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部落問題資料室
NEWS & 主張
被曝の現状を語る
チェルノブイリ 爆発事故25年後のいまを

「解放新聞」(2011.05.23-2519)

 ウクライナ共和国にあるチェルノブイリ原子力発電所(原発)の4号炉で1986年4月26日未明、大規模な爆発事故が起こった。その爆発事故から25年。人類は大きな代価として未来への貴重な教訓を得たはずだった。
 しかし、今回の東日本大震災によって起きた津波によって福島第1原発は収束のめどがつかない最悪の事態がつづいている。この福島第1原発が世界から注視されているのは、一度に複数の原子炉事故であり、プルサーマル発電をおこなう原子炉として世界初の事故であるからだ。
 このプルサーマル発電はウランに使用済み核燃料を再処理して分離したプルトニウムを混ぜ合わせた「プルトニウム・ウラン混合酸化物」(MOX燃料)をつかっている。制御がむずかしく事故が起きれば放射性物質の放出量がより多くなると予測され、実際に商業運転をおこなっている国は日本以外にないというものだ(「生活と自治」5月号参考)。

のちの世代にまで被害
 「チェルノブイリ原発事故から25年 チェルノブイリの今を考える」と題した集会が4月25日午後6時から総評会館でひらかれた。主催は原子力資料情報室らの実行委。集会では、パーヴェル・ヴドヴィチェンコ(イヴァーノヴィチ)さん(NGO『ラジーミチーチェルノブイリの子どもたち』国際プログラムマネージャー)が講演した。事故当時、パーヴェルさんは、180キロはなれたノヴォズィプコフに住んでいた。強い春風とともに放射性ヨウ素、セシウム、ストロンチウムの雨がふった。現在も高低濃度の地域がスポットとして散在する地域になっているという。
 彼は、「原子力エネルギー利用は経済的に有利なので、発展させなければならないと思っている人たちがいるがそのようなことをいうのは、チェルノブイリ原発事故の結果、被災した地域の現状を知らない人たちか、自分の行動が原子力エネルギー利用と直接結びついている人たちだ」とのべた。
 また、今回の福島第1原発事故について「福島の事故はあらゆる人びとに核エネルギーについての考えを変えさせるだろう」とのべ、「チェルノブイリ事故のあと、西側世界の多くの人たちには、原子力の大惨事がソ連で起きたのは、核施設の生産と操作でテクノロジーに従わなかった罰だと思われていた。高い水準で組織されている他の国ぐにでは、原子力エネルギー産業に関わっているのが高い技術を持った専門家たちであることから、大惨事がくりかえされることはありえないと思われていた。しかしそのさい、エレクトロニクスとよく訓練された人びとによって制御された列車が衝突事故をおこすという多くの事実が黙殺されてきた」とのべ、日本の福島で起こっていることは「もう一度全世界に、私たち皆が立ち止まって、多くのことを考え直さなければならないことを教えた。多くの過程を私たちは人類としていま、チェルノブイリと福島の共同の経験から出発しながら、新しい視点で見なければならないと思う」と結んだ。
 また、質疑応答のなかでは、ノヴォズィブコフでは2年前の医師の検診では10000人いる子どものうち健康体であるのは、わずか7人だった、と語り、最近17歳の少女に甲状腺ガンが発見されるなど、チェルノブイリ事故を直接経験していない事故後に生まれた世代にも被害がおよんでいることを指摘した。


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