「解放新聞」(2011.05.02-2517)
恨みをもつ人物か
最初に差別落書が発見されたのが、一昨年12月3日。徳島市内にほど近いJR「石井町駅」構内のトイレだった。小便器の上部、大便所内の前面、側面、扉の内部など7か所。小便器の上部には、「エタ→○○○○はエッタの有名人」(○○部分には、石井町に実在する人物の名前が書かれている)と縦30センチ、横2メートル80センチにわたって、太さ13ミリの黒マジックで書かれている。7か所とも同じような内容で、「エッタ」という部分は、とくに太く、つまりしつこく、ていねいに塗りつぶして書かれてある。
「トイレの大便器にまたがりながら、下はぬれて気持ち悪いのに、よく書くな、と思った。よほどの執念か恨みか、何かをもつ人
物が犯人」というのが歯栗山さんの推理だ。
つぎに発見されたのが、一昨年12月4日、駅近くの児童公園のトイレで、3か所に書かれていた。これは、石井町駅と同じ日に書
かれた可能性もある。発見が4日だからだ。
この2件の差別落書事件については、運動体と行政側がただちに確認会をもち、石井町の人権教育のあり方、啓発のあり方などが
問われていることから、町は今後の人権のまちづくりの再構築をはかること、名指しで書かれた当人への対応、などを決めた。また、器物損壊で警察へ届けも出した。
こうした迅速なとりくみが功を奏したのか、その後、半年間は差別落書は発見されなかった。しかし、昨年6月1日、徳島市内の
団地の3本の電柱などに差別落書が書かれているのが発見された。高さ120~160センチ、横25~60センチに書かれており、「〇〇〇〇エタ 土成出身」が内容。○○の部分にはさきの2件と同じ人物名が書かれていた。7月5日には上坂町の六条大橋(ここが石井町との境界になっている)の東西の欄干に1か所ずつ書かれているのが発見された。中身は同様のものだった。
この時点で、差別落書は、石井町、徳島市、上坂町という広域にわたる、連続したものであり、名指しされた人物への物理的な攻
撃も予想されるもの、との判断にもとづく対策が練られた。だが、7月28日には同じ橋の石井町側の南詰め欄干で同様の差別落書が発見された。
人目につく電柱に
その後は、石井町内に場所を移し、書く場所も電柱となり、8月30日、9月15日、9月18日、10月4日と大書された差別落書が発見され続けた。とくに8月30日のものは、どうやって書いたのかというほど高い位置から下の方まで、太さ25ミリのマジックで書かれたもので、1文字が20センチもある。そして、11月20日にも石井町にあるNTTの電柱に、この間の電柱と同様に「(土成出身)エッタの有名人 〇〇〇〇」と大書されている差別落書が発見された。ちょうど、これが10回(10か所)目だった。
もちろん、こうしたなかで、運動体が手をこまねいていたわけではない。一連の差別落書にたいする、住民への啓発活動、名前を書かれた当人の両親との話し合い、県による土日深夜の巡回など、行政とも緊密に連携を取りながら、さまざまなとりくみを展開してきた。こうしたなかで、差別落書の実行者は包囲され、その後はなりをひそめたかのように思えた。
冬が過ぎ、春を迎えた今年3月12日。今度は石井町内で車が往来し、人目につく信号機と県の街灯に差別落書がおこなわれた。差別落書の内容は、この間の電柱に書かれたものと同様だった。
被害届を出し犯人の特定へ
県連の歯朶山書記長は、これで12回になり、全国的にもこれほどの差別落書は例を見ないものだと指摘し、▽これまで被害届など
を出してきているが、県として告訴を▽広域にわたる差別落書として、もう一度、当該の県、市町の協力・調整をおこなったうえで
のとりくみを▽当人の両親との話し合いをさらにもつこと▽公報を通じ、さらにこの差別事件を広く知らせることが重要、と関係行
政、機関、運動体に問題提起し、とりくみをよぴかけている。
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