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部落問題資料室
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東日本大震災2周年をむかえ、被災者への継続的な支援を

「解放新聞」(2013.03.18-2611)

 3月11日の東日本大震災から2年をむかえた。現在、東北3県(岩手県、宮城県、福島県)では32万人が避難し、うち30万8千人がまだ仮設住宅で暮らしている。ようやく復興事業は開始され被災地では、集団移転や災害公営住宅、かさ上げなど基本となる復興事業が各地でスタートした。しかし、基本となる住宅再建にはさまざまな問題が見られる。
  希望者が一番多いのは、公営の復興住宅だ。計画では岩手、宮城、福島3県で4万8千戸建設する予定だ。しかし、建設が遅れている。3県で、復興住宅はまだ56戸しかできておらず、2014年度末でも3割くらいしか完成しない見通しだ。被災者は口をそろえて「仮設はつらい。冬は寒い、夏は熱い、町から遠い、病院や買い物に不便だ。早く公営の復興住宅に入りたい」という。国は、現在3年となっている仮設住宅の入居期限を1年延長することにしたが、被災者の仮設暮らしは当分続くことになる。
  公営住宅の建設が遅れている理由のひとつは、用地が確保できないことだ。もともと海岸が続く三陸沿岸部は平地が少ない。土地が確保できなければ、公営住宅は、いくら希望者が多くても建設できない。これには、市が提示する価格が安すぎるという事情も絡んでいる。土地の価格が、買ったときの半分以下というところも多い。いくら復興事業に協力したくても、これでは用地買収がまとまるわけがない。
  集団移転でも、価格の問題がネックになっている。集団移転の対象者は、跡地を市に買い取ってもらえることになっている。しかし、購入時に買った土地がたとえば1500万円だったものが、地価下落で1000万に届かない。これでは買い上げてもらっても、住宅ローンは組めない。自力再建をあきらめて復興住宅への入居者が増えるのは、当然だ。

 仕事の問題でも、新たな現象が生まれている。震災特需で建設業の就労者が25%増えた反面、食品製造業は30%減った。三陸沿岸の基幹産業だった水産業・水産加工業では、慢性的な人手不足が再建の足を引っ張っている。被災からの再建をめざす水産加工業者は「工場が再建できても、人が集まらない。これでは再建できない」と嘆く。短期でも、日当が良い建設業に人が流れている。「がれき処理が終われば人の流れが変わってくる」といわれているが、水産加工業がもちこたえられるかどうか。

 一方、福島第1原発事故は、いまだに収束の見通しが立たない。東電は3月1日に福島第1原発の廃炉に向けた作業現場を報道陣に公開した。マスコミの報道では、放射性物質を大量にふくむ汚染水は増え続けており、敷地内には貯蔵タンクが立ち並んでいる。この増え続ける汚染水をどう処理するか、めどが立っていない。また、政府が「冷温停止状態に達し、事故そのものが収束に至った」とのべている溶けた燃料だが、どうやって取り出すかはまだ検討段階で、そもそも溶け落ちた核燃料の場所や状況がわかっていない。第1原発の所長は「溶けた燃料の場所の確認、取り出しはいつになるかわからない。米スリーマイル島原発では、10年かかったが、それより厳しい状態で10年以上はかかる」とのべている。
  当初より減っているとはいえ、環境中への放射性物質の放出も続いており、再爆発の危険はぬぐえていない。いまなお避難生活を強いられ帰宅のめどが立たない人びとや、飛散した放射性物質との闘いを強いられている被災地から、すすまない廃炉作業に怒りの声があがるのは、当然のことである。

 ところで東日本大震災から2年たって、東北の被災3県で活動するボランティアがめっきり減ってしまった。被災地の関係者らは「震災の風化がすすんでいる」と危機感を募らせている。部落解放同盟は大震災にたいして各都府県連が中心となって、救援物資の輸送やがれき撤去、炊き出し、仮設住宅の縁台作りなどボランティア活動をおこない、また、集めた義援金を、人権という観点から視覚障害者や知的障害者など社会的弱者といわれる人びとの支援のために使った。実際、被災地の復興事業でも社会的弱者が後まわしにされたり、取り残される場面がしばしば見られる。また、家を失い、家族を失い、仕事を失って仮設に住む人びとのなかには、将来への希望がもてず、精神疾患やアルコール依存症に陥る人が増え、児童虐待やDVが増えている。部落解放同盟は、今後も引き続き人権という視点から障害者や社会的弱者の支援を続けていこう。また、原発事故にたいして避難者を支援すると同時に、さまざまな団体と連帯して脱原発運動をすすめていこう。


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