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「部落解放運動に対する提言委員会」の「提言――一連の不祥事の分析と部落解放運動の再生にむけて」(部落解放同盟中央本部に12月12日、手交)の「2、運動論の再構築④」に、「新しい文化創造の時代」と題された部分があるのだが、そこでは、つぎの4点が指摘されている。
①被差別民衆の視座から……歴史と文化を見直し、人間的誇りと連帯の根拠を究明していくこと。
②被差別民の歴史について、差別・貧困・悲惨の視点からだけでなく、その……生産的・創造的役割について明確に提示し、「胸を張って」部落を語れる状況をつくり出していくこと。
③識字運動や部落解放文学賞などの充実を図るとともに、……被差別部落の伝統文化の保存・伝承に力を入れること。
④反差別文化・人権資料展示の全国ネットワーク活動と文化広報活動を強化すること。
大切な指摘だと思う。「提言」全般を部落解放同盟が真撃に受けとめるべきは、いうまでもない。だが、ある意味、ここで引用した2の④の「提言」こそ、部落解放同盟が全身全霊をもって、受けるべき中身だったのかも知れない。
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「提言」にいう「被差別民衆の視座」「人間的誇り」「被差別民の生産的・創造的役割」の明確な提示、「部落の伝統文化の保存・伝承」ということについて少し考えてみる。
1月17日の中央執行委員会に特別参加をいただいた提言委員会の上田正昭・座長が、室町時代の「天下第一」の庭づくりであった善阿彌の孫にあたる又四郎に関してのお話があった。又四郎もその祖父であった善阿彌も間違いなしに、当時「穣多」とよばれ卑しめられた人びとだったのだが、その又四郎がある高僧を前にこう語ったのだという。「私は、牛馬の死体を処理する家に生まれたことをただひたすら悲しく思っています。だからこそ、物の命は誓うて断たず、また財宝は心してむさぼらないようにしています」。
又四郎のこうした思いや態度を卑屈なとみるかどうかは、意見の分かれるところだが、少なくともみずからの尊厳で庭づくりに専念し、その奥底をきわめようとしていたのだと思う。
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当時あった「庭づくり」の専門書のなかにあった字のよみを、率直に僧から教えてもらおうとする又四郎の姿勢は、いまある識字運動の精神にも通じる。部落解放文学賞の応募諸作品とて同じ。げんにさきの又四郎の話を聞き入っていた高僧は、又四郎をさして「又四郎、それ人なり。いま時の坊主など足もとにもおよばない」と述懐しているのです。そんな又四郎のような人物を数万・数10万人と作り出していってこその部落解放運動といえよう。
部落解放文学賞への積極的応募や識字運動のよりいっそうの活発化を心から願っている。
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