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部落問題資料室
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臨時国会での「人権委員会設置法案」の成立に向けて全力をあげよう

「解放新聞」(2012.10.15-2589)

 野田内閣は、9月19日に「人権委員会設置法案」をようやく閣議決定した。この間、われわれは、通常国会での閣議決定-国会上程に向けて、国会会期が延長されたことをふまえ、国会終盤での集中した中央行動を展開してきた。
  とくに、6月の部落解放・人権政策確立要求第1次中央集会に続いて、7月18日に第2次中央集会と要請行動にとりくみ、政府・与党を中心に、与野党国会議員などに、法案の閣議決定―国会上程と法案審議の促進を求めて闘いをすすめてきた。また、中央執行部の常駐体制のもと、都府県実行委員会段階でも、福岡、京都、大阪、埼玉が独自の東京集会を開催、鳥取、東京、和歌山、佐賀、栃木などが国会要請行動にとりくんだ。また、中央実行委員会加盟団体である日本労働組合総連合会(連合)や部落解放中央共闘会議なども政府・与党にたいして精力的な働きかけをすすめてきた。
  こうした集中した中央行動のとりくみによって、7月25日に、民主党人権政策推進議員連盟が臨時総会で新体制を確認、8月1日には、野田首相に法案の閣議決定を強く要請した。また、8月22日に、公明党が同和対策等人権問題委員会を開催、新体制のもとで、法案審議に積極的に応じる方針を確認した。さらに、8月29日の民主党法務部門会議では、法案を了承、閣議決定に向けた党内手続きを終えるなど、着実に法案成立への動きをつくり出してきた。

 われわれが打ち出してきた基本方針は、民主党政権のもとで、人権救済制度の確立をはかるというものであった。政府は、「社会保障と税の一体改革関連法案(消費増税法案)」の成立をめぐる国会運営の混乱などもあったが、最終段階では、当時の拉致担当(国家公安委員長)の松原仁・大臣が法案に反対であることを理由に閣議決定を延ばしてきた。まさに、たちあがれ日本や日本会議が主張している偏狭なナショナリズム、国権主義に同調する姿勢であったといわざるをえない。
  しかも、「人権擁護推進審議会」が人権救済機関の必要性を指摘してから10年以上が経過しているにもかかわらず、今日でも、土地差別調査事件や戸籍等不正取得事件をはじめ、インターネット上での差別情報の氾濫など、いっこうに改善しない人権状況を放置していることは重大な政治責任の放棄である。さらに、たび重なる国連人権条約機関からの勧告、指摘を受けていながら、国内人権機関の設置に向けての国際的責務をないがしろにするようなことは許されない。
  われわれは、民主党が昨年の東日本大震災への復興支援という困難な課題があるなかで、人権救済機関の設置に向けて、検討プロジェクトの設置と精力的な論議をすすめるなかで、不十分ながらも与党として、法案を取りまとめた努力や、超党派による「21世紀人権政策懇話会」のとりくみは評価するものの、いたずらに法案の閣議決定を遅らせた野田内閣の責任は重大であると強く批判するものである。

 10月1日には、野田第3次改造内閣が発足した。また、自民党も、安倍晋三・元首相を新総裁に選出し、それぞれ与野党とも、新体制のもとで臨時国会を迎える。臨時国会の日程は未定であるが、解散――総選挙も想定されるなかで、与野党対立の激化など、きわめて不透明な政治情況のもとでの、法案成立に向けた闘いになる。的確な政治判断のもと、臨時国会での早期成立の闘いを集中的にとりくむ必要がある。
  われわれが政権交代に求めてきたのは、人権・平和・環境を軸にした政治の実現である。われわれは、長年の「部落解放基本法」制定の闘いのなかから、「人権教育・啓発推進法」を成立させてきた。また、この間の「人権侵害救済法」の制定に向けたとりくみも、まさに人権の法制度の確立をめざしたものである。
  われわれのこれまでの闘いからすれば、この法案は、不十分な点も多い。しかし、国会閉会中の閣議決定という、遅きに失したとはいえ、この間の中央行動のとりくみによって、法案成立に向けた大きな第一歩をかちとることができた。10月中にも開会が予定されている臨時国会では、民主党政権のもとで法案を実現するという、これまでの闘いの基調、そして人権・平和・環境を軸にした政治の実現という、政権交代の意義をあらためて確認し、「人権委員会設置法案」の実現に向けた闘いを全力ですすめよう。


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