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部落問題資料室
NEWS & 主張
新証拠・鑑定を提出
脅迫状の筆跡との違いは明らか
石川さんの「5月23日付け上申書」など鑑定

「解放新聞」(2010.12.27-2500)

 狭山事件再審弁護団(中山武敏・主任弁護人)は、12月14日、筆跡に関する新証拠・鑑定書を東京高裁に提出した。新証拠は、①魚住第2鑑定②遠藤第2鑑定。いずれも検察が隠し持ってきた「1963年5月23日付け石川さんの上申書」「1963年7月9日付の領収書」(今年5月13日に東京高検が証拠開示したもの)を鑑定資料として、脅迫状の筆跡との対比(魚住第2鑑定)、脅迫状との筆跡と日本語能力の対比(遠藤第2鑑定)の観点から石川さんの無実を明らかにしたもの。

狭山弁護団が東京高裁に
隠し続けられてきた5月13日開示証拠を鑑定し脅迫状と対比 この上申書と領収書は、石川さんが逮捕された日に書かされたもので、これまで脅迫状が書かれたとされる4月28日に近接した時期に作成された筆跡鑑定の資料は5月21日付けの石川さんの上申書しかなかった。今回の開示資料は、脅迫状との対比に適切なもの。ところが、捜査当局は開示された上申書と領収書を筆跡鑑定のための資料とせず、しかも弁護人にも隠し続けたままの状態にしてきた。それだけに今回の筆跡2鑑定は、石川さんの無実をあらためて示すだけでなく、なぜ捜査当局や検察が隠し続けてきたのかという問題の真相を暴露することにもつながっている。
  魚住第2鑑定では、① 「な」「も」「た」「や」「わ・れ・ぬ」の各文字を通じて、▽脅迫状の筆跡は運筆が早く行書的。石川さんの筆跡は遅く楷書的▽脅迫状は筆跡に抑場があり収筆を放射状に放つ。石川さんは筆圧が強く一定、収筆は常に押さえて止めて筆圧をゆるめない、など筆跡に通底する原則をまったく異にしている②石川さんは▽「時」を誤って「晴」状に書いている▽ひらがなの「え」は書けずカタカナで「エ」と書いている▽「し」については筆跡が異なり、「し」を「知」と書く用字認識がない▽「や」をひらがなで書くかカタカナで書くかの相違の存在をあげ、上申書と脅迫状は同一人物が書いたものではないことを明らかにしている。
  遠藤第2鑑定では、①漢字使用率が脅迫状の27.3%にたいし上申書では住所・職業などを除いた部分では7%にすぎない。たとえば「金二十万円」との脅迫状にたいし「かね」「まいん」としている②誤字と誤記という点からは、▽住所の「入間川」の「間」という文字すら正確に書けていない▽「書」「時」も正確に書けていない▽住所番地や目付けの表記でも「二九08」「五月203にち」「20まいん」「10まいん」と書くなど表記の混乱がある▽「なかたいさく」についても正しく表記されていない▽ひらがなの誤記として「濁音の脱落」「濁音のつけすぎ」「「え」音の誤記」「濁音の脱落」「「お」と「を」の混同」「助詞「は」の誤記」「撥音の誤記」「拗音の誤記」「カタカナとの混同」という、日本語学習の初期段階のレベルにとどまっていた③文章作成上の意識の異同、の諸点から脅迫状の筆者は石川さんでないことを明らかにしている。
  また、この間、裁判所が展開してきた「書字条件相違論」についても、日航機墜落事故のさいに犠牲者が残した手帳のメモなどから、促音、濁音、助詞、漢字の使用状況など基本的な表記が特段に変化するものではないことも明らかにした。
  弁護団はこの日、2鑑定の補充書、証拠開示に関する意見書も同時に提出した。


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