【三重支局】三重県伊賀市は2012年度に「同和問題解決に向けた生活実態調査」を実施し、今年3月、調査報告書を作成した。同市の旧同和対策事業指定地域(「同和地区」)の住民の、就労、福祉、教育など生活分野での厳しい実態が明らかになった。生活保護受給比率は22.35%で、伊賀市全体(1.96%)の11倍以上。世帯総収入も市全体と格差があった。
「同和地区」の住民で、過去5年間に被差別体験をもつ人は25.7%、つまり4人に1人が差別を直接体験。職場などや結婚時・交際時の差別も報告された。被差別時の対処は「誰にも相談しなかった」が最多で「泣き寝入り状態」。結婚破談経験の質問でも、部落差別による結婚被談など、いまも厳しい部落差別の実態が明らかになった。
調査結果にたいし、同市は「第2次同和施策総合計画」を策定し、「同和地区」の生活実態から見えてきた課題を市民全体の課題として共有し、厳しい生活を余儀なくされている全市民の生活支援や生活課題の解決、市民対象の啓発活動につとめ、一刻も早い部落差別の解消に向けて全力でとりくむ、としている。
同様の調査は06年度にも実施しており、2回目。
調査対象は、同市の「同和地区」に常住している935世帯、2266人(11年12月31日現在)。市職員が調査員になり、12年2月27日から3月31日、関係団体などの協力をえて面接調査した。調査票は730世帯から回収でき、有効回答は723世帯、有効回答率77.3%。集計・分析は、市人権生活環境部同和課が調査票をとりまとめ、公益財団法人「反差別・人権研究所みえ」がおこなった。
同市では、同和問題の早期解決は国民的課題であり、これまでも最重要施策に位置づけ施策を実施してきた。「特別措置法」が02年3月に終了し、とりくみの成果と課題の検証へ、06年度に「同和問題解決及びまちづくりに向けた生活実態調査」を実施。結果、結婚差別をはじめ職場などでの被差別体験、就労や福祉などあらゆる面で課題が山積していることが明らかになっていた。今回の調査は、この06年調査と比較することで、これまでの施策の成果、部落差別解消に向けた課題をより詳細に明らかにしようと実施したもの。
市は、04年11月の市誕生と同時に「伊賀市部落差別撤廃条例」を制定。第2条「市は、前条の目的を達成するため、すべての分野にわたり人権尊重の視野に立った必要な施策を積極的に推進する責務を有する」と、第7条「市は、前2条の諸施策を推進するため、総合計画を策定するとともに、定期的又は必要に応じて各種の調査を行うものとする」をふまえ、実態調査や市民意識調査を定期的に実施している。
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