「隠された筆跡資料、犯行現場の証拠を開示し、事実調べをおこなえ」の声を大きくしていこう
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東京高裁第4刑事部(小川正持・裁判長)は、6月7日、1997年におきた「東電社員殺害事件」で再審開始決定をおこなった。同高裁は刑の執行停止も決定し、無実を叫び続けていたゴビンダ・プラサド・マイナリさんは釈放され、16日にネパールに帰国した。東京高裁の再審開始決定は、あらたに実施されたDNA鑑定によって、事件現場に残された体毛、被害者の体に付着しただ液、衣服に付着した血痕から、ゴビンダさんのものではない第3者のDNA型が検出されたことを総合し、この第3者が犯人である可能性が高いとし、これら新証拠によって、ゴビンダさん以外に現場に被害者を連れ込むことは考えられないとした確定有罪判決に疑問が生じた、として再審を開始した。
検察官は、この再審開始決定にたいし異議申立をおこなったが、東京高裁第5刑事部は、これを棄却した。検察側が特別抗告を断念したことによって、再審が東京高裁でおこなわれることになる。
今回、裁判所の勧告によって開示された体毛の血液型鑑定によれば、現場に残された体毛が0型であり、B型のゴビンダさんのものではないことは、事件当時、ゴビンダさんを本件で逮捕する前にわかっていた。警察はこれをきちんと調べもせず、検察官はこれを隠してゴビンダさんを犯人にでっちあげたといわざるをえない。今回の再審開始決定で新証拠となったものは、当初から開示できたはずであり、検察官が、こうしたゴビンダさんの無実に結びつく重要な証拠を14年も隠し続けていたことは、厳しく批判されるべきである。何が真実かを明らかにする使命から逆行するこれらの行為は、市民の常識からしても許されない。
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今回の「東電社員殺害事件」の再審開始の理由となった新証拠の多くは東京高裁の勧告によって証拠開示され、あらたにDNA鑑定がおこなわれたことによって明らかになったものだ。再審で、証拠開示と事実調べがいかに重要であり、それを積極的に裁判所がすすめたことが誤判から無実の人を救済し真実を明らかにする近道であることを示している。
狭山事件の第3次再審請求は、同じ東京高裁第4刑事部(小川正持・裁判長)で審理され3者協議がおこなわれている。狭山事件でも、2009年12月に開示勧告がおこなわれ、その後、検察官から証拠開示がおこなわれた。それによって、47年目に日の目を見た石川一雄さんが逮捕当日に書いた上申書などが明らかになり、新証拠として提出されている。東京高裁の小川裁判長は、開示された上申書と脅迫状の筆跡が異なるとする専門家の鑑定などについて事実調べをおこなうべきである。
また、開示された証拠物の番号が飛んでいるものについて、内容の特定と開示を求めたことにたいして、検察官は筆跡資料1点を開示したが、そのほかの証拠は開示せず、内容も明らかにしていない。筆跡に関する証拠がほかにも存在することは明らかだ。脅迫状は狭山事件で犯人の残した唯一の物証である。小川裁判長は、脅迫状にかかわる筆跡資料をすべて開示するよう検察官に勧告し、逮捕当日の上申書や筆跡鑑定とあわせて事実調べをおこなうべきである。
「隠された筆跡資料を開示し、事実調べをおこなえ」の声を大きくしていこう。
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一方、裁判所が勧告した「犯行現場」の血痕検査(ルミノール反応検査)報告書や「犯行現場」を撮影した8ミリフィルムについては、検察官は「不見当(見当たらない)」と回答し、弁護団がさらに、「犯行現場」を特定するための当時の捜査書類や、殺害現場の自白を裏付けるための捜査書類の開示を求めたのにたいしても、「不見当」と回答している。自白の核心である「犯行現場」について、疑問はますます深まっている。事件当日、犯行現場に隣接する畑で農作業をしていた0さんの証人尋問をはじめ、「犯行現場」にかかわる証拠開示、証拠調べは不可欠である。
次回の3者協議は10月におこなわれる。弁護団は、検察官が3月に提出してきた意見書のうち筆跡に関する反論の意見書、補充書を8月末に裁判所に提出する。また、年内には、殺害方法や犯行態様に関する反論の意見書なども提出できるように作業をすすめている。弁護側、検察側の双方から鑑定書が出されるのであるから、鑑定人尋問などの事実調べは不可欠である。足利、布川から続く再審の流れ、えん罪の実態を教訓として、狭山事件でも証拠開示と事実調べが必要だ。
徹底した証拠開示と事実調べを求めて、狭山事件の再審を求める市民の会とともに、10月2日には全国の狭山住民の会の交流会と活動者会議をひらき、さらに10月30日には再審を求める市民集会を日比谷野外音楽堂でおこなう。各地でも新作DVD「石川一雄さんは無実だ」などを活用し、学習会や情宣活動を強化するとともに、東京高裁、東京高検にたいする要請ハガキなどにとりくもう。
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