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部落問題資料室
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足利事件を教訓に、
狭山事件の証拠開示・事実調べを求める世論を広げよう
「解放新聞」(2009.07.20-2428)

 狭山弁護団は5月22日、東京高裁にたいして、元警察鑑識課員である斎藤保・鑑定人による脅迫状・封簡の筆記用具に関する鑑定書などの新証拠を提出した。これらの新証拠は、被害者の万年筆を使って脅迫状・封簡を犯行現場で訂正し、万年筆を自宅へ持ち帰り、それが自白にもとづいて発見されたという確定判決の認定が誤りであることを明らかにした。
  弁護団は第3次再審請求でこれまで、3つの筆跡鑑定、法医学者の鑑定書2通、目撃証言と犯人の声の識別に関する心理学者の鑑定書2通など49点の新証拠を提出している。そして、6月25日、弁護団は東京高裁の門野博・裁判長と面会し、これら新証拠の説明をおこなうとともに、事実調べを強く求めた。
  それにたいして門野裁判長は弁護団が求めていた3者協議をおこなうことを表明した。3者協議は、裁判官と弁護人にくわえて検察官もふくめた3者で審理のすすめ方について協議することだ。第2次再審では3者協議はまったくおこなわれなかった。今回の変化をもたらしたものは何か。弁護団が第3次再審で新証拠を積み重ね、証拠開示についても記録の検討をおこない存在根拠と必要性を示して求めてきた結果だ。
  同時に、志布志、氷見、足利とあいついだえん罪事件で、警察、検察の捜査のあり方の問題と、それを見抜けず有罪判決を出した裁判所の誤りが指摘され、裁判員制度の開始とあいまって市民の不安も明らかになり、取り調べの可視化、証拠開示、事実調べが必要であるという世論がいま高まっている背景もある。
  昨年7月に再審開始決定が東京高裁で出された布川事件では、東京高裁の即時抗告審で3者協議がおこなわれ、証拠開示や鑑定人尋問が実施されている。狭山弁護団は証拠開示の勧告を検察官にたいしておこなうよう裁判所に申し立てており、狭山事件で、3者協議での門野裁判長の積極的な対応を求めたい。

 6月4日、足利事件で無実を訴え再審請求中だった管家利和さんが千葉刑務所から釈放された。東京高裁が実施したDNA型の再鑑定で犯人のDNA型が管家さんと一致しないという結果が出たことを受けて、東京高検は刑の執行を停止したのである。6月23日、東京高裁は再審開始を決定、DNA型が一致しなかったということは取り調べや公判での犯行を認める自白も信用できないことになるとしている。
  足利事件で、17年半にもわたって無実の管家さんを獄中に閉じ込めた有罪判決の根拠は、白白とDNA鑑定であった。弁護団が自白の矛盾や疑問を主張したにもかかわらず、自白を根拠に誤った有罪判決が最高裁もふくめて出されたという現実を、きびしく検証しなければならない。
  弁護団は12年も前からDNA再鑑定や自白の疑問を解明するための鑑定人尋問などの事実調べを一貫して求めていたにもかかわらず、裁判所はおこなってこなかった。重大な人権侵害をひきおこした警察、検察の捜査・取り調べのあり方はいうにおよばず、十分な審理をおこなわなかった裁判所もふくめた真剣な反省が必要である。
  氷見事件、足利事件の教訓として、裁判所は、再審請求で、DNA鑑定だけでなく、警察鑑定を安易に過信せず、再鑑定や鑑定人尋問などの事実調べを積極的におこない、自白の信用性を厳密に評価すべきである。疑問があれば、証拠を開示して、調べ直すべきなのである。今回の狭山事件の3者協議でも、そうした裁判所、検察官の姿勢が問われているといえよう。
  今後、宇都宮地裁でおこなわれる再審公判で無罪判決が出されるであろうが、同じような誤判をくりかえさないために、国会を中心に、弁護士やえん罪支援の市民団体もふくめて、虚偽自白の経緯や科学警察研究所による誤った鑑定の原因など、誤判原因を究明する徹底した作業が必要だ。
  氷見事件、志布志事件にひきつづき、今回の足利事件での誤判の実態に、警察の取り調べと司法にたいする市民の不信、不安は頂点に達している。裁判員制度がすでに始まっており、全面可視化の実現をはじめ、誤判防止のための司法改革を早急にすすめなければならない。えん罪防止と人権擁護のための司法制度をどう確立するかについては、政治家の姿勢も問われている。参議院で可決された可視化法案の衆議院での審議・早期成立をめざして、世論をもりあげよう。このことは、狭山事件をはじめ、多くのえん罪事件で無実をかちとり、国賠裁判で勝利をかちとる道につながって
いる重要な闘いである。
  「足利事件の教訓を生かせ!」「誤判原因の徹底糾明を」「えん罪防止のための司法民主化」をスローガンに、えん罪との闘いと連帯を広げながら、狭山第3次再審の闘いを各地ですすめよう。3者協議をバネに、狭山事件の証拠開示、事実調べを求める世論をさらに大きくしていこう。

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