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実効ある救済機関の設置を含む
「人権侵害救済法」の早期制定に
向け国会請願署名を集中しよう
「解放新聞」(2009.04.20-2415)

 人権擁護推進審議会による01年の答申をふまえ、政府は早急に「人権侵害被害者救済のための法」制定をおこなう必要がある。しかし現在も与党内部での議論が停滞しており、この状況を打破するためにも、積極的な国会請願署名運動が必要だ。署名の対象は、①衆参の全国会議員および総選挙選挙候補者②自治体の首長や議員③各種団体の代表からの個人署名と④社会的世論を喚起するための5人連記の大衆署名である。大だい的に展開していこう

 2001年5月に、当時の人権擁護推進審議会は「人権救済制度の在り方について」を答申し、政府にたいしてつぎのような指摘をおこなった。
  「法務省の人権擁護機関は、広く人権侵害一般を対象とした人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じて、人権侵害の被害者の救済に一定の役割を果たしているが、現状においては救済の実効性に限界がある。また、被害者の救済に関しては、最終的な紛争解決手段としての裁判制度のほか、行政機関や民間団体等による各種の裁判外紛争処理制度(ADR)等が用意されているが、これらは、実効的な救済という観点からは、それぞれ制約や限界を有している」との現状認識を示し、人権救済機関の創設の必要性に言及した。
  すなわち、人権救済制度における救済手法を大幅に拡充することが必要であり、簡易な救済のための相談やあっせん、指導等に加え、積極的救済のための調停、仲裁、勧告・公表、訴訟援助等の手法整備を図る必要があるということである。
  とりわけ、「積極的救済を含む救済を行う人権救済機関は、政府からの独立性が不可欠であり、そのような独立性を有する委員会組織とする必要がある」。

 この答申を受けて、2002年3月に政府は、「人権擁護法案」を国会に提出したが、想定されている人権委員会の独立性や救済での実効性、さらにメディア規制条項などの問題をめぐり、4国会を通じて継続審議となったが、衆議院解散により自然廃案となった。
  当時の私たちの主張は、独立性を担保するために人権委員会所管は法務省ではなく内閣府にすべきであること、実効性を確保するために中央人権委員会だけでなく都道府県ごとに地方人権委員会を設置すること、国民の知る権利や報道の自由を守るためにメディア規制条項は削除することを求めてきたことは周知のとおりである。
  与野党のねぼり強い修正協議が国会内外ですすめられ、「法案」の再提出への準備がおこなわれた2005年3月段階から与党・自民党のなかで異変が起こった。国権主義・民族排外主義的な論調から法案そのものに反対する意見が噴出し、あげくのはてには反「人権」的立場からの主張までもが公然と国会内外で大手を振りはじめている。
  この状況は、今日も基本的につづいており、昨年の通常国会中に自民党人権問題等調査会が16回開催されたが、結局「法案」をまとめあげることはできず、現在も調査会は開店休業状態のままである。

 私たちは、この現状をふまえながらも、これを打破していくために、麻生政権のもとでの充実した「人権侵害救済法」の成立は困難であると判断し、総選挙後の新たな政治状況をつくり出すなかで、「法」案の提出・成立をはかる政治的条件を整備していくとりくみに力を注ぐことを決定している。
  そのとりくみの中心的な課題が、「人権侵害救済法」の早期制定を求める国会請願署名運動の展開である。このとりくみの意義と目的はつぎのとおりである。
  第1に、「法」闘争の間断なき継続である。署名運動を通じて、国会に法案提出がなく与党自民党内でも議論が停止されている状況のもとで、「人権侵害救済法」の一日も早い制定の必要性を継続的に各政党や国会議員に意識化させておくことである。そのためにも、総選挙を活用して推薦候補との政策協定締結の一環として署名をかちとっていくことである。
  第2に、「法」制定の必要性についての再理論武装化である。私たちの側にとっても、人権擁護推進審議会答申の中身を再度検討し直し、「法」の必要性の根拠を明確に整理し、「法」要求の正当性を広範な人びとに訴えていく体制を整えることである。
  そのさい、①差別・人権侵害の実態を明らかにし②現行の人権侵害救済制度の不備と限界をていねいに示し③世界的な国内人権機関の動向や国連人権諸条約委員会の日本政府への勧告などを説明し、量よりも質を大事にする署名活動を展開することである。
  第3に、署名運動のなかで、「人権侵害救済法」の制定が日本での人権の法制度を作りあげていく大きな礎になり、憲法の基本精神である人権や平和を具体化していく重要なとりくみであることを訴えていくことである。

 したがって、今回の国会請願署名運動は、もう一度「人権侵害救済法」のとりくみ体制を盤石のものとして再構築していく運動であり、署名の対象は、①衆参の全国会議員および衆議院選挙候補者②自治体の首長や議員③各種団体の代表からの個人署名と④社会的世論を喚起するための5人連記の大衆署名というかたちで展開していくものである。
  政局は解散時期をめぐり混沌としている感があるが、私たちの「人権侵害救済法」制定を求める闘いは、いかなる政権であろうとも本来的に超党派的にとりくまなければならない正義の闘いであることを強く訴えながら、総選挙後の早い段階で「人権侵害救済法」の制定実現をかちとるために、自治体議会決議の拡大や各地域での学習・集会の実施などとともに、国会請願署名運動を大だい的に展開していこう。


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