行政書士の資格を悪用して、偽造した職務上請求書で戸籍や住民票の写しなどを大量に不正取得したとして、戸籍法違反や偽造有印私文書行使罪に問われていた東京都清瀬市の元行政書士で興信所経営者のO(81)被告に名古屋地裁は6月20日、懲役3年、執行猶予5年を、妻(54)に懲役2年、執行猶予3年の判決をおこなった。
神原浩・裁判長は判決理由で、「職務上請求書を偽造したうえで、これを用いて戸籍や住民票を不正取得して身元調査などに使った犯行は、常習的職業的できわめて悪質」とのべ、「(戸籍などの)公簿を不正に取引するグループ「Eネット」を立ち上げ、その元締めとして、〝情報屋″に反復継続して販売していた主謀者で、その責任はすべての共犯者のなかでもっとも重い」と指摘した。
また、犯行は1993年ごろからおこなわれ、不正取得によって「年平均2800万円から4700万円の不正な利得を得、毎月90万円の報酬をうけ取っていた」と実態をのべたうえで、不正取得は「単に公簿の管理の不適切性の侵害という抽象的な問題にとどまらない。現実にストーカーなどの被害が出ている」と厳しく指摘した。
また「2008年に三重県鈴鹿市から偽造した請求書の印刷ミスを指摘され、また2011年に個人情報を不正に取得された被害者から民事訴訟を起こされ、やめる機会があったにもかかわらず、その都度隠蔽工作をおこない、みずからの利益のために不正請求を継続した」と指弾した。
裁判では、被告となった妻が「いわれるまま手伝いをしていただけで共同正犯に当たらない」として幇助犯を主張し、争っていたが、判決では、妻は偽造請求書の印刷の発注をしていたほか、不正の発覚を恐れて同じ自治体には同じ通し番号の請求書を使わないよう点検するなど「重要な役割をはたしていた」と説明したうえで、「多額の報酬をうけ取っていた」と指摘、共同正犯と認定した。しかし裁判官は、2人が事実を認めたこと、二度と探偵業はやらないとしていること、前科がないことを理由としてあげ、「実刑に処すべきところだが、今回に限り執行猶予にする」と説明した。
プライム事件に端を発した一連の戸籍等個人情報大量不正取得事件の裁判は、これですべて終了した。事件では戸籍の不正取得だけでなく、車両情報や携帯電話情報、職歴情報などが売り買いされている実態が暴露され、26人が逮捕されたが、プライム社社長と横浜探偵社社長に実刑判決(懲役3年・2年6月)がいい渡されただけで、20人は執行猶予となり、4人は罰金だけの軽い刑となった。
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