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部落問題資料室
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主張

 

2011年の闘いをふりかえり、新たな闘いを準備しよう

「解放新聞」(2011.12.26-2549)

 本年3月に起きた東日本大震災から9か月余り。被災地では、いまだに復興作業が十分にすすんでいない。福島第1原発事故も収束しておらず、福島県外避難者が6万人を超えている。また、風評被害や「フクシマ」差別など深刻な問題も生み出されている。
  12月9日に閉会した臨時国会では、復興支援を中心にした第3次補正予算、復興庁設置法や復興持区法などの復興関連の法律が成立したが、今後とも長期的なとりくみが求められている。
  われわれも、復興支援カンパ、現地ボランティアなどに精力的にとりくんできた。阪神淡路大震災を経験した兵庫県連、南相馬市につくった拠点で活動をすすめた大阪府連をはじめ、関東ブロックの都県連、福岡、佐賀などの九州ブロックなども、現地への支援物資運搬、がれき撤去などにとりくんだ。全国からの支援カンパは、復興支援から取り残されることの多い社会的マイノリティへの支援につなげてきた。
  今後とも、いのちと生活を守るとりくみを中心にしながら、部落解放同盟らしい復興支援活動を続けていきたい。

 生活保護受給者が205万人を超え、過去最多になった。また、パートを含めた非正規労働者の割合も34%と過去最高になった。長引く不況のもと、こうした閉塞感が深まる社会情況のなかで、差別・排外主義の台頭が強まっている。社会への不平・不満のはけ口として、公然と部落や在日コリアンへの攻撃的な差別を扇動している。
  われわれは、この間、「人権侵害救済法」の制定に向けてとりくみをすすめてきた。「人権擁護法案」が04年に廃案になって以来、ようやく本年8月には、政府が「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」を公表し、来年の通常国会には法案を提出すると明言した。
  政権交代から2年余り、われわれは、部落解放・人権政策の確立、とくに「人権侵害救済法」制定に大きな期待を寄せるとともに、その実現に向けてとりくみを強化してきた。とくに、「3条委員会」として設置する人権委員会の独立性をはじめ、メディア規制問題のほか、法律の条項として「制度発足後5年の実績を踏まえて、必要な見直しをすることとする」と明記している。政府が策定する法案をより充実させるとりくみが重要だ。人権委員会の独立性、委員会の構成はもちろんのこと、「人権委員会のあるべき姿」をしっかりと論議し、実効性、迅速性、簡易性のある救済制度を確立していこう。

 狭山再審闘争では、12月14日に第9回3者協議がおこなわれた。東京高検は、万年筆、鞄、腕時計に関する捜査報告書や供述調書、スコップ関係の証拠など14点を開示した。しかし、「犯行現場」を特定するための捜査書類などは「不見当」と回答してきた。検察側にとって都合のよい証拠開示だが、その証拠さえも、これまでの狭山事件のえん罪性をさらに強めるものとなっている。われわれは、今後とも、証拠開示、事実調べの実現に向けて闘いを強化しなければならない。また、公正な証拠開示の法制化を求める全国署名活動では、12月段階で、個人著名は25万8496人、団体署名は、1498団体分を集約している。目標は100万人だ。来年の通常国会に向けて全力で署名活動にとりくもう。
  差別事件では、土地差別調査事件の確認会、糾弾会のなかで、開発業者、不動産業界、広告代理店などの差別体質を明らかにしてきた。さらに、インターネット上の差別情報など、公然と差別を扇動する陰湿な差別事件などが続発している。また、行政書士などによる大量の戸籍・住民票不正取得事件が発覚した。「本人通知制度」の導入のとりくみと連動させながら、真相究明に全国でとりくみをすすめよう。
  さらに「人権教育・啓発推進法」の活用や人権のまちづくり運動など、地域での生活・福祉・教育・雇用の課題にも積極的にとりくもう。
  われわれは、この1年間、部落解放運動の前進に向けて、さまざまなとりくみをすすめてきた。来年は全国水平社創立90周年である。記念すべき節目の年にふさわしい闘いを展開しよう。とくに、「人権侵害救済法」制定、狭山再審闘争は重要な段階だ。
  今年の闘いをしっかりと総括し、いま、闘いの勝利のためになにをすべきか、十分に論議し合いながら、新しい牢に向けた闘いを準備しよう。


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