土地差別調査事件の現状と課題を把握し、各地でとりくみを強化しよう
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宅地建物取引業者に「取引物件が同和地区かどうかを教えることについて」、どう思うかとたずねたところ「差別とは関係がない」―18%となっており、「差別かどうか一概には言えない」―60%との報告があったのが、香川県でおこなわれた宅建協会によるアンケート調査結果である。
大阪府が実施した2010年度の「府民意識調査」結果でも、住宅を選ぶときに、同和地区内の物件を忌避すると思うと回答した人は、「同和地区の地域内であれば避けると思う」という人が55.0%、「小学校区が同和地区と同じ区域内になる場合避けると思う」という人が42.9%となるなど、なお差別意識が根強く存在している実態が明らかにされた。
同和地区と同和地区周辺には住みたくないとする市民の差別意識の存在は、行政の窓口で同和地区を問い合わせする事件が頻繁に報告されている事実からみても、根強い忌避意識が同和地区や同和地区出身者に向けられている、まさに差別意識が空気を吸うように社会に存在していることを、まざまざと思い知らされる。
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マンション建設の候補地決定のさいにあらかじめ同和地区は避けようとするディベロッパー、そのディベロッパーの差別意識を理解したうえで、建設予定地の周辺の環境などを調べ、同和地区内や同和地区周辺の場合、「問題あるエリア」「地域下位地域」などの造語を用いて報告するという差別調査を調査会社に依頼した広告会社の存在。また、広告会社の意図をくみとり同和地区の所在地などを調査し、報告していた調査会社という差別の構図が、いわゆる土地差別調査事件である。
この土地差別調査事件は、マンション建設予定地の候補地周辺の状況を知りたがったディベロッパーと広告ほしさに歩み寄る広告会社と、依頼を受けて土地調査を実施した調査会社という3者の思惑がなし得た土地差別調査ではあるが、この事件の本質ともいえる背景には、「市民が同和地区との関わりを避けたい」とする忌避意識の存在がその土台を形成しているといっても過言ではない。
3者ともに利潤を追求する企業である以上、リスクはできる限り軽減させたいと思うのはしごく当然のことといえる。つまり、被差別部落や被差別部落周辺はマンション建設予定地候補としてはリスクがともなう危険性や損をする可能性がある場所として理解されているという、いわば、そもそも市場から排除された地域と認識されているところに問題がある。
市民のなかに根強く存在する被差別部落にたいする忌避意識という「差別意識」が、マンションを建設し販売するという行為そのものに、〝土地差別調査″という差別の「仕組み・システム」に悪用され、そのことによって、被差別部落や被差別部落住民が「排除」されていくという「差別意識の増幅」を生んでいる。いわば、「差別意識の悪循環」のシステムがつくりあげられていることになる。
こうした不動産売買での「差別意識の悪循環」を断ち切り、逆に人権が尊重される〝好循環システム″へ転換させることこそが、土地差別調査事件を本当の意味で教訓化することとなる。
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不動産売買での人権の好循環システムの確立に向けては、つぎの視点ですすめられていくべきだと認識している。
その第1は、被差別部落イコール同和地区を不動産売買での市場、いわゆるマーケットととらえる発想の転換を、地域の側も不動産関係者ももつべきである。そのヒントは、現代社会で希薄となりつつある人間関係が、被差別部落では、強い連帯意識と絆ともいえる助け合いの精神が、いまなお充ち満ちており、老若男女がいきいきと暮らすことができるコミュニティを築きあげるチャンスは、被差別部落にこそ存在し、新たなまちづくりが部落発で進展していく可能性をもっているということ。
第2は、部落解放同盟をはじめとする被差別部落に根づいている「福祉」や「教育」、「仕事保障」などの活動とまちづくりをミックスさせ、住まうだけではない暮らしの安全や快適に集う自治集団の形成など、コミュニティづくりという視点で、人権の好循環システムを部落から創造するという視点をもつことである。
第3には、部落解放同盟と当該行政による同和行政、人権行政をパートナーとして進展させてきた信頼関係が存在しているという点である。まちづくりをすすめていくうえで、行政の理解や協力は不可欠といえる。あらためて部落解放同盟と築きあげてきた行政との信頼関係をまちづくりに活かしきることである。
部落のこれからの新しいまちづくり運動こそ、「差別意識の悪循環」を断ち切り、人権が尊重される好循環システムへの転換へとつながるものである。各地域の実践に期待したい。
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