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部落問題資料室
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「人権侵害救済法」を今国会で成立させるために全力をあげよう!

「解放新聞」(2010.04.12-2465)

 3月25日に「人権侵害救済法」の早期制定を求めてひらいた「部落解放・人権政策確立要求中央集会」では、現在開会されている第174通常国会で法案の提出・成立を実現するために全力をあげることを確認した。来賓あいさつに立った民主党、社民党、国民新党、自民党、公明党、新党大地の各党代表も「法」制定の必要性と早期制定への決意を語った。
  これまでにも、2月3日の参議院本会議での松岡とおる議員(中央書記長)の代表質問にたいして、鳩山総理は「できる限り早期に、人権救済機関の創設等を目的とする法案を国会に提出できるように努力をお約束いたします」と答弁し、法案にかかわっての鳩山政権の基本姿勢を鮮明にしている。
  しかし、3月12日の段階でも、千葉法務大臣は所信表明のなかで、「より実効性のある救済をするためには、政府から独立性を有する人権救済機関の創設が必要です。そこで、大臣政務官が中心となり、その組織のあり方などについて検討を続けているところ」だとのべ、法案は検討段階であり国会提出の段階にいたっていないことを明らかにしている。
  私たちは、3月12日に閣議決定された提出法案のなかに「人権侵害救済法」が含まれているのではないかという期待を抱いていた。しかし、現時点でも検討法案のあつかいに留まっている。冒頭にのべたように、与野党ともに「早期の法制定」を唱えているにもかかわらず、なぜいまだに検討法案なのか。強い苛立ちを禁じ得ない。

 たしかに、「人権侵害救済法案」の中心的課題である「人権委員会」(国内人権機関)の創設は、日本の人権政策確立への礎ともなるべき法制度であるから慎重に検討されなければならない。人権委員会の独立性や実効性、その権限や体制、委員会構成や人的スタッフの問題などの課題は重要である。
  しかし、現在の政権与党は、それらのことについて十分すぎるほどの検討時間を有していたし、現実に各党独自の「法案」や「要綱」をすでに議論したうえで作成しているはずである。
  そして、現政権で法務省政務三役を中心に閣法策定に向け検討しているという。そこでは何が問題になっているのか。いつまで検討するのか。政府・与党は、責任をもってこれらのことを明らかにすべき段階にきている。政策決定プロセスを市民に分かるように明確にすべきである。
  もちろん、「人権侵害救済法案」にたいして、根強い反対意見が与野党の一部に存在していることを、私たちは知っている。2月3日の松岡議員の代表質問にたいして鳩山総理が「法案の早期提出」への決意を明確にしたことを伝える翌日の新聞各紙のなかで、産経新聞が「「日本解体法」そろい踏み?」との見出しで、反対勢力の主張を詳しく報じている。人権侵害救済法案、選択制夫婦別姓法案、永住外国人地方参政権付与法案が、「日本を日本でなくする国家解体3法案」だというのである。
  私たちは、これらの論調が、2005年の自民党内部でわき起こってきた反対論の延長であり、偏狭なナショナリズムと家父長的家思想にもとづくものであり、人権思想とは相容れないものであることを、これまで何度も指摘してきた。
  しかも、このような論調にもとづいて、各地の自治体議会で「人権侵害救済法制定に反対する意見書」の採択の策動が続けられていることに警戒しなければならない。反対論者の人たちへのていねいな反論と「法」制定の必要性について立法事実に立脚した広範な社会的世論を形成していくことが改めて急務である。

 日本国内でのこのような状況のもとで、本年2月からジュネーブでひらかれていた人種差別撤廃委員会は、3月16日に「日本審査の総括所見」で、日本の人権状況について的確に把握した上で、つぎのように日本政府に勧告してきている。
  「委員会は締約国(日本)に人権擁護に関する法案を起草して採択し、法的な苦情メカニズムを迅速に設置することを奨励する。また、委員会は、広範な人権の責務および現代的形態の差別に取り組む具体的な責務をもち、財政的に裏付けされ適切に人員を備えた独立した人権機関をパリ原則にしたがって設置するよう促す」(第2464号10~11ページに掲載)。
  人種差別撤廃委員会からは、これで2回目の「国内人権機関の早期設置」勧告であるが、1998年の規約人権委員会からの最初の勧告があって以降、各種の人権条約委員会から度重ねて勧告を受け続けているのである。国連人権理事国としても恥ずかしい事態であるし、何よりも差別・人権侵害で苦しんでいる多くの人たちを泣き寝入りさせたままの放置状態であることは許されてはならない。

 鳩山総理は、「政治には弱い立場の人びと、少数の人びとの視点が尊重されなければならない」ことを強調し、それが政治の原点であり、「いのちを守る」ことが政権の基本姿勢であることをうたいあげてきた。そうであるとするならば、あらゆる政策で揺るぎない差別撤廃・人権政策確立への視点が、その根底に据えられて立案・実施されなければならない。
  その意味で、「人権侵害救済法」の制定は、鳩山政権の基本姿勢を具体化するための試金石的な政策として位置づけられるべきである。鳩山政権は、政治責任・政府責任・国際責務を誠実に履行していくうえでも、必ずや今国会に「法案」を提出し成立を図るべきである。
  その実現のために、私たちはつぎのとりくみに全力をあげていこう。第1に、政府・与党にたいして「今国会での「法」制定の実現を求める要請行動」を各界・各地域ごとの独自的なとりくみで強化すること。第2に、立法事実(差別・人権侵害実態)を全面に押しだし、「法」反対論を凌駕する地域からの早期制定のとりくみを盛りあげること。第3に、日弁連や人権市民会議、国際人権団体などと連携して社会的世論を形成するために広範な共同行動を追求していくこと。
  以上のようなとりくみを集中的におこない、第174通常国会(6月16日閉会予定)での「人権侵害救済法」の提出・制定を実現させよう。

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