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人権侵害救済制度の確立に向け今国会での闘いに総力を

「解放新聞」(2012.06.11-2572)

 われわれがすすめてきた「人権侵害救済法」制定の闘いは、今国会で「人権委員会設置法案」を実現するための大きな山場を迎えている。
  政権交代以降、民主党は、「人権侵害救済機関検討プロジェクトチーム」(PT)を設置し、昨年6月に「人権侵害救済法中間とりまとめ」をまとめた。政府も、昨年12月に「人権委員会設置等に関する検討中の法案概要」、本年2月に「人権委員会設置法案(仮称)の骨子(案)」を示したが、いまだにこの法案が閣議決定されないままになっている。
  この間、昨年11月の中央集会の成功に向けた国会議員要請をはじめ、今年に入ってからも、4月、5月に各都府県連や都府県実行委員会による2波にわたる国会議員要請のほか、部落解放中央共闘会議(議長=加藤友康・情報労連中央執行委員長)など、中央実行委員会加盟団体でも精力的に独自のとりくみがすすめられてきた。また、3月には、超党派で構成されている「21世紀人権政策懇話会」(会長=中野寛成・衆議院議員)が、野田佳彦首相、小川敏夫法務大臣あての「要請書」を提出している。
  「たちあがれ日本」など、一部の反人権派による頑迷な反対・妨害も執拗に続けられているが、荒唐無稽な反対派の暴論を打ち破って、人権と平和を確立する闘いをすすめよう。

 「法案概要」にもとづいた「骨子(案)」では、人権委員会は法務省の外局に、「3条委員会」として設置し、政府からの独立性を確保するとしている。名古屋刑務所事件の教訓、不当な取り調べやえん罪を防止するための取り調べの可視化の必要性など、公権力による人権侵害の実態をふまえて、政府が認めているように「パリ原則」に準拠した「3条委員会」として人権委員会を設置することに、われわれは賛成である。
  反対派は、「3条委員会」として設置することで、人権委員会の権限が強すぎるとしているが、公権力による人権侵害などの場合、政府などの干渉を受けない独立性を担保するためにも、「3条委員会」での設置が重要である。また、「児童虐待防止法」や「配偶者虐待防止法(DV防止法)」などをあげ、多くの法律が存在することや、法務省人権擁護局が十分に機能しているとしている。しかし、これらの法律があるにもかかわらず、児童虐待やDVによる悲惨な事件が多く報告されている。人権擁護局のとりくみが十分でないことは、すでに2001年5月に人権擁護推進審議会が「人権救済制度の在り方についての答申」のなかで、「実効的な救済という観点からは、それぞれ制約や限界を有している」と指摘している。
  永年にわたる、人権の確立に向けた多くの議論やとりくみをあえて無視し、ねじ曲げて主張することを、われわれは断じて許さない。

 今国会の会期は6月21日までである。残された時間は少ない。5月までは、「社会保障と税の一体改革関連法案(消費増税法案)」と「原子力規制庁設置法案」のみが審議され、問責決議を受けた2閣僚問題もあり、ほかの法案はほとんど審議されてこなかったが、6月に入って、内閣改造とともに、「公務員制度改革関連法案」など10法案の審議入りを決めている。
  人権の法制度の確立、とりわけ人権侵害救済制度の取り扱いが、与野党の駆け引きや稚拙な反対論に左右されることがあってはならない。一方でわれわれは、現実の政治情況を冷静に判断し、今国会での政府案である「人権委員会設置法案」の実現をかちとるために、6月14日には、緊急の中央集会と国会議員要請を中心にした行動にとりくむ。
  われわれのこれまでの闘いからすれば、今回の「法案」は、不十分な点も多い。しかし、人権擁護推進審議会が、人権侵害救済制度の確立の必要性を指摘してから10年以上が経過している。このような立法不作為を許してはならないのは当然だ。
  第69回全国大会でも確認してきたように、「民主党政権のもとで法案を実現する」という基本的なとりくみ方向のもとで、6月の残された期間の闘いに全力をあげよう。


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