【大阪支局】「ボン、いつ、よつの研修あるんや?」。06年10月、大阪市にある大阪府福祉会館で府内商工会議所、商工会、商工会連合会の経営指導員を対象とした「大阪府経営指導員研修会 経営安定支援コース」(当日参加者52人)の15分間の休憩時間にY経営指導員による差別発言(別項)が起きた。府連は、これまでに明らかになった事実をふまえ、差別発言をおこなったY経営指導員の真摯な反省と大阪商工会連合会としての責任として、大阪府の指導責任を明らかにするために、近く、糾弾会をひらく予定。
差別発言の背景
Y経営指導員は、行政主催の同和研修や人権研修を数多く受講し、S市商工会事務局次長という指導的立場にある。
Y経営指導員は、差別発言後の聞き取りのなかで、差別発言をした時期が飛鳥会事件などの報道がされていた時であり、子どものころの経験が混ざり合い、同和地区の人は恐いといった意識や同和行政への反感を感じていたとのべている。小学生の時、親から同和地区の人をよつとかエタとよぶことや「同和地区は牛を殺して特殊な仕事をしている。恐い人が多く遊びに行ったらあかん」と聞かされ、中学の時に、ある同和地区を歩いていると、いわれのない脅かしと暴力を受けて、その時の恐怖感で同和地区にたいする差別的イメージをもつことになったとのべた。このような部落への差別的イメージをもっていたY経営指導員は、同和研修にたいしても「寝た子を起こすな」との考えをもっており、同和研修をおこなうこと自体にも不満をもっていたとのべている。
同和研修や人権研修を通じて、このような考えがまったく変わらなかったということは、これまで実施されてきた同和・人権研修の内容のあり方が根本的に問われている。さらにYは、忙しいなかでの研修実施であり、多くの経営指導員は研修を嫌がっており、無理やり受けさせられていると感じていると思うとのべるなど、商工会での人権啓発研修のとりくみが形骸化してきていることも明らかになった。
これらの要因が、差別発言の引き金となったことも見過ごすことはできない。経営指導員の指導能力と資質向上を目的として実施されている研修が、逆の効果を生じさせていることになり、Y経営指導員以外にも人権研修や経営指導員研修にたいして不満をもつ人が多いのではないかと推測される。
*経営指導員とは、小規模事業者(常時雇用する従業員が20人以下の事業所、商業・サービス業は5人以下)の経営や技術の改善を図るため、相談や指導をおこなう商工会などの職員。
概要
06年10月24日、「大阪府経営指導員研修会 経営安定支援コース」の場で、当日の研修実施担当者の大阪府商工連合会のN経営指導員と同連合会地域貢献型企業サポートセンターのS経営指導員が、休憩時に雑談していたところ、近くの椅子に座って休憩していたY経営指導員が、唐突にN経営指導員にたいして「ボン、いつ、よつの研修あるんや?」と発言した。
N経営指導員は、経営指導歴ではY経営指導員の後輩になり、お互いは知り合いの関係。「ボン」とは、Y経営指導員が勝手につけたN経営指導員のあだ名。
この発言を聞いたN経営指導員は、驚きと混乱に陥り、反応できずにいると、Y経営指導員が続けて同じ発言(2回目)をしたため、今度は「それ、どういうことや」と答えた。するとY経営指導員はまたも同じ発言(3回目)を繰り返した。
休憩終了後、N経営指導員は、後半の研修を開始して講師の紹介などを済ませたあと、受講中のY経営指導員を研修会から退席させ、発言の真意をたずねるとともに、発言の反省を求めた。Y経営指導員は、最初はN経営指導員へ自分なりの理由を並べて反論していたが、30分ほど話をつづけている間に、最終的に「よつ」という差別語を使ったことへの反省と謝罪の意を示した。
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