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部落問題資料室
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主張

 

国際連帯の力を大いに強め、人権社会を切りひらこう

「解放新聞」(2013.03.25-2612)

 部落解放同盟は「世界人権宣言」を条約化した「国際人権規約」早期批准にとりくみ、1979年の批准を実現した。1988年には反差別国際運動(IMADR)を結成し、「人種差別撤廃条約」などの国際人権諸条約の批准を促進し、国内の人権状況を変革することと国際的なマイノリティ運動に連帯することに力を注いできた。毎年3月21日の「国際人種差別撤廃デー」や12月10日の「人権デー」などには集会をひらき、条約批准の重要性も訴えてきた。
  1991年からIMADRはスイス・ジュネーブに事務所を設置し、国連人権委員会(のちに人権理事会に改組)や人種差別撤廃委員会に参加してきた。女性差別撤廃委員会ではマイノリティ女性当事者(先住民族アイヌ・部落・在日コリアン・沖縄の女性など)としての発言が委員会に影響を与えた。また、国際人権の潮流、国際人権基準などの人権に関する情報収集と人権団体への情報提供を精力的におこなってきた。スリランカ・インド・ネパールでのマイノリティ女性の地域開発プロジェクトやダリットNGOとの連帯活動にもとりくみはじめている。国連での活動と地域住民の活動とを結びつけ、条約が実定法として生活の場で機能するための活動を模索している。
  IMADRは1993年には国連経済社会理事会との協議資格をもったNGOになり、国連でのNGO活動の幅を広げ、とくに、マイノリティ民間NGOと連携を図ってきた。その結果、国連の場でIMADRが発言する機会が増えてきたし、国際人権諸条約をふまえた議論が国内にももち込まれてきた。日本は世界への体面上、条約に加入しているが、国内では積極的にとりくむ姿勢にかけ、国際社会では普遍的人権として確認されていることでさえ、国内では実行されていないことが明らかになった。差別や人権侵害を統計的数字で示す国際社会の手法は、ジェンダーエンパワーメント指数や貧困率などで課題を明らかにし、抽象的になりがちな人権論に具体性をもたせた。国際比較や国際人権基準にしたがって国内人権状況を監視する流れも生まれてきた。それは同時に国連の場での日本政府の人権にたいする消極的姿勢が露骨に見えるようになってきたことでもある。
  国内での条約履行状況を定期的に政府報告書として国連に提出し、審査をうける手続きにNGOの立場から参加し、条約委員会が有効な最終意見や勧告を出すように働きかけてきた。人種差別撤廃NGOネットワークと連携して、人種差別撤廃委員会への働きかけも継続しておこなってきた結果、2001年、2010年の人種差別撤廃委員会から出された最終見解では、「世系」の対象に部落差別がふくまれることを明確に指摘するとともに、日本政府にたいして部落差別撤廃に向けて条約で定められたとりくみを実施するよう勧告している。また、部落問題解決に関する有効な6項目の指摘をおこなっている。①部落問題に対処する権限をもつ特定の政府機関あるいは委員会を指定すること②明確で統一された部落民の定義採用のために関係者と協議をおこなうこと③部落民の生活条件の改善のためのプログラムを、一般国民の参加を得て、とくに部落コミュニティを擁する地域にたいする人権教育および啓発のとりくみで補うこと④上記の施策の状況および進展を反映する統計指標を提供することなど。

 こうした状況をふまえて「差別禁止法」へのとりくみや、「パリ原則」にしたがった国内の人権状況を監視する人権委員会設置などの動きにも関与してきた。また、政府に誠実に条約委員会の勧告をうけとめ履行するように求めてきた。
  2013年1月に人種差別撤廃委員会へ政府報告書が出され、2014年2月に委員会の審査をうけることが予想される。また、4月30日、国連・社会権規約委員会で日本政府第3回報告の審査がおこなわれる。東日本大震災と福島第1原発事故の被害者の人権とともに、「特別措置法」後の部落差別の実態と政府のとりくみ、アイヌ民族や在日コリアンの人権などが問われることになっている。
  だが政府に条約を誠実に履行しようとする姿勢はない。委員会が2010年に部落問題に関して出した勧告には一言も触れず、無視する姿勢をあらわにしている。継続的に、勧告の実行を強く政府に迫っていく。
  国際人権の流れは止められない。教育の無償を掲げる社会権規約第13条の留保を政府は長く続けてきたが、2012年に撤回を国連に通告した。婚外子差別を合理的差別としてきた最高裁の判例が、出生による差別とする国際人権の前に変更されるときをむかえている。国内的にしか通用しない人権論に閉じこもることなく、普遍的な人権論としての国際人権基準の導入を急ぐべきである。この流れを大きくし、国際連帯を着実に築きながら、人権社会確立に向けた闘いの強化が求められている。

 都府県連・支部などでとりくまれている国際連帯活動を共有し、発展させるためのネットワークづくりをはじめ、日本軍性奴隷の被害者にたいする国家の謝罪と補償を求める運動や在日韓国・朝鮮人の基本的人権の保障を求める運動に連帯するとりくみ、個人や団体からの通報を認めた「自由権規約」第1選択議定書、「人種差別撤廃条約」第14条、「女性差別撤廃条約」選択議定書などの批准・承認と各条約の留保事項の撤回と早期締結を求めるとりくみなど、反差別国際連帯活動を強化しよう。


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