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部落問題資料室
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主張

 

宮崎全研成功へ各地で準備を重ね
実践と理論を交流しよう
「解放新聞」(2008.09.08-2386)

 10月3~5日、部落解放研究第42回全国集会が宮崎県でひらかれる。昨年11月にひらかれた「長野全研」から約10か月が経過した。「長野全研」前に示した5つの課題は、宮崎全研でも重要課題である。
  それは第1に、今日の部落差別をどのようにとらえるのかという課題。第2に、格差拡大社会といわれる状況のなかで、部落差別の実態がどのように変化しているのかをとらえる課題。第3に、今日の差別事件の現状をふまえつつ、特徴、背景などを明確にする課題。第4に、部落差別撤廃行政である同和行政の今後の方向性を示す課題。第5に、各地で制定された人権条例をはじめ、これまでの人権に関する答申や行動計画、プランといった成果を活用する方向を指し示す課題である。

 部落解放運動をとりまく厳しい情勢をふまえたとき、これらの課題が部落解放運動の活性化、部落差別撤廃にとっての最重要課題であるといえる。
  部落解放運動の推進、部落問題の研究、同和行政の推進にとって、前提となるのは「差別の現実」であり、部落解放運動をとりまく現実である。「方針は現実から与えられている」ことを忘れてはならない。
  今日の部落解放運動をとりまく状況変化を正確にとらえることは、部落差別撤廃に関係する機関としてもっとも重要な課題である。

 今日の運動をとりまく大きな変化の第1は、同和行政にかかわる「特別事業法」が失効したという変化である。
  1969年「同和対策事業特別措置法」が成立してから、33年間にわたって「特別法」のもとで同和行政が展開されてきた。すでに「特別法」が失効して7年目を迎えているが、部落差別は厳然と存在している。
  にもかかわらず「特別法」がなくなったことで、「部落問題は終わった」「部落差別はなくなった」という誤った認識が根強く残っている。
  誤った認識は結果として、「特別法」時代に培った成果の一部を大きく後退させることにつながり、「特別法」失効によって、部落差別撤廃にたいする積極的な認識を希薄化させた。
  第2は、経済的格差を中心とした「格差拡大社会」が進行しているという変化である。経済的格差が拡大している時代に、被差別者の生活実態がよりよい方向に向かった事例はない。格差拡大社会は、差別拡大社会であり、差別問題を解決するうえでマイナスの影響を与えている。これの現実を正確にふまえた部落解放運動、部落問題研究が求められている。

 第3は、増加する社会問題に反して国・地方自治体の行財政悪化という変化である。財政再建という名のもとに教育、福祉、人権にかかわる施策が大幅に削減されている。本来の行政の役割まで放棄しようとしているのではないかと思えるほどである。
  日本の行政機関でもっとも深刻な財政危機を抱えているのは国である。それらのしわ寄せがますます地方の財政を悪化させている。厳しい財政状況のなかでも、教育、福祉、人権などのセーフティーネットをはじめとする行政の役割は明確に存在している。
  本来ならば、行財政を支出して格差是正や社会的問題を解決しなければならないにもかかわらず、それが十分にできていない。部落問題解決という分野でも、行政の役割が重要であるにもかかわらず、行政の力が行財政の悪化とともに弱体化している。それが今日の特徴となっている。

 第4は、反人権主義的傾向が強まっているという変化である。「差別撤廃」の理念は、誰にも否定できないが、思想や伝統的価値観の名のもとに否定されようとしている。
  端的にあらわれているのがジェンダー・バッシングである。これまでの女性差別撤廃の積み上げが、日本の伝統的価値観の重視や、イデオロギー的対立に見せかけて、ジェンダー・バッシングという形で出てきている。
  部落問題でも、ネットを中心にどうどうと差別煽動をすることが日常的になっている。これらが部落差別撤廃にとって重大なマイナス影響を与えている。
  第5は、部落解放運動関係者の不祥事発覚とマイナス・イメージの拡大という変化である。私たち自身が反省しなければならないことはいうまでもないが、そのことで同和行政の後退や差別意識が強まることがあってはならない。
  これらの五つの状況をふまえたうえで、今後の部落解放運動、部落差別撤廃行政、同和教育、人権教育・啓発を推進していかなければならない。そのためにも運動、教育、行政、各分野の研究深化が求められている。
  第42回宮崎全研が全国各地と各分野の実践と研究成果の発表によって、討論と交流がさらに推進されるよう各地域、各分野の実践・研究報告の準備を急ごう。

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