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この間の石油価格、食料価格の高騰は、明らかに国際的な投機の影響を受けたものだ。
たとえば、トウモロコシを原料とするバイオ燃料生産は、食用トウモロコシからエタノール用トウモロコシへと作付面積を大幅に増やし、食用のトウモロコシの国際価格を大きく上昇させた。あるいは、小麦や原油の先物市場への投機資金の投入が、これらの国際価格をつり上げている。
途上国では収入の50%以上が食費に費やされ、いまや輸入に頼る、主食となるトウモロコシ、小麦、米などの急激な価格上昇は、生存の権利すら奪うものだ。
こうした世界的な食糧問題の根底にあるものは何か。
食糧危機を作り出したのは、グローバリゼーションだ。借金が重なる国家(累積債務国)、たとえばブラジル、メキシコ、フィリピンにたいして、新自由主義者が考えついたのが、食料輸出を世界戦略としているアメリカや国際資本の累積債務国への進出だ。各国の自給自足を支えてきた、それまでの国内での農業生産者への融資、補助制度が解体され、代わりにアメリカからの安い農産物が大量に輸入されるようになったのだ。
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今年7月、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が土壇場で決裂した。共通の貿易ルールのなかで互いに関税を引き下げ、世界的に自由な貿易をおこなおう、というのがWTOの理念だが、現実はどうなのか。
決裂の原因になったのは、農産物の輸入が急増したときの「緊急輸入制限措置」(セーフガード)の発動条件をめぐるアメリカとインド、中国の対立だった。安い農産物を大量に、世界戦略として売り込みたいアメリカと、それを認めるといまや食糧輸入国となったインド、中国が自国の農家の保護も含めて、成り立たないと抵抗したのだ。
WTOは日本にとっても、安い農産物の輸入を求められる、苦しいものだった。高関税品目のこれ以上の減少という「最悪の結果は回避」したものの、今後への課題は多い。経営規模の拡大に向けた農地集約や、価格だけでなく品質や安全性をもった農産品をどう作るか、という政府が努力目標に掲げる課題も存在する。
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39%にまで落ち込んだ食料自給率をどう引き上げるか。そのうえで経営規模の大きな農家をどう育成するのか。輸入食品との価格戦争にどううちかつのか。政府の問題意識は、さきにあげた課題とともに、そこにある。
7月に和歌山でひらいた全国農林漁業部長会議では、政府・農水省の現段階でのさまざまな制度や政策を聞いた。あるいは、開催地の和歌山での部落農家にたいする施策を聞き、部落でのトマト栽培、JAの市場などを見た。
もちろん、現在すすめる政府の方向性にたいして、部落では小規模、兼業農家が圧倒的で、いまの政府の基準に合わない、という批判も存在する。しかし、部落の農業の現状をふまえたうえで、どう制度を活用し、協働したとりくみとして農業をすすめるかという視点から、考えてみたい。
会議でも提案したように、部落農家の要求をまとめ、専門委員を作り、さまざまなネットワークを作りあげる、という手順から、世界の、日本の、そしてなによりも部落の農業を考え、発展させ、農業-食糧-環境を私たちの手に取り戻す闘いとして、とりくんでいく決意だ。
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