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東京高裁で9月10日、狭山事件の第3次再審請求の3者協議がおこなわれた。弁護側からは中山主任弁護人、中北事務局長をはじめ13人の弁護人が出席し、東京高裁の門野裁判長、東京高検の担当検事らと協議がおこなわれた。
3者協議は、裁判所と弁護団、検察官の3者が、再審請求の審理の進行などについて、裁判所が中心となって、双方の意見を聞きながら協議するものである。狭山事件で具体的な3者協議がおこなわれたのははじめてである。今回の3者協議ではおもに証拠開示について協議された。狭山弁護団は、第3次再審請求で、東京高検に証拠開示請求をおこなったが証拠開示には応じられなかった。弁護団は東京高裁にたいして2008年5月と2009年8月に証拠開示勧告申立をおこなった。
今回の3者協議では、弁護側の証拠開示請求にたいする検察官の意見(証拠があるかないか、開示の必要性などについて)を10月末までに回答すること、それをふまえて、年内にもう一度、3者協議をもつということが確認された。証拠開示の実現に向けて、この12
月、大きなヤマ場をむかえる。
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狭山事件では、1988年に「(自白で死体を一時隠したとされる)芋穴のルミノール反応検査報告書」が開示されて以来、ほとんど証拠開示はおこなわれていない。第2次再審請求でも、検察庁は、証拠開示の必要性がないとして開示に応じてこなかった。
しかし、再審制度は、「無辜の救済」、誤った裁判を是正し無実の人を救済するためにあるとされる。公正・公平な再審請求の審理を保障するために、事実調べや証拠開示は必要不可欠である。
実際に、免田事件、財田川事件、松山事件、徳島事件など、これまでの多くの再審事件で、裁判に出されなかった検察官手持ち証拠の開示によって、真実が明らかになり、再審がひらかれている。昨年、東京高裁第4刑事部が再審開始を決定した布川事件でも、3者協議で裁判所が証拠開示を勧告し、開示された証拠から無実を示す新証拠が発見され、再審開始に結びついた。
そもそも、再審請求では、新証拠の発見が再審を開始する要件とされている。新証拠になる可能性のある証拠を検察官が隠すなどということが正義に反し、再審制度の理念と矛盾していることは明らかであろう。
経験的にも理論的にも再審請求での証拠開示が必要である。東京高裁が開示勧告をおこなうよう強く求めたい。
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狭山弁護団は、第3次再審請求で、殺害現場の隣で事件当日農作業をおこなっていた0さんの「悲鳴はなかった」という証言などの新証拠を提出し、自白にもとづく犯行現場の認定が誤りであることを主張している。さらに、犯行現場にルミノール反応はなかったという元埼玉県警鑑識課貝の証言、微量の血液を2か月雨ざらしで放置してもルミノール反応検査で検出できることを実験で確認した元鑑識課貝の報告書を提出している。
「犯行現場」がウソであることを示す数多くの疑問、証拠がある。
弁護団は、犯行現場とされる雑木林のルミノール反応検査報告書の開示を求めているが、これは、以上のような新証拠と総合して見れば、再審開始の理由になるからである。
検察官は従来から、雑木林のルミノール反応検査報告書はないと回答してきた。犯行現場を特定する客観的裏付けが何もないことを意味する。むしろ犯行現場に多くの疑問があることは、殺害の方法、死体を運び隠したという一連の自白のストーリー全体が疑わしいということに結びつく重要な問題である。
犯行現場の疑問が深まっていることをふまえて、殺害方法や逆さづりなどの自白のおかしさを指摘する法医学者の鑑定人尋問など、真実解明のための事実調べがおこなわれるべきである。
布川事件では、東京高裁で法医学者などの鑑定人尋問がおこなわれ、再審が開始された。足利事件で、東京高裁がDNA鑑定の再鑑定をおこなうことを決め、その結果、管家さんの無実が判明したことを忘れてはならない。
再審請求でも証拠開示と新証拠の事実調べは不可欠である。東京高裁が鑑定人尋問などの事実調べをおこなうことを強く求めたい。
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10月末に東京高検は証拠開示に関する意見書を東京高裁に提出した。東京高検は、弁護側の証拠開示請求に応じる姿勢をまったく見せていない。弁護団は、反論の意見書を東京高裁に提出し、次回の3者協議で、東京高裁に強く、証拠開示の勧告を求める。
まだ開示勧告や事実調べの決定が出されたわけではない。布川事件や足利事件のように、狭山事件でも、今後の3者協議で、証拠開示や事実調べがおこなわれるよう、いまこそ大きな世論をまきおこす闘いの強化が必要である。
証拠開示や事実調べは、ほかのえん罪事件の裁判でも共通の課題である。可視化法とともに、再審請求での証拠開示と事実調べの制度化を求めていこう。
次回の3者協議で、東京高裁が開示勧告をおこなうよう訴えて、11月27日に、東京・日比谷公園で、証拠開示と事実調べを求めるための緊急集会を狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会の主催でおこなう。
いま石川一雄さん自身も早智子さんとともに、毎週、東京高裁前に立って、証拠開示と事実調べをおこなってほしいと訴えている。
「足利、氷見の教訓を活かし証拠開示・事実調べを!」「検察官の証拠隠しは許されない!」「東京高裁は開示勧告を!」の声を大きくしよう。要請ハガキや署名、要請文を集め、東京高裁に届けよう。