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部落問題資料室
NEWS & 主張
結婚相談所は差別の温床か
公的機関がいまも戸籍など要求

「解放新聞」(2008.09.01-2385)

 山口県で萩市の結婚相談所が申込者に戸籍謄本の提出を要求していたことが分かった5月から、県内の公的機関の結婚相談所があいついで同様の問題を露呈。宇部市の社会福祉協議会の結婚相談所も身体上の障害や既往歴などを書かせていた。また、県内だけにとどまらず、長崎県の佐世保市でも同様の問題が発覚した。両県連のとりくみを掲載する。(関連記事をはじめ2377号、2384号で掲載)

市職員の認識不足露呈
国の要請は民間のみが対象と
  【長崎支局】結婚相談所が登録時に戸籍などの提出を求めていたという問題で、同様のことを佐世保市の結婚相談所でもおこなっていたことが判明した。
  問題が明らかになったのは、萩市の新聞報道ののち、新聞記者の取材・指摘をうけた佐世保市がすぐに「戸籍謄本」の提出を市発行の「独身証明書」に変更、そのことが6月20日付けの毎日新聞に掲載されたことによるもの。
  その後、県連は、基本的人権を侵害することがないようにと通産省が出した要請文書(2000年5月10日)の認識や、現在ある戸籍謄抄本の本人への返却などについて佐世保市に説明と今後のとりくみを求めた。それにたいして市はこのほど文書回答をした。
  市は、要請文書は、知事を通じて当時確かに市が受理した。しかし同文書の「結婚サービス・結婚相談業者」を民間事業者のみを対象にしたものと解釈し、市立結婚相談所については該当しないと判断し、部内での文書供覧にとどめ、戸籍謄本の提出を独身証明の提出に切り替えなかった、と認め、戸籍の提出が差別につながる恐れがあることの認識もなかったとのべている。そしてこのことは市職員としての人権にたいする認識が不足していたと認め、登録者にはおわびし、「戸籍謄本」を返却する、と回答した。
  また、市は、県人権教育啓発センターの講師による同和問題を主とした人権啓発研修の実施や、新入職員研修などを新たにとりくんでいく方針を回答した。
  県連は、人権啓発課も属する市民生活部内の所管にあった結婚相談所で、新聞記者の指摘があるまで、だれもこの間題に気づかなかったこと、記録が残っている5年以内の登録者601人、年間3000をこえる面談があったにもかかわらず、市職員研修に充実を計るだけで問題解決とすることには疑問が残るとし、この問題を明らかにし、市民への啓発になるよう、今後も市にたいして要望を強めていきたいと、話した。

だれからも指摘がなく
職員の研修もなし
  【山口支局】宇部市社会福祉協議会(社協)の結婚相談事業で、登録時に「前住所・転居理由」「障害の有無」「既往歴」などを書かせていた問題で県連と地元宇部支部は6月17日、宇部市男女共同参画センターで第2回確認会をひらき、この10年間で600人が登録してきたのに、職員や市民のだれからも指摘がなかったことから、宇部市、県社協、市社協らが今後、人権・同和問題の解決に向けてどうとりくむのか協議をすすめることになった。
  事実確認では、97年に全国社会福祉協議会が、結婚相談事業を実施する社協にたいして、「相談カード等に本籍欄・宗教欄・親の職業欄等の基本的人権に関わる項目は削除すること。他の記入項目についても、見直すべき点がないか点検し改善すること」と通達を出し、しかも、相談カードは「氏名・生年月日・住所・職業・趣味・自己PR」と雛形まで示していたが、宇部市社協は本籍・宗教・親の職業欄だけを削除し、雛形は参考にせず、「前住所・転居理由」「障害の有無」や「既往歴」「離婚理由」などはそのままにして使用していた。
  また県社協、県、宇部市も国から97年以降、指導改善するよう要請されていたが、現時点では書類もなく、当時の担当者も「記憶にない」という状況。
  今回、指摘された宇部市社協は、「担当者・相談員任せで詳しい業務内容は知らなかった」「自分たちは人権にかかわる仕事をしており、「わかっている」という「自負」があった」とのべ、職員の人権研修を実施していないことも明らかにした。
  県社協も、階層別やスキル研修など年間50近くの研修を実施しているが、人権研修は一つもないことが明らかになった。
  県連は、たび重なる結婚差別の現実から、改善指導がおこなわれたのに、その趣旨が理解されないまま、たんなる「書式改訂」という認識だったのではないか、と指摘した。


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