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部落問題資料室
NEWS & 主張

 

第69回全国大会の成功に向けて運動方針案の論議をすすめよう

「解放新聞」(2012.02.13-2556)

 第69回全国大会に提案する一般運動方針第1次草案がまとまった。第1部の基調方針では、リーマン・ショックで明確になった自由主義市場経済の破綻がすすみ、ギリシャの債務危機、欧州連合(EU)圏内各国の財政赤字をはじめ、世界的な経済不況のなかで貧困・格差問題が深刻化していること、日本でも長期化する不況のもとで、派遣労働による不安定な非正規雇用の拡大などで、社会不安が増大している国内外の情勢を取り上げている。
  こうした経済危機のなかで、ヨーロッパでは、移民やロマ排斥などの異文化への攻撃が強まり、極右勢力の台頭がすすんでいる。日本でも、生活保護受給者が、205万人をこえて過去最高になり、「自死」者も14年連続で3万人をこえるなど、政治や社会の閉塞感がいっそう増し、生活への不安、不満が社会的弱者への差別、人権侵害の背景となっている。
  運動方針案では、こうした社会状況に抗して、部落解放運動の果たす社会的役割を社会連帯の実現と人権確立社会に向けたとりくみを推進していくことにあるとしている。

 今年は全国水平社創立90周年という大きな節目の年である。全水90年の闘いを継承し、さらに組織を強化し、運動を発展させていくための今日的課題を明確にしていくことが重要だ。一連の不祥事を契機にした組織と運動の改革論議をはじめ、点検・改革運動で明らかになったのは、何よりも次代を担う人材育成のとりくみをすすめる必要性である。
  さまざまな困難のなかで全水創立の中心を担い、運動をすすめたのは、当時の20代、30代の青年たちであった。それまでの融和的な改善運動と訣別し、自主的な運動の必然性を訴えた「全国水平社宣言」はまさに部落解放運動の原点である。この「宣言」は、差別に苦しめられてきた部落大衆に勇気と希望を与えたばかりでなく、人間解放に向けた叫びとして、全国水平社の闘いへの深い共感を生み出したのである。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれた「宣言」の意義はここにある。
  これまで部落解放運動は、人権と平和の確立、世界のマイノリティとの国際連帯のとりくみなどで大きな成果をあげてきた。また、今回の東日本大震災や自然災害への復興支援活動でも学んだように、排除、分断、孤立を克服する「人と人の豊かなつながり」を結び直すとりくみこそ、われわれがすすめてきた「人権のまちづくり」運動そのものでもある。一万、90年の闘いのなかでは、全水の戦争協力問題、「特別措置法」以降の行政依存体質と一連の不祥事など、反省が必要な課題もある。今大会では、全水90年の真撃な総括をふまえ、歴史的な教訓を生かすなかで、今後の部落解放運動がめざす方向を打ち出していく論議をすすめていくことが求められている。

 運動方針案では、当面の重要な闘いの課題として、「人権侵害救済法」早期制定や狭山再審闘争のとりくみ、差別糾弾闘争の強化をはじめ、いのちと生活を守り、地域の生活に密着した闘いなどを中心に、具体的な運動の方向性を提起している。地域での先進的なとりくみに学ぶことはもちろんのこと、失敗や反省も含めての貴重な実践を報告、交流しながら、日常活動の強化に向けた方策を確立していこう。
  さらに、こうした人権・環境・平和を基軸にした政策実現のためには、人材育成を中心にした組織と運動の強化が必要だ。この間の新綱領、規約改正、「行動指針」の策定などをふまえ、地域での日常的、具体的な営みのなかにこそある部落解放運動の展望をしっかりとつかみ取り、検証する部落内外の協働作業をすすめていくことが求められている。
  人権と平和の確立をめざすとりくみで部落解放運動が果たす役割は、ますます重要になっている。われわれは、自覚と責任をもって、これからの部落解放運動をすすめていかなければならない。都府県連・支部で運動方針案を豊富化する論議を深め、第69回全国大会を成功させよう。


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