不当逮捕から50年を迎えて、石川一雄さんが決意を新たに闘うメッセージを寄せた。全文を掲載する。
別件不当逮捕50年に当たり、全国各地で糾弾集会を設け、今日も多数の方々が決起集会にご参加下さったものと思われ、常日頃からのご支援、ご尽力に一言お礼の意を表せたらと、一筆執らせて頂きました。
半世紀を経ても再審実現が適わぬ事に無念、遣る瀬無い思いは禁じ得ません。
皆様もご承知の様に、今月8日、第13回目の三者協議が行われました。今回は裁判官、検察官全員が交代した関係で、私自身も一抹の不安を覚えましたが、河合裁判長は、証拠開示について、これまでの姿勢を踏襲するとしたうえで、弁護団が求めている証拠開示についても、検察に「柔軟に対応するように」と促したそうですが、門野裁判長が開示勧告した「ルミノール反応検査」の有無、並びに1963年7月4日付の雑木林を撮影した「8ミルフイルムの開示については埒があきそうもありません。ただこれによって「殺害現場」を裏付ける証拠は何もないことが明らかになりましたし、「犯行現場」を特定するための捜査書類や、門野勧告でも重視された「死体に関する写真」はある筈なので、特にこの点を強調、請求する価値があると存じます。
また、弁護団はつぎつぎ開示された証拠を精査し、未開示の証拠物や犯行に使われた手拭いの捜査資料など、さらに隠された証拠の開示を求めているところです。
元より証拠の力で裁判を動かすという弁護団の戦術を貫くためには、例え検察当局が飽く迄も「ルミノール反応検査や「8ミリフイルム」を不見当として、その存在を否定し続けたとしても、それに怯むことなく追求すべきであろうし、何よりも公平で公正な裁判を求めるために皆様方からご協力頂いた100万筆を超える署名が「水泡に帰する」ことのないように活動を展開していく必要があることは、今更申し述べるまでもありません。
思い返せば、今までの裁判は確定判決以降、38年間に及び一度たりとも事実調べをせず、書面審理のみで一方的に有罪判決をしてきたのです。言及するまでもなく、刑事事件である以上、刑事裁判が事案の真相究明をする、いわゆる実体的真実主義と、此れに対する刑罰法令の適用実現を目的としていることは、申し述べるまでもなく、そうであれば、本件自白は、逮捕状を請求するだけの物的証拠も存在しなかったにも関わらず、軽微な別件で逮捕拘留し、その間の身柄拘束を利用して本罪を取り調べたものであり、従って本件狭山事件に関する自白の強要は、此の再逮捕、拘留に因る精神的・肉体的打撃の結果であり、この違法拘束に引き続き、法の拘留に関する規定から逸脱しているとあってみれば、憲法第31条、33条、34条、刑事訴訟法205条に違反する不当な逮捕・再逮捕を論説し、糾弾する必要があろうかと存じます。皆様にもこのことを重視し世論喚起に努めて頂きたく切に願っております。
何れにせよ、再審開始への道筋も見えてきたとはいえ、まだまだ皆様の更なるご支援は不可欠であり、これからも多くのご支援を賜らねばなりませんが、7月に予定の三者協議までには無理でも、何としても今年中には「事実調べ」の方向性が附けられるように、私も精いっぱい活動を展開して参る所存ですので何卒皆様方も、今年中に勝利の目処が立てられるよう一層のお力添えを賜りたく心からお願い申し上げて、不当逮捕50年に当たり、私の決意と皆々様のご支援に対し、感謝の気持ちに代えて失礼いたします。
2013年5月23日
不当逮捕50年糾弾、再審実現決起集会ご参加ご一同様
石川 一雄