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部落問題資料室
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主張

 

闘いの到達点を総括し、部落解放に向けた新しい一歩を

「解放新聞」(2012.12.31-2600)

 本年は、全国水平社創立90年の大きな節目の年だった。3月には、京都市内で記念集会をひらき、先達の苦闘に学び、節目の年にふさわしい闘いの前進を誓いあった。
  政権交代から3年余り、われわれは、「民主党政権のもとで、人権侵害被害救済制度の確立をめざすこと」を基本方針に、全力をあげて闘いをすすめてきた。最終局面では、不十分な内容の法案であったが、「人権委員会設置法案」の実現をめざして、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会に結集する団体、都府県実行委員会などの果敢なとりくみによって、法案の国会提出の閣議決定までこぎつけ、いよいよ法案の実現が目前となったが、衆議院解散-総選挙によって、残念ながら「人権委員会設置法案」は廃案になった。
  09年の政権交代で誕生した鳩山内閣いらい、菅内閣、野田内閣とめまぐるしく替わる首相と、のべ8人にもなった法務大臣の交代など、困難な情況のなかで、ようやくにしての法案提出の閣議決定まで押し上げてきた、連合や部落解放中央共闘会議をはじめ、企業・宗教関係者などの果敢なとりくみと行政関係者の協力に深く感謝したい。法案の成立にはいたらなかったが、これまでの闘いの到達点として、しっかりと総括をしながら、今後のとりくみをすすめていきたい。

 未曾有の被害をだした東日本大震災では、いまだに十分な復興がすすんでいるとはいえない。原発事故への対応と、脱原発への方向性もきちんと打ちだせてこなかった。
  さらに、雇用状況では、いっこうに回復しない景気のもとで、非正規労働者の実態も改善されず、貧困・格差の問題がますます深刻化している。一方、国際関係でも、中国や韓国、ロシアとの領土問題と、アメリカに強要されたTPP交渉参加など、アジアのなかでの孤立化も深まった。こうした閉塞感が強まる社会情況のなかで、差別・排外主義の台頭が強まり、社会への不平・不満のはけ口として、公然と部落や在日コリアンへの攻撃的な差別を扇動している。
  また、戸籍等不正取得事件もいまだに逮捕者が続いており、差別身元調査や土地問い合わせなど、人権侵害被害救済制度がないなかで、個人情報の売買がおこなわれているが、実態はいまだに解明されていない。さらに、インターネット上の差別情報の氾濫にも何ら有効な対応策がないのが実情である。
  われわれは、こうした差別や人権侵害の実態をふまえ、差別糾弾闘争を断固としてすすめるとともに、あらためて人権侵害被害救済制度の確立の闘いを再構築していかなければならない。
  さらに狭山再審闘争では、来年1月に第12回3者協議がひらかれる。この間、石川一雄さん、早智子さんは、東京高裁前アピール行動にとりくんでいる。来年は、無実の叫びから50年、いよいよ再審実現に向けての正念場だ。全国で石川無実の世論を大きく拡げ、闘いの勝利をかちとろう。

 年末の衆議院議員総選挙では、政権交代後の稚拙な政権運営、消費税増税法案、TPP問題などでの党内分裂、離党者続出の民主党への厳しい批判で、安倍総裁のもとでの自民党が圧勝し、政権を奪還した。
  われわれは、「人権委員会設置法案」の取り扱いをはじめ、人権や平和の課題についてのさまざまな民主党政権への批判はあるものの、憲法改悪や「国防軍」創設などを主張する安倍自民党や、核武装を公然と容認する日本維新の会など、国権主義・反人権主義の伸長を許すことはできないということを明確にしながら、民主党を中心に社民党を支持して、総選挙での推薦候補の必勝をめざして全力をあげてきた。
  残念ながら、選挙結果は、組織内候補の松本龍・中央本部顧問の「解放の議席」を失い、民主党も壊滅的な敗北となった。われわれは、厳しい情勢であることを自覚しながら、人権・平和・環境・民主主義を基軸にした政治の実現に向けて、とりくみを強めよう。
  部落差別との90年の闘いは、まさに荊の道であった。これからも、けっして平坦な道ではない。しかし、部落差別撤廃、人権と平和の確立をめざした歩みをとめることはできない。こうした時代であるからこそ、部落解放運動の果たす役割はますます重要だ。闘いの到達点をしっかりと総括し、部落解放に向けた新しい一歩を大きくふみ出そう。


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