創意工夫し狭山再審を求める世論を大きくしていこう
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2013年1月30日に東京高裁第4刑事部の小川正持・裁判長、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団の中山武敏・主任弁護人、中北龍太郎・事務局長をはじめ9人の弁護人が出席し、狭山事件第3次再審請求の第12回3者協議がおこなわれた。
弁護団は、昨年10月の第11回3者協議のあと、12月26日付けで、犯行に使われた手拭いおよび被害者の腕時計の捜索に関する捜査書類、「犯行経路」「犯行現場」の特定にかかわる捜査書類などの証拠開示勧告申立書を提出した。また、2013年1月21日付けで、欠番となっている証拠物の開示勧告申立書を提出した。それにたいして、検察官は、意見書を提出するとともに、捜査報告書など19通を証拠開示した。開示された証拠は、手拭い、腕時計、自白の「秘密の暴露」にかかわる捜査報告書などで、弁護団は、今後、これら開示された証拠を再審請求に活用していくために精査、検討していくとしている。
一方で、検察官は、「犯行現場」にかかわる捜査書類など、弁護団が求めた証拠開示について証拠開示の必要性はないと回答しているものも少なくない。検察官の意見にたいして、弁護団は、そのつど、証拠の存在と開示の必要性を明らかにし、証拠開示を求めており、裁判所も柔軟に対応するよう検察官に促している。
検察官は弁護団が求める証拠開示にすみやかに応じるべきである。
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弁護団は、2013年1月24日付けで、脅迫状・封筒の筆記インクについてⅩ線分析器による科学的分析をおこなうよう求める鑑定嘱託申立の補充書を提出した。また、「犯行現場」に隣接する畑で事件当日、農作業をしていて「悲鳴」を聞いていないと証言している0さんの証人尋問も求めている。第12回3者協議でも、弁護団はこれらの事実調べを強く求め、今後、事実調べについて検察官の意見が出され、裁判所が判断することになる。
弁護団は、取り調べテープの分析や殺害方法についての鑑定書などの新証拠を4月末に提出することにしており、これらをうけて、5月に次回の3者協議がおこなわれることになった。
いよいよ大きな山場を迎える。狭山事件は5月には半世紀を迎えるが、1974年の第2審判決いらい、38年以上も一度も鑑定人尋問などの事実調べがおこなわれていない。きわめて不公平、不公正といわねばならない。足利事件では弁護団が求めたDNA鑑定の再鑑定を東京高裁がおこない、菅家さんの無実が判明した。布川事件では法医学者や取り調べテープの編集痕を分析した専門家の尋問などがおこなわれ再審が開始された。また当時の目撃証言が証拠開示され証人尋問がおこなわれている。「東電社員殺害事件」でも、現場の遺留物や事件当時の鑑定などが証拠開示され、DNA鑑定がおこなわれてゴビンダさんの無実が明らかになった。これらの再審無罪を教訓にして、東京高裁は狭山事件の事実調べをすみやかにおこなうべきである。しかも、検察官は、弁護側の新証拠にたいして筆跡、殺害方法、スコップ付着土壌について反論の意見書を4通提出している。今後、腕時計の新証拠についても意見書を提出するという。弁護側、検察官の双方から専門家の鑑定や意見が出されているのであるから、鑑定人尋問などをおこなうことは当然であろう。
公正・公平な裁判、証拠開示と事実調べを実現するために、さらに運動の輪を広げ、世論を大きくしていこう。
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今年は狭山事件発生から50年を迎える年である。ひとくちに半世紀というが、あまりに長いえん罪である。石川一雄さんは、部落差別のなかでえん罪におとしいれられ、50年間無実を叫び続けてきた。
支援運動も部落解放同盟だけでなく労働組合、宗教者、狭山事件の再審を求める市民の会(代表・庭山英雄さん、事務局長・鎌田慧さん)を中心にさまざまな市民団体、個人へと幅広く広がってきた。
なぜえん罪はおきたのか、いかに闘いは積み重ねられてきたのか、わたしたち一人ひとりが原点にかえって、何としても勝利するという決意をあらたにしたい。
石川さんが不当逮捕されて50年を迎える5月23日には、実行委員会主催による狭山事件の再審を求める市民集会が東京・日比谷野外音楽堂でひらかれる。また、部落解放同盟、市民の会では、「狭山事件50年」パネルを製作する。各地でパネル展をおこなってもらいたい。市民の会では独自の講演会やリーフレットの作成もおこなうことにしている。各地でも徹底した証拠開示と事実調べを求めて、「狭山事件50年」集会をひらき、市民、マスコミにアピールしよう。また、第3次再審が最大の山場を迎えていることをふまえて、弁護団、石川さんの闘いを支援し宣伝活動をすすめるための緊急カンパを市民集会実行委員会を中心によびかける。ぜひ協力をお願いしたい。
創意工夫をこらしたさまざまなとりくみで「狭山事件50年! いまこそ狭山事件の再審を!」の世論を大きくしていこう。
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