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狭山弁護団は5月22日に新証拠を東京高裁に提出することを決めた。元警察鑑識課員である斎藤保・鑑定人による脅迫状にかかわる鑑定書などである。これらの新証拠は、脅迫状が石川さんの無実を示していること、自白が真実ではないことを明らかにするものである。
弁護団は第3次再審請求で、すでにこれまで、あらたな筆跡鑑定書を3通、殺害方法、死体処理の自白が真実ではないことを示す法医学者による鑑定書2通、目撃証言と犯人の声の識別に関する心理学者の鑑定書2通など、専門家による鑑定書を多数提出している。
筆跡鑑定書だけでも確定判決(2審の寺尾判決)からあと20通以上も提出している。しかし、2審判決以降34年以上もまったく事実調べがおこなわれていない。
昨年7月に再審開始決定が東京高裁で出された布川事件でも、水戸地裁土浦支部での再審請求の審理で、法医学者などの鑑定人尋問がおこなわれた。さらに、東京高裁第4刑事部での即時抗告審でも、法医学者の鑑定人尋問、自白テープの改ざんを鑑定した音響工学者などの証人尋問がおこなわれている。また、東京高裁で即時抗告の審理がおこなわれている足利事件では、弁護側の要求をいれてDNA型の再鑑定が現在おこなわれている。
狭山事件の再審請求で34年以上、一度も事実調べがおこなわれていないことは、きわめて不当、不公平といわざるをえない。
弁護団が提出した新証拠によって、石川さんの無実が明らかであり、確定判決に疑問が生じていることは、だれが見ても分かることである。だからこそ、全国から100万人以上の事実調べ・再審を求める署名が東京高裁に提出されているのだ。
東京高裁第4刑事部の門野博・裁判長は1日も早く、鑑定人の尋問などの事実調べをおこなうべきである。
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1か月後の裁判員制度開始をひかえて、民主党、社民党の両党は、4月3日、参議院に「取調べ可視化法案」を再提出した。これは取り調べの全過程を録画・録音すること、録画・録音のない供述調書は裁判で証拠とできないこと、検察官は手持ち証拠のリストを弁護側に開示することをもりこんだものである。
警察庁、検察庁は、一昨年の志布志えん罪事件、氷見えん罪事件で無罪判決が出され、密室の取り調べ、ウソの自白の強要が問題になったにもかかわらず、「一部の録画」で足りるとして全面可視化に反対七ている。しかし、警察庁のいうように、自白後に調書を読み聞かせているところを録画するというのであれば、それは取り調べの可視化でも何でもなく、むしろ、裁判員に問題なく自白したという印象だけを与え、えん罪を生む証拠になりかねない。氷見事件で無実の罪で服役までさせられた柳原さんの取り調べ体験を聞けば、全面可視化が必要なことは明らかである。
裁判員制度のもとでえん罪を生まないために、必要不可欠な環境整備の一つとして、可視化法案の早期成立をめざして、世論をもりあげよう。
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裁判員制度の開始にあたって、刑事裁判の目的が「無罪の発見」であり、えん罪を作らないこと、誤判を生まないことであることを確認、徹底しなければならない。氷見事件では自白調書に依存した捜査、裁判のため、十分な証拠調べがなされず、誤判を引き起こした。誤判を生まないために、証拠開示とともに十分な証拠調べ、事実調べが必要であることは、疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の鉄則からしても明らかである。
5月21日の裁判員制度開始の日は、石川さんが46年前にえん罪におとしいれられた節目でもある。狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会では、この節目にあわせて、狭山事件の真相、事実調べ-再審開始とともに、「えん罪なくせ! 再審ひらけ!」を訴えて、5月22日、正午から都内でターミナル情宣をおこなうとともに、その後、代々木公園に集合して市民集会とデモをおこなう。
これにあわせて、全国各地でも狭山第3次再審の開始、事実調べ、証拠開示、取調べ全面可視化法案の早期成立、司法民主化をアピールしよう。各地のメーデーやさまざまな集会で、狭山再審とえん罪防止を訴えよう。
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