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国際人権諸法と国際人権基準にもとづく「移住者」政策をめざそう

「解放新聞」(2012.07.09-2576)

 現在、日本では190か国、210万人の外国人がともに暮らしている。日本は、多国籍、多民族国家なのである。であるにもかかわらず、外国人への人権諸法などが整備されていないのが現状なのだ。
  この7月9日、日本にいる外国人にたいする新たな在留管理制度がはじまる。これまでの「外国人登録法」が廃止され、「出入国管理法」「入管特例法」「住民基本台帳法」の改定にもとづくものだ。
  改定は、これまでの「外国人登録法」が旧植民地の朝鮮、台湾出身者を対象としていた時代から、1980年代から顕著になった、アジアや南米からの移住労働者の増加などのグローバル化の現実にともなうものだが、その具体的あり方は、これまでの治安・管理対策的なものを維持・発展させるものとなっている。国家による一元的法制度による管理が、その狙いだ。

 改定にもとづいて、在留者は①「特別永住者」(旧植民地出身者)②中長期在留者③非正規滞在者、の3つのカテゴリーに分断され、管理される。
  「特別永住者」はICチップ入りの「特別永住者証明書」カードを市区町村の窓口で受け取る。常時携帯義務はないが、警察官や入管職員に求められたときには提示する義務がある。これまでと同様の管理が狙われている。
  現在、170万人いるといわれる「永住者」「日本人の配偶者」「定住者」が「中長期在留者」とされる。彼/彼女らは、各地の入管で在留カードを受け取り、14日以内に市区町村に持参して「居住地」の記載を受け、住基ネットに組み込まれ、「外国人住民票」をもつことになる。この住民票には、国籍、在留資格、在留期間とその満了日、在留カード番号も書きこまれる。在留カードは、顔写真つきICチップ入りで、「就労制限の有無」が記載され、16歳以上には常時携帯義務がある。これまで以上に徹底的に管理することが狙われている。たとえば、「中長期在留者」が労働するさいの事業所、あるいは大学、専門学校など「所属機関」は、個人単位の状況・情報を入管に届出・報告しなければならない。地方自治体は「外国人住民票」に変更があった場合、すぐに法務省に届出なければならない。本人による届出義務が遅れた場合などは、在留資格取り消しなどの重い罰則が待っている。
  「非正規滞在者」は、現在10万人といわれ、オーバーステイした労働者がおもな対象。単純労働者は受け入れないとしながら、実際にはそれを受け入れ、利用し、「研修生・技能実習生」という名の低賃金労働者を生み出すなど、日本政府の無策と現実とのギャップが生み出した人びとといえる。労働者としての権利を奪われ、社会保障からも除外されるなどの現実がある。にもかかわらず、新たな制度は、この人びとにたいし「在留カード」すら発行せず、これまで地域住民として市区町村から出産や医療、子どもの教育などで受けることができた公的援助すら奪おうとしている。
「見えない存在」とし、徹底して排除することが狙われている。
  このような管理方法の細分化と罰則規定、個人情報の国家への集中によって、「在留資格」を国家の意のままに取り消しやすい状況におき、居住や労働といった面のみならず、「外国籍住民」の基本的人権が侵され続ける状態を生み出すのが新制度といっていい。

 こうしたあり方は、「外国籍住民」一人ひとりが個性ある人間であり、飲み食いかつ生きることを再生産する生活者であることを認めようとしない考え方にもとづいている。あるいは、地域社会の一員であり、ともに生きている現実を無視している。それは、彼/彼女らをたんなる「労働力商品」として、あるいはこの社会には存在しないものとして、厄介者として見、排外・差別することを意味している。
  2011年7月、ノルウェーで反イスラム・反移民を掲げ大量殺人をおこなった被告人が理想の国としていたのが日本だった。日本を多文化主義を否定する国として賞賛していたのだった。まさに、そのことを反映したのが今回の新制度だ。
  移民政策ももたず、治安管理、監視、排外・差別を軸にした日本の法整備のあり方にたいして、「日本は、国際人権法と国際人権基準にもとづいて、国レベルで包括的な移民政策をとること」が国連から勧告されている。具体的には、「移住者を日本社会の一員として認識する」「権利を効果的に保護する」「より柔軟な在留資格をもうけるべき」「人権教育・啓発を高める」ことなどがある。移民政策とは、まさに人権政策そのものであり、その国の人権の成熟度が問われているのである。
  治安管理、監視、排外・差別を軸にした移民政策しかもたない国の住民に、果たして本当の人権は保障されているのだろうか。それは否である。げんに、共通番号(マイナンバー)制度を軸に、日本人にも顔写真つきICカードをもたせ、あらゆる情報をカードに入れ込み、管理・監視・支配体制を強化しようとする策動がおこなわれている。
  こうした移住政策の法や制度を支えているのが、私たち日本人である。移住者から人権を奪う法や政策を強いる社会に、基本的人権がないことは明白だ。部落問題が「国民的課題」であるのと同じように、「移住者・外国人問題」とは、じつは日本社会全体の課題なのだ。それぞれの地域で、「非正規滞在者」にたいして特別在留措置を求める運動などを共同の力で展開しよう。
  「差別なき人権確立社会の実現をめざし」、この社会に住むすべての人びとが情熱をもって、一人ひとりが光り輝く存在として生きていくことのできる世界を、ともに作りあげていこう。


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