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部落問題資料室
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主張

 

自衛隊・在日米軍の存在を問い
平和と人権の闘いを強めよう
「解放新聞」(2008.03.31-2363)

 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」が、2月19日、千葉県のマグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突、漁船は真っ二つに割られ、漁師の父子二人は行方不明になり、いまだに発見されていない。
  現場は、東京湾に出入りする船舶の交通量が多いところで、漁船も多く航行、細心の注意が要求される海域。そんな海域をイージス艦は自動操舵ですすんでいた。専門家もこのようなことは常識では考えられないという。イージス艦は、衝突の12分前には漁船の灯火を確認したというが、12分あったら衝突は十分回避できたはず。しかし衝突1分前まで自動操舵を続け、その後に手動に切り替え減速しようとしたという。大型船は減速に時間がかかり、この行動も常識では考えられないことである。
  引き上げられた清徳丸の調査をした海上保安本部は、清徳丸に残された塗膜片や傷跡、破損情況からイージス艦の艦首が清徳丸の左舷に衝突したと断定した。ということは、イージス艦は漁船を右に見ていたことになり、海上衝突予防法ではイージス艦に回避義務があった。双方の航路や衝突の情況、清徳丸とともに航行していた仲間の漁船の証言からもそう考えるのが妥当である。
  これまでも自衛艦がこの危険な海域を直進してくることは、珍しいことではなかったという漁協関係者の話もある。
  これらのことを考えると、イージス艦は航行上の規則を守らず、漁船の方がよけるのがあたりまえと考えていた節がある。今回の事故は、漁船の安全や人の命を軽視した、まさに本末転倒の自衛隊のおごりが招いた事故ではないのか。
  この事故からは、「国民の生命と財産を守る」といいながら、実際は軍事目的のために「国民の生命も財産も犠牲にする」という軍隊の本質が垣間見える。

 また、真相究明がなかなかすすまないことも大きな問題で、このままでは事実が隠蔽される可能性もある。88年に釣り船客30人が犠牲になった潜水艦「なだしお」事故でも航海日誌の改ざんがあった。
  自衛隊にとって都合の悪い情報を隠蔽することが許され、自衛隊の横暴が許されれば、それは戦前の軍国主義に通じる危険な兆候ではないか。最近では、インド洋での米軍艦船への自衛艦からの給油量の隠蔽問題も未解決だ。このような情況では、シビリアンコントロールもきかなくなってくる。徹底した真相究明と責任追及が必要だ。

 いっぼうで、教科書検定のように、過去の歴史の事実を消し去り、戦争や軍隊を美化しようとする動きもある。
  文部科学省は昨春、高校歴史教科書の検定で、沖縄戦のさいに日本軍が住民を防空壕から追い出したり、スパイとして殺したり、集団自決を強制したという記述にたいして、教科書会社に修正を迫り、事実を隠蔽しようとした。これには、沖縄を中心に反発と大きな闘いが起こり、検定意見そのものを撤回させることはできなかったが、部分的には記述が復活した。沖縄戦の史実は、軍隊の本質と戦争の実相を示しており、私たちが歴史の教訓とするところであり、隠蔽や改ざんを許してはならない。
  沖縄では、2月10日に米兵による少女暴行事件が発生、18日にはフィリピン女性暴行事件も起こされている。沖縄県議会は2月14日、少女暴行事件にたいする抗議決議を全会一致で採択、また県内の全ての市町村議会が、抗議決議と意見書を可決した。3月23日に開催の県民大会では、在沖米軍基地の整理・縮小と、日米地位協定の抜本的な見直しを日米政府に要求する。
  このように、軍隊の存在が市民の命と人権を奪う現実がある。自衛隊や在日米軍の現状に目を凝らし、さらに現在進行している日米軍事一体化の実態を、今一度問い直す必要がある。そして「人間の安全保障」という新たな発想で、ほんとうに私たちの命と人権を守るために何が必要か、平和な国際社会をつくるために何をしなければならないかを明らかにしていこう。

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