脅迫状は被差別部落の人間が書いたものではない
「ご夫妻のご健在のうちに再審の光が大きく輝くことをねがっています」とのメッセージが、ノーベル賞作家の大江健三郎さんから石川一雄さんに届けられた。これは岩波書店の新刊、『小説の方法』の著者の大江さんが、著書を石川さんに贈呈し、本の扉にこのメッセージが書かれていたもの。大江さんの狭山再審への思いが切実に伝わってくる。
大江さんは、9月に朝日新聞での連載コラム「定義集」でも、国語学者で、いまは亡くなられた大野晋さんが、狭山事件の脅迫状は「学力の低い人間を犯人像として描くことを期待したものと思われる。しかし、作為の弱点が伴うのであって、脅迫状における漢字使用の不自然さ、そして学力の高さは、作為の仕方においてむしろ逆に顕在化しているのである」としたことを引用し、「裁判官は大野論文をしりぞけたのでしたが、国語学者としての綿密な読みとりが社会的発言に役立つことを、スッキリ証明する文章です。しかも不正義への烈々たる闘志は、これこそ知識人のものでなければならない、と胸にきざんだのを思い出します」と綴っている。
大江さんは、1977年1月に作家の野間宏さんらがよぴかけて桔成された「狭山事件の公正裁判を求める会」の討論集会にも参加し、大野晋鑑定を評価しながら、「脅迫状は、虚構の文章を書くことによって、かえって犯人自身を明らかにしている。脅迫状を書いた人間は、架空の人物を思い描くに当たって、その人物に対して差別的な気持ちや敵意をもっている。つまり、被差別部落の人間を設定して書いている。少なくとも被差別部落の人間が書いたものではない」と発言している。
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