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真相究明求め「土地差別調査事件」糾弾闘争を

「解放新聞」(2010.12.27-2500)

 生活の基本的な要件ともいえる衣食住の〝住″でもあるマンション建設販売で、人権を侵害する事件が発覚した。いわゆる〝土地差別調査事件″である。被差別部落や在日コリアンの集住する地域でのマンション建設を敬遠するため、土地購入の段階からマーケティングリサーチ会社(以下、調査会社)が調査し、広告会社に報告書として提出され、それを受け取った広告会社は、ディベロッパーに無条件でその報告書を手渡すという構図が長年にわたり漫然と続けられてきたのである。
  広告会社から依頼を受けた調査会社が、建設予定地周辺の地域評価や価格の動向などを調査するため、実際に現地に出向き、周辺の不動産業者や近隣住民などへの聞き取りで被差別部落の所在地を確認。周辺の聞き込みで得た情報により、校区評価や地域評価などをおこなっており、同和地区がマンション建設予定地の近隣にある場合、その被差別部落を名指しで「○○1丁目問題地域」や「○○は、地域的に問題を抱えるエリア」「○○地域は、地元で有名な問題あるエリアとして敬遠されている」などの表現を使い、低レベルに評価し、しかもその近くにマンションを建設するのであれば、価格帯についても低い設定でないと販売できないと受けとめられる内容の報告書を作成していた事実が発覚したのである。
  どこが被差別部落かを調べ、それが敬遠される地域であるとの表現を使い、さらには、問題ある地域として差別評価した報告書を作成する「調査会社」。それを理解したうえで対価を支払い購入するという「広告会社」。差別記載を放置したまま作成された報告書を何の抵抗もなく受け取り続けていた「ディベロッパー」という3者による差別の構図が、数10年にもおよんで延えんと続いていた実態が明らかとなったのである。

 中央本部は、現在のところ関与が明らかになった調査会社5社。差別表現が記載されながら漫然と受け取り続けた広告会社を13社。ディベロッパー15社にたいする確認作業を、鋭意すすめているところである。11月に入り、24日と30日に、12月には1日、3日、10日に糾弾会をひらき、ディベロッパー5社と広告会社4社にたいしておこなった。年内は引き続き、21日には調査会社4社にたいする糾弾会をとりくむ。
  この間、とりくんできた糾弾闘争で、明らかとなった点は、まず第1に、マンション建設に関する土地購入について、被差別部落を敬遠したり、避けたいとする忌避意識があったことをディベロッパー、広告会社、調査会社ともに認めた点にある。バブル期をへてマンション建設販売の売れ行きが鈍ってきた段階では、慎重さが必要となり、被差別部落内や周辺の土地購入を見送るケースが目立つようになったとの証言がそのことを裏付けている。
  第2に、広告会社、調査会社、ディベロッパーとの契約関係が、すべて口頭ですすめられているという点である。ディベロッパーから広告会社への依頼も口頭であり、依頼を受けた広告会社が、調査会社へ発注するさいも口頭である。つまり、長い慣例が調査会社をしてフリーハンドにさせ、何らの制約も受けない自由な調査を可能にしていた。フリーハンドな調査を依頼された調査会社は、当然、購入予定の物件の現地調査に出向いたり、近隣の不動産業者への聞き込みをおこなったりすることは予測される調査内容であり、近辺に被差別部落や在日コリアン集住地が存在すれば報告対象になることは容易に推測されるものである。
  調べた調査会社だけに全面的な責任があるのではなく、その背景には、契約書すら存在しないずさんな関係が、〝土地差別調査″を可能にするシステムをつくりあげていたことが、数回の糾弾会で明らかとなった。
  第3は、マンションの建設と販売というあくなき利潤追求は、人権を軽視し、差別的なシステムをより強固にさせるものとなり、被差別部落内や周辺は、マンションを建設しても「売れない」「売れにくい」ところと一方的に決めつけ、企業としての社会的責任(CSR)など、微塵(みじん)も存在しない利益追求の企業姿勢が生み出した差別事件であるという点である。
  市民の意識のなかに被差別部落を避けたいという忌避意識が存在する以上、被差別部落にマンションを建設しても完売しない、売れないという現実がある以上、 「その土地を買わない」「必要としない」という考え方は、利益を追求する企業としては当たり前の行為であり、「敬遠したことは差別ではない」という主張する企業が存在する。
  しかし、自社だけの利益を追求するあまり、差別表現を放置し、しかもそのことを原因として土地の購入を拒否したりするケースは、「担当者の単純ミス」や「人権感覚がなく気づかなかった」という程度の問題ではない。
  企業が一方的に利益を追求するため〝マンションが売れにくい場所″だと推測される同和地区内や周辺の土地購入を避け続ける姿勢は、「企業は社会の公器である」という理念の棚上げだといわざるを得ない。

 マンション建設に関わる調査会社・広告会社・ディベロッパーという差別の構図には〝市民と企業の共存共栄″という発想はまったくなく、高度経済成長での右一層上がりの経済によって、マンション建設と販売が急激に促進されていく過程で、一部地域を「住みたくないまち」「かかわりをもちたくないまち」として固定化させ、差別意識をより助長させている現実を関係者は猛省しなければならない。
  はじまったばかりの「土地差別調査事件」糾弾闘争である。さらに真相究明を求めていこう。

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