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部落問題資料室
NEWS & 主張

 

「証拠開示法制化」請願署名100万筆を3月末までに達成しよう
4月に院内集会もち請願署名を国会提出

「解放新聞」(2012.03.19-2561)

 2009年9月いらいの3者協議で60点近くの証拠が開示された。とくに、石川さんが逮捕当日(1963年5月23日)に書いた上申書は、当時の石川さんの筆跡、国語能力が脅迫状とまったく異なることを示す無実の新証拠である。たとえば、脅迫状では「金二十万円」と書かれているが、石川一雄さんの上申書では、 「かねを20まんい」「きんに10まいん」などとなっている。「間」「書」「時」などの漢字が書けていないし、文字の表記もできていないことが歴然としている。弁護団は、開示された上申書を脅迫状と比較した新たな筆跡鑑定書3通を提出し、鑑定人尋問を求めている。
  また、裁判所が開示を勧告した犯行現場の血痕検査報告書を検察官は「不見当(見当たらない)」と回答したが、その後の弁護団の追及によって、当時の埼玉県警鑑識課員に検察官が事情聴取した報告書が追加で開示され、雑木林内でルミノール反応検査をおこない反応がなかったとのべていることも明らかになった。弁護団は、さらに犯行現場を特定するための捜査書類、殺害現場の自白を裏付ける証拠の開示を求めたのにたいしても、検察官は「不見当」と回答している。結局、犯行現場を裏付けるものは自白以外にはないということがますます明らかになった。一方で、犯行現場の自白については、事件当日、隣接する畑で農作業をおこなっていた0さんが「悲鳴も人影もなかった」という証言をしており、むしろ殺害現場という自白の核心を否定する重大な疑問がある。
  弁護団は、筆跡鑑定などの鑑定人や0さんの証人尋問を東京高裁に求めている。狭山事件の再審を求める市民の会では、これらの開示証拠によって明らかになってきた石川一雄さんの無実の新証拠をより多くの人に知ってもらおうと、新しいDVD「ここまできた狭山再審~証拠で無実がわかる」を制作した。開示された石川さんの逮捕当日の上申書や0さんの証言などを中心に、無実の新証拠を紹介し、再審請求の現段階を説明したものだ。市民の会は、3月22日、東京・日本教育会館で、このDVDの完成上映会と市民の集いをひらく。同時に、インターネット上でも公開することにしている。各地でDVDを活用し、無実の新証拠を学習するとともに、より多くの人に伝えて、再審開始を求める世論を大きくしていこう。

 先日、大阪地裁で東住吉放火殺人事件の再審開始決定が出された。裁判所は、有罪確定判決が自白を根拠にしているとしたうえで、弁護団がおこなった再現実験にもとづく新証拠をもとに自白の信用性を検討し、新証拠によって、放火方法という自白の核心部分の信用性に疑問が生じたとして再審開始を決定している。
  狭山事件でも、確定判決がよりどころにしたのは自白であり、その自白の核心である脅迫状作成、殺害現場、殺害方法の疑問について、弁護団は新証拠を多数提出している。東京高裁第4刑事部の小川正持・裁判長は、狭山事件の再審請求で、事実調べをおこない、新証拠を十分に検討したうえで、再審を開始すべきである。
  また、厚労省元局長のえん罪事件での検察官による証拠ねつ造に続いて、紛失した証拠物をねつ造するなど、この間、警察官による証拠ねつ造があいついで明らかになっている。こうした現実をみるとき、狭山事件で、検察官が「不見当」と回答したスコップの指紋検査報告書や犯行現場の血痕検査報告書などが、警察によって隠された可能性は否定できないというべきだ。狭山事件は、多数の警察官を張り込ませながら、犯人を取り逃がし、国会でもとりあげられる大事件となった。別件逮捕、再逮捕による長期勾留と取り調べ、弁護士との接見禁止など当時の捜査について多くの問題点が指摘されている。裁判所は、狭山事件の捜査全体の疑問をきちんとみるべきであろう。
  東京高裁は、検察官の「不見当」という回答で終わらせるのではなく、徹底した証拠開示を勧告するとともに、「秘密の暴露」とされた万年筆、鞄、時計の発見経過について、捜査の経過を含めて、弁護団が提出した新証拠を十分に検討すべきである。

 弁護団は4月にひらかれる次回の3者協議に向けて、さらに徹底した証拠開示を求めている。開示を求めているおもなものはつぎのようなものである。①検察官が領置した証拠に付けた番号で抜けているものの内容の特定と開示②取り調べテープに出てくるが調書には添付されていない万年筆隠し場所の図面③スコップ関係の捜査書類などである。いずれも、狭山事件で有罪の根拠とされた証拠に関連し、再審請求の判断にとって重要だ。狭山事件で開示勧告をおこなった門野博・元裁判官は新聞のインタビューにこたえて、「再審は、有罪としてはならない無実の人を救済する非常手段で、広くは人権問題です。積極的な証拠開示が検討されるべきです」「早期に強制的、組織的な捜査ができる警察・検察側と、それができない被告・弁護側とでは、証拠収集能力に元々、決定的な差があります。冤罪(えんざい)を防ぐため、手厚い証拠開示によって、この差を是正し、被告・弁護側が充分に防御できるようにしなければなりません」とのべている。
  1998年に東京高検の検察官は手持ち証拠は2~3メートルあると答えていた。まだ多くの証拠が東京高検に眠っていることは明らかだ。この間のえん罪事件、再審事件の教訓として証拠開示は不可欠である。東京高裁は証拠開示を積極的に促し、東京高検は誠実、公正に証拠開示請求に応えるべきだ。
  取り調べ可視化と証拠開示の法制化を求める請願署名は全国でとりくみがすすめられ、2月末で60万筆をこえた。狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会では、通常国会がひらかれている4月下旬に院内集会をもち、証拠開示法制化の請願署名を国会に提出し、政府、国会議員に要請行動をおこなうことにしている。各地、各団体で全力でとりくみ、3月末までに100万筆を達成しよう。取り調べ可視化、証拠開示の法制化をはじめ、えん罪をなくす司法改革を求めていこう。


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