「解放新聞」(2009.05.04-2417)
高橋貞樹の生涯を沖浦さんが語る
沖浦さんは、第1回から講演会の講師をつとめ、ダイナミックな問題設定で日本の被差別民衆の姿を「闇の豊饒」とのべ、被差別の歴史認識の転換を促した。
今回テーマにした高橋貞樹は、沖浦さん自身が大きく影響された人である。高橋貞樹は1905年の生まれであり、19歳のときに『特殊部落一千年史』(1924年)を書き下ろした。その博識には驚くほかない。一貫して、抑圧された人の側にたった生涯であった。1922年には全国水平社が創立されたが、高橋が影響を与えた水平社同人は多く、労働運動や女性解放運動など多岐にわたった。獄中で転向するが、佐野や鍋山とは根本的に違い、ソ連の支配から脱却するという声明だった、とのべた。
最後に沖浦さんは、「なぜこの題にしたか」とのべ、青春時代になにかした経験は重く、共鳴するものがある。それを反芻しながら生きている。高橋の生涯は「光が駆け抜けたような青春であり光芒」といえる。自分たちだけが良い世の中で生きたいということでなく、誰でもが享受できるように手助けする。そういう志が大事だとのべ、高橋のメッセージを忘れないで受けとめてほしいと締めくくった。
また、地域人権学習会「ぼちぼち」のみなさんによる活動紹介は、安心できる居場所と語りによって自分自身を回復させていこうという集いだ。被差別部落出身者や不登校経験者、精神障害者、ベトナムやブラジルからきている人たちが、それぞれ抱える困難や苦しみを識字やミーティングをとおしてみずからが回復していく場をつくっている。自分自身をそのまま受け入れていく支え合いを大事にしている。
人を敬い大切に
講演の前には、厚木在住のシンガーソングライターの輪(りん)さんが、「あのこ」などさわやかな歌声を披露した。
また、来賓の小林常良・厚木市長は、「社会を構成している人びとが自由と物事をはっきりいえる社会、人を敬い大切にしていくことが社会生活をしていくために一番大事だ。こうした考え方がすすんでいるかといえば、実際はそうではない。大人がしっかりそうした意識をもつ必要があり、終わりのない闘いが必要」とあいさつした。
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