再生産の構造を作り出してきた。それらをより詳細に明らかにすることが私たちのもっとも重要な理論的課題であり、可能な限り研究集会などを通じて明確にする必要がある。
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第2に、格差拡大社会といわれる状況のなかで、部落差別の実態がどのように変化しているのかということを明確にする必要がある。生活実態だけではなく格差社会が人びとの意識にどのような影響を与えているのかも重要な事項である。
格差拡大社会は底辺層の不満が拡大する社会でもあり、その不満の矛先は底辺層の反対の極である「勝ち組」に向くよりも多くの場合、近親憎悪的に自身の立場に近く自分たちよりも少し待遇がよい人びとに向きやすい。また、既存の差別意識が不満のはけ口として利用されることもめずらしくない。近年の地方公務員バッシングや同和バッシングはその証である。今日の格差問題で重要な問題は、若年期の格差が固定化してしまう可能性が大きく、地域間の格差も広がっているという問題である。この二つの問題は、部落問題解決にとって大きな負の影響をおよぼす。
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第3に、上記の内容ともかかわって、今日の差別事件の現状をふまえつつ、特徴、背景、課題を明確にする必要がある。とりわけ今日の差別事件のなかでも多発しているインターネット上の差別事件にどのように対処するかは最重要課題である。
ネット上の差別事件は、情報環境が世界を変えたように電子空間上の差別事件が差別事件の態様を変えるような状況になりつつある。
さらに結婚差別事件のように忌避・排除といった旧来の差別事件もあとをたたない。戸籍不正入手事件やその先にある結婚差別事件はその典型である。結婚差別、就職差別、土地差別は多くの人びとにとって人生の重要な局面での差別である。就職差別は克服に向け大きく前進したが、被差別部落出身者を忌避する典型である結婚差別や被差別部落を避けようとする不動産購入時等の土地差別は依然として根強い。2005年12月、2006年1月に発覚した第9・第10の新たな「部落地名総鑑」と2006年9月に発覚した「電子版・部落地名総鑑」の存在が明らかになったのは、その際たるものである。
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第4に、部落差別撤廃行政である同和行政の今後の方向性を示すことである。差別の諸現象をふまえつつ、部落差別の原因を克服する多くの政策を明らかにする必要がある。それは部落差別撤廃をおしすすめる社会システムを明らかにすることにもつながる。
第5に、各地で制定された人権条例をはじめ、これまでの人権に関する答申や行動計画、プランといった成果を活用する方向を明確に指し示す必要がある。本研究集会では、3日目の全体集会と並行し人権条例などの活用実践を報告する特別集会が開催される。そのなかで「絵に描いた餅」になっている多くの地方自治体の人権に関する条例や答申、プランの活用方策を明らかにすることが求められている。
最後に、もっとも重要な課題であるが、社会に多大な影響を与えてきた部落解放運動の成果と問題点を明らかにしつつ、運動の今後の方向を明確にするための論議を深める必要がある。
研究集会では、これ以外にも多くの課題が存在するが、それらの課題にたいしても参加者の活発な実践報告と論議を期待したい。
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