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今年3月にひらいた第67回全国大会で「綱領改正案」が提案された。1年間の論議期間をへて、来年3月開催予定の第68回全国大会で採決することが大会決定されており、それに向けたとりくみが着ちゃくとすすめられている。
部落解放同盟としては、1955年の部落解放全国委員会から部落解放同盟への改称時に綱領採択をおこなってから、60年綱領、84年綱領、97年綱領と続き、今回が5回目の綱領改正となる。
中央理論委員会を中心にして、学者・研究者の意見も聞きながら策定していった「綱領改正案」は、先の全国大会に提案されて以降、組織外からの熱心な意見書や各都府県連からの建設的な意見書を検討しながら、現在「第2次修正案」の段階まで作業をすすめている。
綱領改正の目的と意義を全同盟員がしっかりと認識して、組織外からの意見も謙虚に傾聴しながら、積極的に各地からの議論を積み上げ、充実した綱領改正をかちとっていきたいとの意を強くしているところである。
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今回の綱領改正に着手した背景には、つぎのような時代認識が存在している。第1に、「特措法」時代33年間のもとで部落差別の実態が大きく変化してきていることである。第2に、2002年3月の「特措法」期限切れ後に同和行政の後退や人権行政の混迷という状況が生じていることである。第3に、2006年の一連の不祥事という部落解放運動の深刻な事態が惹起してきたことである。第4に、21世紀初頭前後からの新自由主義路線の台頭で急速に進行した格差拡大と差別構造の全体化という社会状況のもとで部落差別撤廃のとりくみの成果が損なわれていく逆流現象が起きていることである。
このような時代背景を踏まえながら、困難な状況を乗り越え今後の新たな部落解放運動の基本方向を打ち出そうというのが、今回の綱領改正の目的と意義である。
当然のことながら、綱領改正の作業は、2年後の水平社創立90周年はいうにおよばず、12年後の2022年に100周年という節目を迎える部落解放運動のあり方を見すえつつ、大胆かつ真剣に議論していかなければならない段階である。
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今回の綱領改正では、これまでの多くの部落差別に関わる議論にたいする論点整理をおこなったうえで、不毛な論争は排して現実の部落差別を克服していく具体的な政策を導き出す論理構成を主眼にして改正作業をおこなっており、その主たる改正要点は、つぎのようなものである。
第1に、「部落民」、「被差別部落」に関する概念を運動的に定義し、曖昧模糊としている組織論や運動論に明確な筋道をつけるということである。
第2に、部落差別問題が明治期以降の近代日本社会で再編された社会問題であり、現行憲法の基本精神が具体化されれば現体制のもとでも解決可能であることを開示していることである。
第3に、「3つの命題」を継承した「差別の社会的機能」論に立脚し、差別の特徴的なあらわれ方である「排除・忌避・孤立」に着目して、これを克服する方向性として「社会的連帯」をうちだしていることである。
第4に、社会的連帯を実現するにあたって、さまざまな差別の複合性や共通性を重視し、国内外の協働行動の必然性を強調していることである。
第5に、以上のような要点を踏まえて、部落が解放された状態、そのための社会的条件および具体化への基本目標を提示し、部落解放同盟がめざす方向性を明確にしていることである。
第6に、改めて部落解放同盟が全国水平社の歴史と伝統を正当に継承しており、自主解放の旗を高く掲げることを宣言していることである。
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今回の綱領改正にあたっては、「綱領」の性格上字数が制限されるために、別途「「部落解放同盟綱領」の解説書」をもって補完するようにしている。そこでは、部落差別実態の全体像を把握するための「5領域」や「5形態」の問題、明治期以降の差別撤廃のとりくみにかかわる歴史的経過と評価の問題、部落差別を生みだし支える社会的背景としての社会意識、社会構造、人間存在の問題などについても論及しているところであり、より豊かな解放理論として「解説書」を仕上げていくことも重要である。
以上のような綱領改正の目的と意義、改正要点を踏まえながら、議論のための議論ではなく、現実的な部落解放への責任ある建設的な論議を深め、来年の第68回全国大会で見事に新綱領を採択し、揺るぎない部落解放運動への大道を踏みだそう。
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