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部落問題資料室
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「人権侵害救済法」の制定と
「人権の法制度」確立への本格的な礎を築こう
「解放新聞」(2009.10.12-2439)

 2009年9月16日に特別国会がひらかれ、民社国の3党連立による鳩山新政権が誕生した。脱官僚支配・政治主導による国民目線からの政策展開をおこなう、と明言した歴史的な新政権の誕生を、私たちは心から歓迎する。同時に、マニフェストに掲げた政権公約を着実に実現していくことを期待する。
 鳩山新政権のもとでひらかれる秋の臨時国会は、10月の下旬開会が有力視されている。ここでは、政治の仕組みを大きく転換させる「国家戦略局」の設置法の制定や、麻生政権時代の補正予算の見直し、来年度予算の枠組みなどが主要なテーマとなる。いわば、鳩山新政権の体制固めの国会運営となり、具体的な政策論争は、来年1月からの通常国会となる見通しである。
 したがって、私たちは、長年求めてきた「人権侵害救済法」の国会提案を、いよいよ来年の通常国会で実現し、早期制定をはかるとりくみをすすめていく。そのために、今秋の臨時国会期間中に、「人権侵害救済法」の早期制定に向けた周到な準備をおこなわなければならない。

 政権与党となった民主党は、マニフェストに、「取り調べの可視化で冤罪を防止する」「人権侵害救済機関を創設し、人権条約選択議定書を批准する」ことを.掲げている。社民党も「裁判員制度を見直します。取り調べの全過程を可視化します」「政府から独立した人権救済機関を設ける人権侵害救済法を制定します」としている。
 私たちととり交わした推薦候補との政策協定でも、「①憲法や「同対審答申」などの基本精神を踏まえた部落問題の根本的、かつ速やかな解決に向けた国政活動の展開②国内人権機関の創設を含む「人権侵害救済に関する法律」の早期制定③「人権教育及び人権啓発推進に関する法律」の積極的な具体化と推進④人権行政推進のための体制と法整備の推進⑤狭山事件などの冤罪根絶と「証拠開示の公正なルール化」などの司法の民主化⑥差別撤廃・人権確立に向けた国際潮流への合流」という合意をかちとっている。
 私たちは、これらのマニフェストや政策協定の具体化をめざすために、臨時国会が開会される前のできるだけ早い時期に、新政権与党との政策協議の場を設けて内容を煮詰めていくことにしている。
 同時に、「人権侵害救済法」の早期制定への条件と機運を一気につくりあげていくために院外闘争を果敢に実施していかなければならない。臨時国会の日程が決まりしだい、それに合わせて10月下旬から11月上旬くらいに「人権侵害救済法早期制定要求中央集会」を3000人規模で実施し、80万人を大きく突破している国会請願署名の提出や政党・国会議員への要請行動、さらには政府各省交渉などを展開する予定である。

 私たちは、鳩山新政権にたいして、これまでの政権がないがしろにしてきた人権・平和・環境にかかわる政策を、本格的に実現していくことを強く求めていかなければならない。
 私たちも深くかかわって、多くの人たちと協働で作成した人権市民会議の「日本における人権の法制度に関する提言」や、反差別国際運動(IMADR)を中心にすすめている国際人権諸条約の具体化と積極的活用をすすめ、鳩山新政権の政策へ反映させていくことが重要である。そのための当面の重要課題として、私たちは、国内人権機関(人権委員会)の創出を柱とする「人権侵害救済法」の早期制定、人権省(庁)創設に向けた内閣府人権局(仮称)の設置、立法府で人権問題を議論する常設機関の設置、冤罪防止のための取り調べ可視化法案の制定や、証拠開示のルール策定、国連での「職業と世系にもとづく差別」の公式文書化などの実現のために、全力を傾けるものである。
 私たちは、反差別・人権確立を求める広範な人たちとの協働の力によって、これらのとりくみをおしすすめ、日本での「人権の法制度」確立への揺るぎない礎を築いていきたい。
 それは、憲法第14条の「差別されない」という消極的な差別禁止の憲法的価値観を、社会的価値観・規範として具体化・実質化していくために、法制度として定着させていこうという歴史的な段階の闘いである。これは、戦後64年の長期間の「国民の不断の努力」によって到達している段階ではあるが、差別禁止という社会的価値観・規範を定着させる闘いは、政権の枠組みが変わったから容易に実現できるというような生半可なものではなく、熾烈な闘いになることを覚悟して臨まなければならないことを、肝に銘じておく必要がある。

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