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第58回全国大会(01年)で採択した「差別糾弾闘争強化基本方針」は、今後の差別糾弾闘争のあり方として、多様で柔軟な闘争形態を駆使して、差別の原因を社会の構造的なシステムにあることを明らかにするとともに、差別事件を生み出す原因を克服し、人権を軸とした新たな社会システムの創造につなげていくことをめざしていくとしている。つまり、部落差別事件の背景や課題を社会的課題に高め、それらを克服していくための差別禁止法などの立法措置や制度設計に反映させることで、社会システムを作り変え、人権の法制度を確立していく闘いでもあることを、差別糾弾闘争の基本方向としているのである。
この間、結婚相談所の申込みのさいに、戸籍謄本を請求したり、行政書士などが職務上請求用紙を使用して戸籍謄本不正請求する事件が明らかになり、請求用紙の書式変更や自治体での不正な第三者請求にたいする本人通知制度の導入など、再発防止策がすすめられている。また、企業での採用面接時に、家族状況を質問するなどの違反事例が数多く報告されている。こうした「身元調査」は、明らかに国際人権条約が厳しく禁止する「出生による差別」である。しかも、現在の戸籍制度は「出生による差別」を合法化してきた。個個人の身元が何世代にもわたって公的に確認できること自体、基本的人権の侵害である。さまざまな差別や人権侵害を引き起こしている背景には、こうした法律や制度の問題がある。
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宅建業者などが行政に、同和地区かどうか問い合わせたり、部落にある物件を取り扱わないなどの差別事件も多発している。不動産、宅建関係業界では、部落問題認識を深める研修もすすめられているが、いまだにマンション建設・販売での部落を忌避する傾向が顕著である。
さらに部落にある不動産の取引では、価格が周辺に比して安くなる事実がある。国土交通省の不動産鑑定評価基準は、「公平・公正」な地価決定基準と考えられており、地価公示価格や路線価では標準的な宅地を選択して土地評価をおこなうので、評価の低い部落内の不動産も、周辺と「差別なく」評価されることになる。
しかし、実際の取引に関しては、市場の動向や心理的減価を考慮するために、類似地域の取引事例を比較考量する取引事例比較法によって下方修正される。こうして部落の土地評価に関して二重価格が存在することになる。鑑定評価基準では、「価格形成要因は、一般的要因、地域要因、個別的要因からなる。地域の特性は、不動産価格形成に全般的に影響を与える要因である。地域分析にあたっては、平素から、不動産業者、建設業者、金融機関などからの聴聞等による取引などの情報を収集しておく」とされている。
この地域分析の過程で、部落に関する情報収集は重要な部分を占めることになる。マンション開発業者が調査会社を使って地域要因を調査し、「下位地域」などと「地域の特性」を報告したのは、鑑定評価基準に準拠しているのである。
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これまで環境改善事業や同和教育・人権教育の推進によって、部落の環境は改善され、市民の人権意識が.高まるにつれて、部落であることが「地域の特性」とはならないはずである。しかし、現実には依然として部落はマイナスに評価され、忌避されており、「需要と供給の原則」で取引価格に反映している。
土地差別調査事件では、こうした部落の土地に関して二重価格を生み出す社会的な構造、市民意識も問題にしながら、とりくみをすすめていかなければならない。また、今日的には、インターネットなどで差別扇動、反人権主義や民族排外主義の主張を繰り返す、サイバースペースでの差別書き込みへの対応も喫緊の課題としてある。
このように、今日の差別事件の背景には、長引く不況や不安定な雇用状況など、社会的要因と深く結びついたものが多い。そうした社会的な背景、原因を正確に分析し、差別糾弾闘争を通じて、その差別性、問題性と、差別の原因を克服する課題を明らかにすることが重要である。
今日の深刻化する格差社会のなかで、差別を媒介にしない、豊かな人間関係の構築をめざし、部落解放運動への共感、拡がり、結びつきを求めた差別糾弾闘争をすすめよう。
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