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部落問題資料室
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正念場の狭山闘争をいっそう盛りあげ、勝利への大道を切り拓こう

「解放新聞」(2012.10.22-2590)

 10月3日に東京高裁内で狭山事件第3次再審請求の第11回3者協議がひらかれた。東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団の中山主任弁護人、中北事務局長をはじめ12人の弁護人が出席した。弁護団は4月に、殺害現場関係の捜査書類、スコップ関係の証拠の開示を求めたが、検察官は、この日の3者協議で、事件直後の捜査報告書1通とスコップ関係の証拠3点を開示した。
  しかし、一方で、検察官は、目撃証言や3物証(万年筆、鞄、腕時計)にかかわって弁護団が求めた重要な証拠の開示について、証拠開示の必要性はないとする立場を表明した。弁護団は高裁の開示勧告いらいの積み重ねをふまえて反論し、裁判所も柔軟に対応するよう検察官に促したという。
  もとより、検察官が保管する証拠は検察の独占物ではないはずだ。弁護団は、再審請求の審理で証拠開示の必要性や存在する根拠を具体的に示して開示を求めているのであり、検察官は、こうした対応をあらため、すみやかに証拠開示に応じるべきである。

 弁護団が、開示された取り調べテープや上申書などの証拠物について、検察官がつけた番号にしたがって整理したところ、番号が飛んでいる(欠番になっている)ものがあることが判明した。とくに、前後の証拠物から、欠番のなかに筆跡の資料が存在することが明らかになった。弁護団は、これら欠番になっている証拠物について、内容を明らかにし開示するよう求めた。ところが検察官は、内容を明らかにすることは証拠リストを開示し、全証拠開示と同じことになるとして回答しなかった。
  弁護団は8月末に、指宿信・成城大学教授による証拠標目の提示の法的根拠についての鑑定意見書を高裁に提出するとともに、9月7日付けで証拠物の標目の開示勧告申立書を提出した。指宿意見書は、再審請求で証拠標目を弁護側に提示することは、法理論や裁判実務、あるいは諸外国との比較からも積極的におこなわれるべきであることを明らかにしたものだ。これら未開示の証拠物が存在することは明らかだし、とくに筆跡は再審請求の重要な争点であり、検察官は少なくとも証拠物の標目を提示すべきである。

 狭山事件では、自白どおりに被害者の所持品が発見されたとして、鞄、腕時計、万年筆が有罪証拠となった。弁護団は、3者協議に先立つ9月26日、この腕時計について、重要な新証拠を東京高裁に提出した。それは、提出されたのは、時計修理歴44年という専門家鑑定人による証拠の腕時計のバンド穴の使用状況についての報告書などである。
  報告書は、高裁に保管されている証拠の時計を詳細に観察し、被害者や被害者の姉が使用するはずのない時計から2番目のバンド穴の使用頻度が高いことを明らかにしたものだ。自白にもとづいて発見されたという腕時計が被害者が使用していたものではない疑いを示す重大な新事実である。
  また、昨年12月に証拠開示された時計の捜索報告書も提出された。これは、時計を捨てたという自白にもとづいておこなわれた警察による捜索の報告書で、のちに時計が発見される場所を探していることが明らかであり、時計の発見がいわゆる「秘密の暴露」にはあたらないと弁護側は主張している。
  東京高裁は、事実調べと証拠開示をすすめ、時計の疑問を究明し、自白の信用性を再検討すべきである。

 検察官は、ことし3月と5月に、弁護側が提出した筆跡、殺害方法、スコップ土壌についての鑑定に反論する専門家による意見書を提出した。弁護団は、8月、9月に、スコップ土壌と筆跡について検察官意見書に再反論する新証拠を提出した。また、あらたな筆跡鑑定や捜査、逮捕の問題点についての新証拠も提出した。
  弁護団は、さらに検察官意見書に反論する法医学鑑定や、開示された取り調べテープにかかわる新証拠を来年春頃にかけて提出する予定である。証拠開示や時計の新証拠、事実調べ要求についての検察官の意見も今後出されることになる。これらをふまえて、次回の3者協議は来年1月下旬におこなわれる。
  検察官からも専門家の意見書が出されたのであるから、証拠の評価にあたっては鑑定人尋問などの事実調べをおこなうべきであろう。狭山事件では、2審有罪判決いらい38年もの間まったく事実調べがおこなわれていない。あまりに不公平、不当である。
  来年5月には、狭山事件発生から50年、半世紀をむかえる。半世紀におよぶ石川一雄さんの無実の叫びをうけとめ、1日も早い事実調べ、再審開始を実現しなければならない。10月30日には、東京・日比谷野音で実行委員会主催による狭山事件の再審を求める市民集会がひらかれる。証拠開示と事実調べを実現するために、さらに各地で運動の輪を広げ、「多くの冤罪を教訓に証拠開示と事実調べを! 狭山事件の再審を!」との世論を大きくしていこう。


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