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部落問題資料室
NEWS & 主張
高校生、青年が合同で
釜ケ崎、浅香を視察

「解放新聞」(2008.06.16-2374)

 部落解放第52回全国青年集会実行委員会と全国高校生活動者会議を5月31日、6月1日におこない、16府県連から90人の高校生、青年が参加。1日目は合同でフィールドワークをおこない、2日目は、大阪人権センターで、それぞれ8月23日、24日に鹿児島でひらく第52回全国青年集会、8月29、30日に和歌山でひらく第40回全国高校生集会について、分科会の内容や集会テーマなど協議を深めた。
  全国青年集会実行委員会と全国高校生活動者会議を合同しておこなったのは今回がはじめて。青年と高校生が交流し、タテヨコのつながりを強め、若い活力で運動の再生をめざそうと企画されたもの。
  1日目のフィールドワークは、日雇い労働者、ホームレスが密集する釜ケ崎コースと、大阪市内の被差別部落浅香支部と大阪人権博物館コースにわかれ、それぞれ見学、現地で学んだ。夜は懇親会をひらき、青年と高校生が一緒に食事をしながら交流を深めた。

浅香の街づくり学ぶ
車庫跡地利用をめぐって

 浅香支部・大阪人権博物館コースでは、高校生、青年が40人参加、吉岡中執が同行した。
  浅香支部では、山本義彦・浅香地区まちづくり協議会会長(浅香支部顧問)から、支部の運動の歴史とまちづくり、山本さん自身の生いたちを聞いたあと、浅香のムラを歩いた。
  浅香部落は、大和川の堤防沿いにあり、南に大和川、西に大阪市立大学、東には大和川にかかる大きな橋、北に地下鉄我孫子車庫に囲まれた陸の孤島だった。1957年、大阪市の地下鉄車庫建設計画を前に、ムラから反対運動が起こったが、ムラのなかは寝た子を起こすな意識が強く、持続しなかった。大阪市は、「土地収用法」をもとに強制執行した。敷地買収のさいに部落の土地は1坪1700円、部落外の土地は1坪6500円で買収した。反対運動をおしきり、60年、地下鉄我孫子車庫が完成。3万3千坪(甲子園球場3つ分)の広大な敷地だった。
  当時の浅香の人は、大和川の河川敷にバラックを建てて暮らしていた。バラックは密集し、雨漏りや風水害も多く、川が増水すると浸水するなど劣悪な環境だった。65年7月、浅香より一足早く部落解放運動をすすめていた近隣部落の運動に学び、住宅要求闘争に起ちあがった。が、完成した住宅の入居をめぐってトラブルが起きるなど、結果的に住宅建設事業は町内住民を二分してしまった。山本さんはこのときのようすを「新しく建てられた住宅のまわりに鉄条網を張りめぐらせ電流を流すなど、ムラのなかでバチバチのケンカが起こった。仲直りに10年かかった」と振り返った。
  65年9月、浅香支部を結成。地下鉄車庫撤去に支部をあげてとりくむ。
  山本さんは、小学生のころ、朝4時から夜の11時まで働いていた。そのため、小学校にいけたのは午前中だけだった。給食費が払えず、給食を辞めた。先生は「あ、そう」と理由も聞かなかった。「大人になってから、夜、辞書を引いて一生懸命勉強した。運動は、教育にはじまり、教育に終わる。子どもらに学力をつけようととりくんだ。70年以降、浅香から医者を3人輩出した。なぜか? それは、夢を語るからだ。部落解放運動には夢があるんだ」と山本さん。
  1976年、浅香支部をはじめ地下鉄車庫労働者など多くの仲間とともに、部落解放浅香地区総合計画実行委員会を結成。統一要求を作成し、それをもとに市と話し合う。総合対市交渉で、大阪市は「地下鉄車庫撤去に向けて努力する」と確約する。87年、浅香支部をはじめともに闘ってきた人たちの悲願だった、地下鉄車庫が撤去された。
  「橋のない川なら、こちらから架けてみよう」との思いから、車庫の跡地は浅香を含めた周辺部全体のまちづくりとして利用しようと考えた。周辺住民へ働きかけ、88年、周辺住民・組織とともに「地下鉄車庫跡地利用街づくり推進協議会」を結成する。まちづくりを通じて部落差別をはじめあらゆる差別をなくすための共通認識として、4つの理念(にんげんの街、住民自治の街、水と緑の街、教育と文化の街)を掲げ、ともに歩むとりくみがはじまる。11月には、「跡地まつり」をひらき、3万5千もの人が集まった。
  その後、跡地には、海外技術者研修協会・関西研修センター、我孫子南中学校、特別養護老人ホーム、住吉区在宅サービスセンター、1万坪の浅香中央公園などを、まちづくりの4つの理念をもとに、地元の総意で完成させる。98年、2回目の「跡地まつり」には、5万人もの人が浅香に来た。そしていま浅香支部は、44か国、55のNGOと交流している。また、2002年には障害者の地域での事業をおこなう社会福祉法人「熱と光」を作った。
  山本さんは「これらの運動は、まざれもなく部落解放運動から出てきた。松本治一郎・元委員長の言葉「不可侵 不可被侵」を考えたとき、日本は、日本に住む私たちは、アジアの労働力や資源を搾取してないか。アジアの貧困の上にいまのこの生活が成り立っていないか。アジアに住む多くの被差別の人が浅香を見たときに、特別ではないということを伝えたい。なんで街が変わったのか? 暗いところからは明るいところが見える」と語った。
  最後に、「僕には夢がある。子ども虐待被害者を支援する運動をつくりたい。みなさんは選ばれて生まれてきた。若いみなさんに期待しています」と参加者にエールをおくった。
  その後、浅香のなかをフィールドワーク。かつてその河川敷にはバラックが建っていた大和川、浅香中央公園などをまわった。
  バスで移動し、最後に大阪人権博物館を見学した。

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