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部落問題資料室
NEWS & 主張
差別街宣裁判で勝利
差別で不法行為と奈良地裁

「解放新聞」(2012.07.09-2576)

【奈良】水平社博物館前での差別街宣事件で、奈良地裁(牧賢二・裁判官)は6月25日午後、川東大了(在特会副会長・当時)にたいして、名誉毀損として慰謝料150万円を支払えという判決をおこなった。
 判決では、▽穢多、非人という公知の事実である差別語を用いて水平社博物館前で演説をおこない、しかも動画サイトに投稿して広く市民が視聴できる状態においた▽これは、水平社博物館の設立日的、活動状況、川東の言動の時期、場所などからみると、水平社博物館への名誉毀損に当たる▽川東による不法行為となる言動から水平社博物館に生じた有形・無形の損害は相当大きなもので、これにたいする慰謝料は150万円が相当である、とした。
 訴えていた水平社博物館は、差別街宣の違法性を認めた点を高く評価し、不当な差別助長行為をくり返す者らにたいする糾弾を今後も継続する、との見解を明らかにした。
 判決後の総括集会では、奈良県連の辻本正教・副委員長が、裁判所が明確に差別街宣で名誉毀損に当たる、とした点を評価したい、とのべた。判決の評価と分析にたった古川雅朗・弁護人は、「当裁判所の判断」で簡潔に要点をのべた判決だ、とのべ、具体的に中身を説明した。内橋裕和・弁護人は、部落差別への怒りを裁判で示した結果で、水平社博物館を愚弄するものだという、ごく当たり前のことをシンプルに指摘したものだ、と評価した。川口正志・奈良県連委員長は、われわれは損害賠償金を求めているのではない。差別街宣を、名誉毀損ということでしか訴えることができない現行の法体系の不備を明らかにし、あらためて救済制度の確立をめざすことが重要である。また、今回の判決で、差別言動を当然の社会悪として認定させたことは大きな成果である、と語った。
 その後、中央本部からは岸田副委員長、連帯労組(奈良)、京都の「こるむ」(朝鮮学校襲撃事件裁判を支援する会)から発言があり、同じようなヘイトクライムを受け裁判で闘っている所への影響は大きい、と判決を評価する声が上がった。集会では、この裁判の訴状を提出した直後死去した、解放運動に責献してきた高野嘉雄・弁護士に黙祷を捧げた。

水平社博物館前差別街宣事件 奈良地裁による判決文(関連1ページ、主文と判断を抜粋)
主文
1 被告は、原告に対し、150万円及びこれに対する平成23年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを20分し、その17を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮執行することができる。
第3 当裁判所の判断
1 被告の不法行為の成否
前記2の2(4)で判示したとおり、被告は、原告が開設する水平社博物館前の道路上において、ハンドマイクを使用して、「穢多」及び「非人」などの文言を含む演説をし、上記演説の状況を自己の動画サイトに投稿し、広く市民が視聴できる状態においている。そして、上記文言が不当な差別用語であることは公知の事実であり、原告の設立目的及び活動状況、被告の言動の時期及び場所等に鑑みれば、被告の上記言動が原告に対する名誉毀損に当たると認めるのが相当である。
2 原告に生じた損害の額
前記1で判示した被告の不法行為となる言動はその内容が原告の設立目的及び活動状況等を否定するものであり、しかも、その時期、場所及び方法等が原告に対する名誉毀損の程度を著しくしていることなどの事情に鑑みれば、被告の不法行為によって原告に生じた有形、無形の損害は相当大きなものであるといわざるを得ず、これに対する慰謝料は150万円相当である。


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