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部落問題資料室
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差別と格差を拡大する教育改悪を許さず、各地で教育共闘の輪を広げていこう

「解放新聞」(2013.04.15-2615)

 「日本を、取り戻す」「教育を、取り戻す」。そして、「みんなで、新しい日本つくろう」。昨年末からくりかえされたスローガンのもと、安倍政権が発足した。
  はたして、ここでいわれている〝みんな″のなかに、〝わたし″や〝あなた″は、はいっているのだろうか。ちまたでは、〝アベノミクス″の効果で、為替や株の相場が上向いたと景気のいい話が喧伝されているが、目先の利害に誤魔化されずに、いま、はじめられようとしていることの本質を、しっかりと見極めながら、地に足をつけたとりくみをすすめていこう。

 民主党政権は、福祉や教育の分野で、すべての子どもたちの育ちや学びを社会全体で支えていくという理念を明確にし、国際人権現約・社会権規約第13条2項の留保の撤回という公約のもと、高校無償化の導入など具体的な政策目標を掲げて、実現を果した。
  政治の駆け引きや財政面の制約から、所期の目標を十分に達成できなかった点も多多あるが、権利保障の具体的な基準と内容を示し、社会全体の底上げをはかろうとする政治の意思が明確に示されていた。
  こうした政治姿勢は高く評価されるべきものであるがゆえに、朝鮮学校を高校無償化の適用から除外し続けたことは、返す返すも残念なことである。結果として、現政権による朝鮮学校の排除、つまり、国家による民族差別という愚策の先鞭をつけたことは事実であり、猛省を促したい。

 そして、「教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進する」ためにと称して「教育再生実行会議」を立ちあげたのが安倍政権である。道徳教育の教科化を提言するなど、人権の潮流とは相反する、この教育再生実行会議が2月に公表した最初の提言が、「いじめの問題等への対応について」というものだ。
  そこには、いじめが社会悪であることをはじめ、子どもの心身の発達に重大な支障を生じさせること、大人の振る舞いが子どもに直接的な影響をおよぼすことなど、しごく当然の指摘がなされている。政権交代後、いの一番に朝鮮学校の除外を表明し、国家による民族差別と子どものいじめを決行した政権の肝いりの会議の提言である。もはや、ブラックジョークとしか思えないではないか。
  これから先に、どんなことがすすめられようとしているのかは推して知るべしである。

 長引く経済不況や非正規雇用など不安定就労者の増加により、生活保護受給者は増加の一途をたどっている。根本的な原因は、最低限の生活さえ維持できないほど低い賃金と、それを支えている制度を放置している政治の責任である。
  ところが、政府は、こうした事実に頬かぶりをし、一部の不正受給を大きく取りあげ、生活が困難な経済的弱者同士の怨嗟を巧みに利用し、生活保護基準の引き下げを強行しようとしている。そのしわ寄せを受けるのは、低所得世帯の子どもたちだ。
  かつて、部落差別による不安定就労と貧困が、子どもたちの就学と就職の機会を奪い、「差別と貧困」の連鎖を生み出してきたように、新たな「貧困の連鎖」が生み出されようとしている。いま、日本に求められているのは、経済協力開発機構(OECD)の諸外国並みに、教育費の公的支出割合を増やし、教育の機会均等をさらに充実していくことである。
  安倍政権は、経済的弱者を切り捨てようとする一方で、祖父母から孫への教育資金の贈与について、1人につき1500万円までは贈与税を非課税あつかいとするという富裕層の優遇政策をはかろうとしている。これは、家庭の経済状況による教育機会の格差拡大につながるということだけでなく、教育費の家庭負担の強化を意図しているとみるべきである。
  たとえば、高校無償化の見直しをめぐって、所得制限の導入と引きかえに、低所得世帯を対象に給付制奨学金の導入を図るとの一部報道もあり、そのこと自体は歓迎するところでもある。しかし教育費を自己負担できる富裕層は、低所得者への給付制奨学金の導入など、教育費の公的支出の増加に、否定的な態度をとることは想像に難くない。その一部の富裕層の声が、「国民的合意」や「市民の理解」が得られない理由とされて、見送られるというのは、うがった見方だろうか。
  いま、政治のなかで、「改革」「再生」など、美しい言葉が並べ立てられているが、その背後に意図されたものを、しっかりと見抜いていく必要がある。
  子どもたちの日日の生活や教育のなかに、憲法第14条の精神を否定し、「国籍」「人種」「民族」「経済的地位」などによる差別と分断をもちこもうとする政治の暴走を決して許してはならない。
  各地で教育共闘の輪を広げ、教育を守り、子どもたちの未来を切りひらくとりくみをすすめていこう。


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