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世論を広げ、狭山事件の再審開始をかちとろう

「解放新聞」(2010.04.19-2466)

 2009年12月16日にひらかれた狭山事件第3次再審請求の3者協議で、東京高裁の門野博・裁判長が検察官に証拠開示の勧告をおこなってから3か月以上がたつが、東京高検からは、いまだに証拠開示はおこなわれていない。
 開示勧告された証拠は、殺害現場とされる雑木林の血痕検査にかかわる捜査書類一切、犯行現場の隣の畑で犯行時間帯に農作業をおこなっていた0さんの証言にかかわる捜査種類、石川さんの筆跡に関して収集された資料、取り調べメモなど石川さんの取り調べ状況にかかわる資料など、狭山事件の争点にかかわる重要なものである。東京高裁も再審請求の審理に必要と考えたからこそ開示勧告をしたのである。
 また、検察官が雑木林の血痕検査報告書について存在しないとしていることについては、関係する捜査書類一切を開示勧告するとともに、存在しないとするならばきちんとした説明をするよう求めている。被害者の死体の後頭部には傷があり、殺害現場の裏付けのために、雑木林で当然、血痕検査(ルミノール反応検査)がおこなわれたと考えられる。検察官がいうように、「血痕検査報告書はない」ではすまされない。殺害現場という核心の点を裏付ける客観的な証拠が何もなく、むしろ、自白と矛盾する事実があるということになる。まさに「架空の犯行現場」ということになり、自白全体を見直さねばならないことになろう。
 東京高検は、東京高裁の開示勧告に応じて、すみやかに証拠開示をおこなうべきである。
 要請ハガキ運動などを各地で展開し、「開示勧告をふまえて東京高検はすみやかに証拠開示をおこなえ」という声を大きくし、何としても、開示勧告が出された重要な証拠の開示を実現しよう。

 開示勧告が出された証拠によって、石川さんの自白が不自然・不合理であり、何ら客観的な裏付けのない虚偽自白であることが、いっそう明らかになる。東京高裁は証拠開示をふまえて事実調べをおこなうべきである。弁護団は、犯行現場、殺害方法、筆跡の違いなどについて、多くの新証拠を提出し、鑑定人尋問などの事実調べを強く求めている。
 3月26日には、足利事件で再審無罪判決が出された。判決は、警察のおこなった当時のDNA鑑定に証拠価値はなく、管家さんの自白の信用性は皆無とし、虚偽の自白が引き出されたことを認めた。
 東京高裁がDNA鑑定のやり直しという事実調べをおこなったことによって、検察の鑑定の誤りと虚偽自白が明らかになり、管家さんの冤罪が判明したことを忘れてはならない。
 また、足利事件では3者協議で裁判所も開示勧告するなかで、検事が管家さんを取り調べた録音テープが証拠開示され、証拠調べがされた。その結果、再審無罪判決は公判中に検事が管家さんを取り調べたことは違法としている。このような重要な証拠を17年以上も検察官が隠していたことこそ強く批判されなければならない。検察官の証拠隠しが誤った裁判を生むことを示している。
 足利事件を教訓にするならば、東京高検は、狭山事件で、すみやかに証拠開示すべきであり、東京高裁は事実調べをおこなう必要があるはずだ。
 4月6日、最高裁が名張事件で名古屋高裁の棄却決定を取り消し、毒物についての鑑定をおこなうよう高裁に差し戻す決定をおこなった。「無実の人を誤判から救済する」という再審の理念にしたがって、1日も早く、名張事件の再審開始をおこなうべきである。

 証拠開示、事実調べ、再審を大きな流れにしていく必要がある。わたしたちも、氷見事件、志布志事件、足利事件や布川事件など、この間の冤罪事件の教訓を学び、足利、布川につづいて、狭山事件の証拠開示、事実調べ、再審開始を実現しよう。全面可視化、証拠開示・事実調べの保障の法制化を求めていこう。
 5月なかばにひらかれる次回の3者協議に向けて、5月12日には、東京での市民集会も開催される。各地で、「開示勧告に応じて東京高検はすみやかに証拠開示をおこなえ」「足利事件の教訓をふまえて東京高裁は事実調べをおこなえ」という声を大きくしていこう。東京高検、東京高裁に対する要請ハガキにとりくもう。世論をひろげて、狭山事件の再審・無罪、石川さんの冤罪を晴らす最後の勝利まで闘おう。
要請ハガ辛を送ろう
※この文案を参考にして要請ハガキを送ろう

 3者協議における証拠開示の協議で、殺害現場にまったく裏付けがなかったことが浮かびあがり、自白の疑問が深まっています。殺害現場にかかわる血痕検査などの証拠開示を実現し、当時の捜査について徹底した真相解明をされるよう求めます。弁護団提出の新証拠について1日も早く事実調べをおこない狭山事件の再審を開始されるよう求めます。
 また、昨年の開示勧告にひきつづき、弁護団が求める証拠開示について勧告されるよう求めます。

東京高裁宛先
〒100-8933 千代田区霞が関1-1-4
東京高等裁判所第4刑事部
裁判長 岡田雄一 様

 狭山事件の第3次再審請求で4か月以上たったいまもいまだに証拠開示がおこなわれていません。証拠隠しは正義に反します。
 東京高検が、高裁の開示勧告にしたがって、すみやかにこれらの証拠を弁護側に開示するよう強く求めます。

東京高検宛先
〒100-8904 千代田区霞が関1-1-1
東京高等検察庁 御中


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