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本人通知制度を普及させ、身元調査の根絶をはかろう

「解放新聞」(2013.06.24-2624)

 2011年に発覚した戸籍等大量不正取得事件では33人が逮捕され、その後おこなわれた名古屋地裁の裁判では実刑判決をふくめ全員に有罪判決がいい渡された。一連の事件では戸籍や住民票をはじめ、職業安定所のもっている職歴情報、警察・国交省がもっている車両情報、携帯電話会社がもっている携帯電話情報などさまざまな個人情報が盗まれ、犯罪や脅迫などに悪用されていた実態が浮き彫りになった。このうち偽造した職務上請求書を使って全国の市町村から不正に取得されていた戸籍や住民票は、身元調査に利用されていたことがはっきりした。

 ところで公判のなかで、調査業界では身元調査が蔓延している実態が被告らの証言で明らかになった。主謀者の一人は「戸籍や住民票が取れなければ、調査業はなりたたない。調査業はみんなやっている」と証言し、「調査業界は、不正取得が蔓延している」と語った。また、彼はみずからの犯罪行為を棚にあげて、「明治時代から続いてきたような(同和地区)調査を求める人が多い」とのべたうえで、不正をなくすためには「国民も意識を変えていただきたい」と語った。弁護士も、「被告らに犯罪行為を実行させたのは、私たち市民であることは紛れもない事実である」とのべ、身元調査を依頼する市民にも責任があるとのべた。犯人グループが「国民の責任」をうんぬんする資格はまったくないが、国民に責任があることはたしかだ。国民が依頼しなければ、彼らが不正に戸籍や住民票を取ることはあり得ない。一銭にもならない調査をするような奇特な探偵社は存在しない。
  問題は、はっきりしている。探偵社が偽造した請求書で戸籍や住民票を取るのは、少しょう高い料金を払っても「身元を調べてほしい」という依頼者がいるからで、その依頼がなくならない限りこの種の身元調査と不正取得はなくならない。

 当面の解放運動の課題をあげておきたい。
  まず第1は、事件の全容の解明だ。個人情報売買社会の実態を、警察はもとより政府は真剣に受け止めてその全容解明を急ぐべきだ。
  2つめは、被害者への告知だ。ほとんどの被害者はいまだに不正取得されたという事実を知らされていない。不正に取得された個人情報が悪用されストーカーや脅迫、不採用、婚約破棄などに利用されても、その原因がわからないままに被害をうけている。
  3つめは、本人通知制度の導入だ。大阪からはじまった本人通知制度はしだいに広がり、現在までに制度を導入した市区町村は、全国で331市町村(4月10日)になった。埼玉、山口、京都、香川、大分では全市町村が導入している。本人通知制度で不正に取得された本人へ通知が出されることで不正取得が発覚して逮捕者が出ていることから、本人通知制度は不正取得防止に効果的だ。本人通知制度の導入が急がれる。


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