男女平等社会の実現に向け第58回愛知全女を成功させよう
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第46回衆議院選挙では、自民党が480議席のうち294議席を獲得して圧勝した。この結果、「戦後体制からの脱却」として憲法改悪と軍備増強をめざす安倍第2次内閣が発足した。核武装を容認する日本維新の会も54議席を獲得して、改憲勢力の伸長のもとで国権主義・反人権主義が、これまで以上に急速に台頭してきている。
自民党は政権公約で「人権委員会設置法案」への反対を明記し、法務省は民主党政権で閣議決定した「人権委員会設置法案」の通常国会への提出を見送ることを明らかにした。あらためて差別・人権侵害の実態を世に問う闘いをしていかなければならない。そういった意味でも、7月の参議院選挙で憲法改悪阻止と人権の法制度確立に向けた政治勢力をつくりだしていかなくてはならない。
いのちと生活、人権・平和・環境を守る私たちの闘いは部落のみならず、すべての人たちに共通する課題であり、反差別・反貧困の協働のとりくみが今日的には重要である。
こうしたなか、5月18、19日の2日間、愛知県で部落解放第58回全国女性集会(愛知全女)をひらく。愛知県での開催は1986年いらい、2回目で27年ぶりの開催となる。現在、愛知県連女性部を中心に女性集会受け入れに向けての準備がすすめられている。全国の女性の力で部落差別をはじめ、あらゆる差別に反対し、男女がともにジェンダー(社会的・文化的に形成された性差・性差別)によって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない男女平等社会の実現に向けて、第58回全女を成功させよう。
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2005年1月、鳥取全女で部落女性のアンケート調査を実施したのを皮切りに、埼玉・愛知・大阪・兵庫・奈良・京都で部落女性のアンケート調査を実施。この調査は、部落女性が主体的におこなった調査であり、これまで、調査される側だった女性たちが、みずから調査内容の議論をおこない、自分たちで調査に出向き、分析をするという画期的なアンケート調査であった。2011年12月に6府県による部落女性アンケート調査報告会をひらいた。1万1265人が回答し、6府県の共通点が明らかになった。
課題は、①知らない権利は守られないということ。働くうえでの権利や制度について学習し、どんな制度が利用できるのか知ることが重要②高齢になっても働き続ける人が多く、無年金の人が相当程度存在することから、高齢者へのていねいな相談活動と支援が必要③若年非識字者が存在しており、識字活動のとりくみが必要④結婚や就職、職場、学校、保育所、近隣のつきあいなど、あらゆる場面で部落差別があとをたたないことから、教育・啓発が必要なこと、などである。
また、子どもへの進学期待は、経済的に厳しくなるほど、女子に進学期待をかけない傾向がみられ、経済的な不利益が女性をより不利な立場に追いやる可能性がある。女性差別認識が部落差別認識に比べて低く、パートナーからの暴力については相談体制が重要であること。相談員が部落女性への複合差別に理解がないと2次被害を引きおこすため、相談員の育成が急務であること、などが明らかになった。
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国は、遅まきながら2010年12月に閣議決定した「第3次男女共同参画基本計画」に「同和問題等に加え、女性であることからくる複合的に困難な状況におかれている場合がある」という文言を初めて入れた。
複合差別のなかにある女性政策としては、まだまだ具体性に欠け不十分ではあるが、文言として入ることが第一歩である。
このように、部落女性の課題に少しずつではあるが、光があてられようとしてきている背景には、1985年の「女性差別撤廃条約」の批准、国連・女性差別撤廃委員会から2003年、2009年と2回にわたりマイノリティ女性の実態把握を日本政府に求めた勧告、また前述したようにマイノリティ女性自身によるアンケート調査の実施、そして調査の結果から明らかになったことの解決のために内閣府男女共同参画局とおこなった交渉などがある。
かつて、国をはじめ県や市町村の女性政策のなかに部落女性の課題が入ることはなかった。各地で男女共同(協働)参圃審議会の審議委員に公募があったら応募するなどの努力を重ねてきた。その結果、審議委員になり、部落女性のもつ課題を発言することによって、部落女性にとどまらず、マイノリティ女性の課題が各地の女性プランのなかに入るようになってきた。自治体での女性政策で不十分ではあるがマイノリティ女性の課題が、やっと表に出てきたといってよいだろう。しかし、こうしたとりくみは、まだまだ一部の県や市町村であり、全国に広げていかなくてはならない。
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第58回全女では、部落解放・人権政策確立のための闘い、石川さんの不当逮捕から50年をむかえようとしている、山場にきている狭山第3次再審闘争や差別糾弾闘争の強化、複合差別の視点をはっきりもった男女平等社会の実現、「福祉と人権のまちづくり」運動、人材育成をはじめとした女性部阻織の拡大など、地域での実践交流と論議を深め、活発な意見を出し合い、集会の成功をかちとろう。
1923年に婦人水平社を設立してから今年で90年である。水平社運動を担ってきた女性たちや戦後、差別と貧困のなかで闘ってきた先輩たちによって積み上げられてきた運動から学び、発展させていかなくてはならない。部落解放同盟内での女性差別問題のとりくみは、まだまだ不十分である。まずは、組織内で「男女平等社会実現基本方針」(改定版/2008年の①はじめに②男女平等社会実現にむけてー現状と課題③具体的目標④組織内目標)を学習し、中央本部・都府県連・支部で具体的なとりくみをすすめていくことが求められている。また、11項目の具体的なとりくみが、どこまで達成できているのかも点検していかなくてはならない。
私たちは、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちとネットワークを作りながら、すべての女性たちとの連帯を強化し、人権と平和の確立、いのちと生活を守る協働のとりくみをすすめ、部落解放運動を前進させるため女性が先頭にたって闘いぬいていこう。
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