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部落問題資料室
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日本の農業を破滅させるTPP参加に反対し、元気な農業復活を

「解放新聞」(2011.02.28-2508)

 管首相は、1月24日の施政方針演説で「6月をメドに、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加の結論を出す」と表明し、首相を本部長にした「食と農林漁業再生推進本部」を立ち上げ、TPP参加に向けて走りはじめた。しかし、TPPへの参加は、結果的に日本の農畜産業を被減に追いやることは、明らかである。とりわけ小規模・零細な農家はいよいよ零落のどん底に追い込まれることになるだろう。JA(農協)は、この事能だ、「TPP参加阻止1000万人署名運動」をはじめた。全国の農畜産団体も集会やデモなど反対運動をおこない徹底抗戦を叫んでいる。零細農家が多い部落解放同盟としても黙っているわけにはいかない。
  TPPは貿易自由化の例外を原則として認めず、関税の100%即時撤廃か10年以内の実現を原則にしている。このTPPに日本が参加するならば、現在日本が関税をかけている5900品目のうちの大多数が無税になる。TPPには、アメリカやオーストラリアなど農産物輸出大国が参加することになっており、これらの国からコメや小麦、牛肉、乳製品などが怒涛のように日本に流れ込み、その結果、国内農産物は、輸入自由化という荒波に抗すべくもなく消え去るのは避けられない事態となるだろう。

 農水省の試算によるならコメの生産量は90%減少、牛肉は肉質3等級以下が全滅し、5等級の高級品が残るにすぎない。各地の食肉センターも閉鎖を余儀なくされることになるだろう。農業自給率は40%から14%に減少し、野菜農家とブランド米を生産する農家を除いて農業は壊滅的な打撃を受けることが予想されている。
  地球規模の食糧不足に警鐘が鳴らされているいま、本当にそれでいいのか。日本の農業就業人口はこの5年間で22%減少し、平均年齢は65歳以上になった。耕作放棄地は40万ヘクタールに拡大し(10年農林業センサス)、農業所得は90年の6兆円から08年は3兆円に半減した。デフレのもとで農産物価格の低迷が続くいっぽう、飼料や農薬などの生産経費が増え、農家のとり分が年年減っている。加えて宮崎での口てい疫発生や、鳥インフルエンザの蔓延など、食の安全が脅かされている。世界の飢餓人口は9億人で、昨夏の干ばつなどの異常気象によって、一部の国で農業生産が減少し、穀物輸出禁止(ロシア)などの動きも広がった。国際専門機関が人口の増加や異常気象などの要因によって21世紀の世界の食糧不足を警告しているが、日本の食糧自給率は40%まで低下し、先進国でも例のない食糧海外依存国になっている。
  それにもかかわらず歴代政権は、農政改革をいいながら、ますます輸入自由化と市場原理にゆだね、農家に大きな打撃を与えてきた。加えて今回のTPP参加である。管首相は「農業開国だ」といったが、農業はとっくの苗に開国され、輸入農産品に押しっぶされて農家は悲鳴をあげている。管首相には、悲痛な農家の叫びが聞こえないのか。何が今さら「開国」か。

 部落解放同盟は3月の全国大会で、小規模な部落の農家と農業を支援するとりくみや府県の枠をこえた農業の流通ネットワーク化を方針として打ち出した。この背景には、「安全で新鮮な地場農産物」を求める住民や消費者の増加、学校給食への地場農産物の供給や集落単位での営農組合の設立による消費者と直結した農産物直売所の建設など、農業に元気をとり戻す活動が存在している。つくるだけの農業から賢い農業への転換が模索されているのだ。
  全国大会には、部落の農家が元気をとり戻し、他の産業なみの所得を確保し、職業として選択できる農業経営を実現するために、部落の農家を積極的に支援しようという方針が提起されている。これらの活動を実現するためにも、農業を壊滅状態に追いやるTPP参加は阻止しなければならない。

【注】 環太平洋戦略的経済連携協定=2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国加盟で発効した経済連携協定。貿易関税撤廃をめざし、新たにオーストラリア、ペルー、アメリカ、ベトナム、マレーシアが加盟を表明している。


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