「解放新聞」(2009.12.21-2449)
事件が発覚したのは、今年の9月中旬。部落解放同盟山口県連へ、当事者の男性・Ⅰさんから結婚差別の相談があった。Ⅰさんは県内の被差別部落の出身で、現在は部落外に住んでいる。
交際相手の女性は、以前から父親に、「在日外国人(韓国・朝鮮人)や部落の人、宗教関係の人とは、交際、結婚してはいけない」といわれて育てられた。
2人の交際がすすむなかで、男性が部落出身であることがわかり、交際に反対された。1度は「別れたふり」をして交際を続けたがみつかり、女性にたいして親族会議がひらかれた。
親族会議では、男性との交際を反対され、「部落のなにがいけないの」という女性に、父親は、「なにがいけないのじゃないだろう」に続いて先の発言をおこない、それでも「別れない」という女性の頭を何回も本気で殴り続けた。
さらに父親は、「もし、お前が付きあいを続けるなら、妹と姪の前で土下座して、「あなたたちの人生をめちゃくちゃにしてしまうけど、それでもいいから彼とは付きあいます」といえ」と怒鳴り、「別れない」という女性をさらに殴り続けた。女性は最後まで抵抗したが、身の危険を感じ、「もう彼とは付きあわない」といってしまい、男性に電話をさせられた。
加えてその2日後、両親と親戚が男性の家を訪れ、男性に「娘と別れてほしい」と依頼。男性が「ぼくになにか問題があるんですか」というと、父親はあくまで「うちの家庭の問題であり、あなたに問題があるわけではない」といい、1時間近く、玄関前で別れるよういわれた。
この男性から相談をうけた部落解放同盟が中心となり、この間、行政や行政団体とともに、両親や関係者と話しあいをおこない、問題の解決をめざしてきた。
10月3日の1回目の話しあいでは、父親は、部落差別にかかわる言動については否認。10月11日の2回目の話しあいでは、自分の言動を認めて謝罪した。
話しあいのなかで父親は、部落問題との出会い、部落にたいする偏見などをみつめ直し、学習を深めていくことを確認した。県連は、いま、2人の交際をみ守っている状況だ。
根深い偏見と差別意識
「在日、部落、宗教の人とは付きあうな」と
【山口支局】山口県内の開業医が起こした結婚差別事件で県連は、今回の事件の差別性と問題点で、つぎの10点をあげ、また、今後の課題・方向性も示している。
差別性と問題点
①医者という立場の人間が起こした悪質な差別
②2人を別れさせるために自分の娘に暴行を加えた
③親戚らも同様に結婚差別に加担し、だれも「おかしい」と思わなかった
④娘にたいして、1人の人格をもった人間として認めず、親の所有物的な認識をしていること。反発する娘に暴力的支配・抑圧の親子関係(DV関係)
⑤父親が娘の交際相手を調べるため男性の車を尾行し、家と名前を調べている(娘には「興信所を使って身元調査をした」と報告)
⑥部落以外に、在日韓国・朝鮮人や宗教関係者にたいしても偏見をもっている
⑦差別をしておきながら、男性の自宅まで行き本人に「別かれて欲しい」と依頼していること
⑧両親は、反発する娘さんを「精神的に病気である」として、精神病院に入れようとしたこと
⑨「娘が解放同盟に監禁されている」という認識で動いていた両親と警察の対応。運動団体にたいする予断と偏見
⑩「興信所を使って調べた」という認識。部落出身かどうかの身元調査が可能という認識をもっていること
以上、結婚差別で明らかになった問題点をあげた。
今後の方向性
①医療従事者や警察など「特定職業従事者」にたいする人権教育の推進
②両親や親戚などへの、継続的な指導と啓発が必要
③親子関係の改善、被害者にたいする心の傷(トラウマ)にたいするケア
④差別事件を起こした加害者への事実確認、調査権限の課題
⑤問われる人権相談のあり方
⑥学校人権教育、地域啓発での部落問題学習の充実
⑦民間企業での人権教育の充実
などの課題を示した。
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