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部落問題資料室
NEWS & 主張

 

政府は無償化の理念を崩すな! すべての子ども、すべての学校に適用を
すべての子どもを権利の主体と捉え、社会として保障するものに

「解放新聞」(2012.03.26-2562)

 高校授業料無償化制度が導入されて、3度目の春を迎えようとしている。3月1日の衆議院予算委員会で、平野博文・文部科学大臣が、経済的理由による中退者の減少、中退者の再入学の増加、希望に応じた進路選択が可能となったことなど、制度導入の政策効果について報告した。また、野田佳彦・総理大臣も、この制度を前提として子どもたちの進路選択がおこなわれ、すでに定着しているとの認識を示した。
  しかしながら、野党の一部は、所得制限の導入など、来年度予算とその関連法案との引き替えに、制度の後退となる「見直し」を迫る事態がいぜんとして続いている。

 そこで、高校授業料無償化制度の導入とその意義を、あらためて確認しておきたい。
  この制度は、「家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲のある子どもたちが安心して高等学校での教育を受けることができるよう、社会全体で支援する仕組み」として、「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとする」ことを求めた国際人権A規約第13条の将来的な留保撤回が念頭におかれている。
  従来のさまざまな施策が〝世帯″を前提として、とりわけ低所得世帯にたいして恩恵的に施されてきたことから政策転換をおこない、すべての〝子どもたち一人ひとりを権利の主体″と捉え、その権利を社会として保障することを理念とした画期的な制度なのである。

 もちろん、授業料以外にも大きな負担となっている校納金などへの支援策や、「公私間格差」と自治体による「減免補助制度」の格差の問題など、解消すべき課題も残されている。制度の見直しを迫る人びとは、非進学者との公平性の問題や、所得制限を設けて浮いた財源を課題の解決にあてることを主張しているが、前述したように制度設計の理念が違うのである。
  おこなうべきは、経済的理由で一人として進学を断念することがないように、支援の範囲を拡充し、制度をいっそう充実していくことである。まだ記憶に新しいところだが、東日本大震災では、両親または父か母のいずれかが死亡・行方不明となった子どもたちが1600人をこえると報告されている。
  今日、こうした困難な状況におかれた場合にあっても、子どもたちが、将来に希望をもち、進学を断念することがないように、制度の充実に努めることが与野党を問わずに求められているのではないだろうか。

 未来の担い手である子どもたちは社会の財産であり、子どもたちの学びが、より豊かな社会を創造していくことにつながる。子どもたちの教育を、政権抗争の道具にするような愚かな振る舞いは、世界に恥をさらすようなものだ。また、国連人種差別撤廃委員会からも勧告されているように、政治や外交の問題を理由に教育に介入し、朝鮮学校を排除し、民族差別を続ける行為にも終止符を打つべきである。
  すべての子どもたちが、笑顔で4月の春を迎えられるよう、政府の英断を求めるとともに、われわれも権利保障と差別撤廃に向けて全力で闘いをすすめていこう。


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