いま狭山闘争は勝敗の分岐点、再審開始へ全力で
不当逮捕46カ年糾弾・再審実現勝利闘争に決起くださった全ての支援者に心からお礼の意を深く込めてご挨拶申し上げます。
社会に出て15年目を迎え、拘禁生活の32年間は兎も角、現在に至っても、えん罪を晴らせる目処もたてられず、然も科学の進歩に因って私の無実性は明らかになっているにも拘らず、司法が「再審開始」の姿勢を見せないことに、満腔の怒りを禁じえません。
狭山事件は「部落差別」が根底にあることで、司法では「事実調べ」を行うことに相当な勇気が必要かと思いますが、実務の経験者、或は法を司る裁判官として如何なる事情があるにせよ、公平・公正な裁きをするのが、裁判官に課された仕事である筈です。
元より日本の司法制度は自由心証主義からして、決定権はすべて裁判官に委ねられ、いわば生殺与奪権は裁判官が握っているので、裁判官の胸先三寸で決まって終うので、これ程恐ろしいものはございません。例えば前述のように「証人調べ」等を行えば、私の無実が明らかになるだけでなく、被差別部落民の私を「犯人」に仕立て上げた警察・検察の手口は明らかにされるし、特に、自白のデッチ上げが一つひとつ鮮明になり、「自白」を唯一根拠とした寺尾「確定」判決が崩壊することを意味していますし、それは警察・検察・裁判所が一体となった部落差別犯罪の全てが暴露されることを恐れた結果、今迄の裁判の「確定」判決を追認踏襲した内在をひた隠しする必要性が生じてくるからです。
新証拠や、確定判決が指摘した一つひとつを精査、探求した上で科学の力を借りてはじめて私の無実性に光が当たった訳で、決して無理な要求でないと断言できます。
今般の第三次再審請求審に於いては、皆さんも知っての通り、弁護団は数十点にのぼる私の無実を証明する証言、証拠、鑑定書など提出しました。従って門野裁判長は最早、「事実調べ、証人尋問」などを避けて通ることはできないものと確信して居ります。私は人生の三分の二近くも殺人犯という汚名を着せられ、自由を剥奪され、生活を滅茶苦茶にされたことに対し、其の責任の一端は自分にもあるので、怨みませんが、裁判官には弁護団から提出されたものは正面から直視され、真剣に受け止め、個別的でなく、総合的な判断で評価していただきたいと願っています。言及するまでもなく、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審に於いても適用されるとした白鳥決定が出され、免田、財田川、松山事件などで、開示された証拠が決定的な無実の根拠になって、再審開始で無罪になった例を顧みれば、公的機関である筈の検察官は積極的に証拠開示の義務を負わされている筈なのに、未開示証拠を出そうとしない以上、裁判官の開示勧告のもとで、フェアーに、裁判という土俵の上で白・黒をつけ、それが延いては公正・公平な裁判に繋がるので、裁判官が真実を追究し、公正な裁判を行なうというなら、証拠を隠す検察官を弾劾し、その上で、全証拠の開示命令をすべきであります。
私は裁判所がえん罪作りに加担しているとは思っていませんが、証拠を検察官が私物化していることに問題があり、それを是正させるのも裁判官の仕事であると解します。
何れにせよ、「真実と正義は必ず勝つ」の確信と信念は不変ながら、今現在、狭山再審闘争は最大の山場を迎え、勝敗の分岐点でもあるということを自身に言い聞かせると共に、なんとしても門野裁判長の下で再審開始決定を実現させねばなりません。門野裁判長は来年2月に退官されるそうですが、私は、門野裁判長に「再審開始決定」を出して貰うために精力的に活動を続けて参る所存です。
支援者皆様方も再審実現のため全力で活動を展開して下さるよう心からお願い申し上げて、右、私の決意と常日頃のご尽力を、併せて今日の集会にお越し、頂いたことに衷心より感謝してご挨拶とさせていただきます。
2009年5月23日
石川一雄
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