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部落問題資料室
NEWS & 主張
問われる萩市の人権行政
市結婚相談所の戸籍問題で

「解放新聞」(2008.07.14-2378)

 山口県萩市が「結婚相談所」を5月に開設、本人の戸籍謄本と運転免許証などの写しを提出させ、申込書に、本籍、宗教、身体上の障害、初婚、再楯(死別・生別)、既往症、身長、体重、血液型、家族とその職業までも記入させていた事件(前号既報)の経過や背景、問題点などを報告する。

職員も市民も気づかないまま

 事件が明るみになったのは5月3日付の『中国新聞』記事で「写真や戸籍謄本などを提出して登録する」と書かれていたことから。
  市報「HAGI」(5月1日号)にも「独身男女の出会いと結婚を応援します」と見出しをうち、結婚相談所備え付けの申込書に、写真2枚、戸籍謄本1通(戸籍個人事項証明)、身分証明書(運転免許証等の写し)を添えて提出する、とあり、ごていねいにも「※提出された個人情報は、萩市個人情報保護条例に基づき適正に取り扱います」と書き添えられていた。
  山口県連が萩市に確認したところ、申込書の重大な問題点も明らかになった。
  また後に、4月11日付『西日本新聞』にも戸籍謄本と運転免許証などの写しの提出が報じられていたことが判明した。

「改正戸籍法」が施行はされたが

 萩市は山口県連の指摘をうけ、5月20日から「戸籍謄本」を「独身証明書」に、運転免許証などを提示に変更、「申込書」「紹介カード」も6月6日に改正し6月15日付市報「HAGI」で提出書類の変更を小さく伝えた。
  5月19日の第1回確認会、6月23日の第2回確認会で明らかになったことは、戸籍謄本を提出させることの差別性や問題点について、職員のだれからも、市民のだれからも指摘がなかったこと。
  萩市内には被差別部落もあり、同和対策事業もおこなわれてきた歴史があるにもかかわらず、戸籍謄本の提出は結婚差別に直結するものであることを、だれも認識できなかったことは重大である。これまでの同和行政・人権行政のすべてが問われているといえる。
  そのことは一方で、結婚にかかわって戸籍を調べることが、ごくあたりまえのことと、日常のこととしてくり返されてきたであろうことにも気づかさせる。
  近年また明るみになっている、行政書士や司法書士による戸籍謄本などの大量不正取得事件が、差別や人権侵害をひきおこし、不正に取得された人への本人通知によっても、たまたま部落外ではあったが、結婚のさいの身元調査に悪用されたことは裏付けられている。
  この大量不正取得事件が契機となり、昨年「戸籍法」の一部改正がおこなわれ、本人確認が今年5月から厳格化され、請求理由の記入も求められた。
  萩市では指摘されるまでに10人が申しこみをおこない、戸籍謄本を10通交付している。このことについてただされた市は「本人確認は求められているが、本人請求の場合は(理由は)必要ない。プライバシーにふみこむのはちょっと…」と回答。戸籍の請求理由と提出先をたずね、回答を求め、不当な目的であることが判明すれば交付拒否できるにもかかわらず、なんのために本人確認を厳しくしたのか、まったくその趣旨さえ理解されていないことが浮きぼりになった。
  今回の事件は、こうした後ろ向きの人権感覚がひきおこしたもので、戸籍をもたない在日外国人がまったく抜けおちていることや、申込書に宗教や家族の職業、障害、既往症、血液型まで記入させていたことからも、あたりまえの日常こそが問われているといえる。

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